時代の変貌に色々感じ、戸惑う…。

当方、只今収穫しましたぶどうをワインとして仕込み終え、発酵の途中です。

ちょっと作業が一段落しましたので、久しぶりに昨夜痛飲してしまいました。(苦笑)

そこで頂いた、某ブルゴーニュの蔵のと自然派の醸しワインの変貌っぷりには驚いたというか、ガッカリというか…

写真のDVDが上映された時とか、ANAの機内誌手に取ったときとかの頃を思い出し、「あの時は…」と今朝起きてからも考えさせられています。
  

無論、単純に「昔が良かった」と云うのではありません。
普通なら、昔の悪癖を引きずることなく、かつての良い事を時代に促しつつも踏襲し、新しい良いことを取り入れる。

でも、今はなんか違う方向に向かっているな…、と。
「そこじゃない」感があるのです!

当時は、SNSミクシィぐらいだったか、まだこの頃私は例のブロガーやっていて(笑)、TwitterFacebookやり始めたのは2010年代以降。
YouTuberなんて言葉も無かった時代(笑)。

SNSの功(コウ)の部分はあっても、罪(ザイ)の部分としては情報の伝播スピードが速くなり、安近直なのが好まれ、物事を掘り下げて考えることがあまり無くなったように思えます。

そこで、色々なモノ・コトがコマーシャリスティックに過ぎたり、単なるウケ狙いに走ったりと、云う事例が増えてきているように感じます。いや、増えてないかもしれないが、SNSの存在がそういったことを殊更にクローズアップさせているのかもしれません。

まぁ、道具として上手い事付き合う。自分もSNS使っていますし(笑)、それしか今のところは解が無いですが、自分なりにボチボチやれたらと思います。

久松さんの本を読んでいる途中ですが、これ読んで頭冷やすか。

自分も農業者ですが、それよりも農業を生業にしていない一般の多くの方々に読んで欲しい。どんな職業にも通じるお話が展開されています。

上記の悶々とする想いに、何かを教えてくれるような一冊。

大切なお知らせ(開業のご案内)

かねてから準備を進めてまいりました小生の事業に関してですが、この度ようやく準備が整い、皆様にお披露目することとなりました。

屋号は、「おおさかぶどう・ワインの郷(さと)」です。

SNSについては、Instagram
https://www.instagram.com/osaka_grapeandwine/
Facebook
https://www.facebook.com/osaka.grapeandwine
にて公開しております。

前者では、ぶどう畑での四季の移ろいを中心としたビジュアルを中心に、後者では、コラムなど文章交えた投稿を中心にお伝えしたいと思います。
フォローならびに「いいね!」を頂ければ励みになります。宜しければ、お願いいたします。

ぶどう・ワインそのモノだけではなく、大阪のぶどう・ワインを通じて皆様に、天空に輝くロゴよろしく親しみと歓びを感じて頂ける様な「コト」も併せて提供していくことが出来ればと考えております。

どうか、今後とも変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げます。

おおさかぶどう・ワインの郷ロゴ

今でも「背中をそっと押してくれる」アーティスト

音楽は、心の肥やし。

私の相棒でもあるiPad mini、ミュージックアプリには好きなアーティストの音楽を色々入れていますが、中でも愛聴しているものが、Joy Division & New Order…。
昨日Facebookのタイムラインでも流れて来ましたが、5月18日はイアン・カーティスIan Curtis)の命日。 自分にとっては、JDとNOは思い入れが深い、「背中をそっと押してくれる」アーティストで有ります。

Joy Divisionを一言で表すにはとても難しいバンドだが、このバンドを寸評しているテキストで他の追随を許さない的確なものは、これを置いて他には見当たらないのでこちらを。

kosuke1226ma.hateblo.jp

JDに関しては、拙Blogにて度々取り上げていましたので、以下に再掲。

okkuu-daaman.hatenablog.jp

過去のアルバムについても、この記事からのリンク先にて触れておりますので、よかったらご覧ください。

大手の戦略的ワイン新商品(後編)

前編は、こちら(2022年5月2日公開)。

サントリー・ワインカフェ ワインソーダ

 
「ワインをもっと自由で、開かれたものへ」
のキャッチコピーの下、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)やビール類に慣れ親しんでいる一般の層をワインに目を向けさせるため、日本人の味覚や食文化に合う形で提案することで、本格的なワインへの入り口となる新需要開拓商品、それが、“ワインソーダ”です。(下記リンク1参照)
【リンク1】食品産業新聞社『サントリーワインインターナショナル「“ものづくり”ベースに、新提案で“日本ならではのワイン文化創造”」/吉雄敬子社長インタビュー』(2022年1月26日)

甘さ控えめ、程よい酸味と、いわゆる“RTD”のジャンルの中ではちょっと異色で、単にワインをソーダで割ったのでは無く、特許技術(下記リンク2を参照)も屈指してチューニングした形跡が窺える「計算した味」になっています。
決して、某社の「氷結 シャルドネスパークリング」では無い❗️(笑・尤もこちらはベースはワインでは無いが…)
【リンク2】サントリーグループ企業情報・ニュースリリース(2022年1月21日発表)

RTDの中でもちょっと異色な「逆張り」になっているのは興味深く、その前身の「ワインサワー」が結構受け入れられていることを考えると、食中酒としての本来のあり方に添った有り様で求められつつあるのかもしれません。そうしたことは、下記の「市井の評価」にも反映されております。

【リンク3】むねさだブログ『サントリーの「ワインカフェ ワインソーダ」シリーズが甘さ控えめで美味しいぞ!』(2022年3月24日)

【リンク4】京都チューハイLab「【新商品レビュー】サントリーワインサワー赤と白を飲んでみた!」(今回の“ワインソーダ”の前身商品・2021年2月19日)

いずれのリンク先3・4の記事でも記されていますが、実際食事と合わせやすいという評価に加え求められているのが、「本格的な味」ということです。すなわち、従来の甘めな「お子ちゃまチックなワインもどき」よりも、ちゃんとした味のを飲みたいということで、評価が上がっているのを見逃してはいけません。それも、ワインに飲み慣れていない層だけでなく、健康志向というところから時にはアルコール度数が低いもので構わないというワイン好きの左党からも要望があるようで…。
その証拠に、「低アルコールワイン」という需要が実際にあって、なんと大手さん(アサヒとサッポロ)から奇しくもこの4月から、低アルコールワインのラインナップが「スーパー系」のカジュアルな輸入ワインに加わったことからも伺えます。

【リンク5】アサヒビール株式会社公式ニュースリリース(2022年3月30日)

【リンク6】サッポロホールディングス公式ニュースリリース(2022年2月1日)

さて、“ワインソーダ”は、入り口となる「新需要の開拓」にあって、その狙いは果たしつつある様な気がします。だが、その先に課題があると思います。
すなわち、先の【リンク1】での記者の問い

「入口づくり」の手応えを感じたと思うが、カジュアルワインからプレミアムワインへの道筋を作る取り組みは?

に対し、何をしなければないかは、まだ抽象的な解答に留まっており暗中模索の途上かも思われます。実際に、同じ食品産業新聞社の取材(下記リンク7参照)にて

「若年層をワインサワーからワインへどう誘導するかは、社内でも常に議論している。」

とある通り、未だに社内でも議論の最中にある模様です。

【リンク7】食品産業新聞社『「サントリーワインサワー」販売計画を35万ケースに上方修正、新カテゴリー「ワインサワー」創造へ/サントリーワインインターナショナル』(2021年3月31日)

とはいえ、【リンク1】での文中にもあるように、一つの解として考えられるのが、

「造り手の顔や声、ぶどう畑など、より親しみやすい形でプレミアムワインの価値を伝えたい。」

とあるように、ワインがこうやって造られるんですよと分かり易く目に見えるような形で伝えることです。
それは、大手さんだからこそ出来ることで、人が限られた小規模の造り手さんではなかなか手に負えないことです。実際、大手さんでは国内のワイナリーを公開してお客様を呼び込む体制が出来ており、

メルシャン→勝沼ワイナリー椀子ワイナリー
サントリー登美の丘ワイナリー
サッポロ→グランポレール勝沼ワイナリー岡山ワイナリー

では、見学ツアーも組まれております。(注:メルシャン桔梗ヶ原ワイナリーは公開休止中。グランポレール勝沼ワイナリーではツアー休止中)しかし、コロナ禍が落ち着きを見せる中でようやく観光需要が元の勢いに戻ろうとはしていますが、遠距離への足がなかなか遠のいているだけでなく景気的にも日本だけが落ち込んでいるこの状況で、ワイナリーへ足を運ばせる前に「人目に触れる機会を多くする事」が求められると、筆者は思います。

ただ、ワインは輸入物が多くひしめき、スーパーでは廉価の国内製造ワインか安価な輸入物、専門のワインショップや飲食(ワインを置くレストランやワインバーなど)では輸入のファインワインががっちりと喰い込む中で(“日本ワイン”を扱うお店が増えてはいますが、そういうところでは“個性的な”中小のワイナリーがむしろ人気である…)、大手さんの“日本ワイン”を積極的に取り入れるには結構壁があるかもしれません。

なので、積極的に体感できる機会を増やすためにもアンテナショップとなる「飲めるお店」を、まずは人口の多い地域に出す事が先決なのでは?と思います。そして、「ワインの価値」を伝える場としての現場となって、より深く体感してもらう場であるワイナリーへの橋渡し役を担って貰うのです。

そんな中、孤軍奮闘しているのはサッポロさんで、実際東京大阪※に「GRANDE POLAIRE WINEBAR」を開店されており、大手さん発日本のワインを堪能できる数少ない場となっております(大阪店は開店早々訪れました)。それだけに、メルシャンさんの「シャトー・メルシャン トーキョー・ゲスト・バル」が閉店(2018年5月31日)してしまったのは誠に残念でした…。

(※追記:2023年9月19日)
残念ながら、GRANDE POLAIRE WINEBAR OSAKA は2022年末をもって閉店されました。

今、酒類の中でも厳しい状況に置かれているのが「日本酒」ですが、ナショナルブランドとしての灘の大手の酒蔵は、自ら露出の機会を増やすべく、「灘五郷酒所」をこの最近(2022年4月29日)にオープンさせました。
nadagogo.com
オンラインストアで入手が出来る世の中になったとはいえ、一人一本消費して開けるのは大変ですし、何よりも実際味を確かめて愉しむ機会があれば、確率が低くとも気に入って貰えれば今度はオンラインストアでも、「買ってくれる」ことに繋がるかも知れません。
背水の陣ではありますが、灘五郷の各社が枠を超えてかように攻めの戦略に出たことは注目に値します。

すなわち、“ワインソーダ”のような「商品としての入り口」だけでなく、「リアルな場所の入り口」も必要だと云うことです。それは、AppleApple Storeをオンラインだけで無く路面店を開いているのも同様で、そこでは実際に商品を手に取って見る事が出来るだけで無く各種セミナーが随時開催され、いわば「ランドマーク」となっています。こういったリアルな店舗は、アパレルなどに限らず、工業製品も含め単なる広告塔の役目だけではないのが伺えます。

日本ワインのプレゼンス向上が言われて久しいですが、ここ10年、ワイナリーの数は一気に増え、400社を超えたとのこと。(リンク先は、国税庁Webサイトの「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和3年調査分)」のワイン製造業の項、2022年4月25日公開)これからは群雄割拠の中で迎える乱世の時代になりそうです。
少子高齢化などにより酒類の需要が縮小する状況下では、なかなか大変かと思いますが、その中で、今回取り上げたメルシャンさん・サントリーさんに加え、サッポロさんやマンズさんの大手組は、輸入物やワイン以外の酒類を手掛けておられる中で、より一層リーディング・カンパニーとしての“日本ワイン”への取り組みを本腰を入れて出来るか?が問われています。

そのためにも、これら大手4社には以下の提言を進めて行って欲しいです。
●家飲みなどで重宝される「商品としての入り口」だけで無く、コロナ禍で落ち込んだ飲食店需要を喚起させ、刺激となるような「リアルな入り口」を設けること。
●それに加え一歩踏み込み、遠隔地であるワイナリーと消費地である人口集積地区を、「リアルな入り口」から有機的に結びつける施策を少しずつ形にしていくこと。

この二点が今後の宿題ではなかろうか…。

以上、長くなりましたが、大手の戦略的ワイン新商品を通じて今後を考えてみました。
拙文にお付き合いくださり、ありがとうございました。(了)

大手の戦略的ワイン新商品(前編)

先日、「お手並み拝見」と、興味のあった大手酒類メーカーさんから登場しました、戦略的ワイン新商品を購入して頂きましたが、これはちゃんと記録に残しておこうと記事にすることにしました。

滅多に記事がアップされず恐縮なのですが、気が向いた時に記録を挙げて行く事を出来ればと思います。

今回のお題は、
【前編】メルシャン・ワインズ ボルドー(本日アップロード)
https://mercianwines.kirin.co.jp
【後編】サントリー・ワインカフェ ワインソーダ2022年5月5日公開
https://www.suntory.co.jp/wine/original/wine-cafe/winesoda/
です。

  

全く形態は異なりますが、片やメルシャンさんはワインというフォーマットの範疇を崩さない中で、もう一方のサントリーさんは違うカテゴリーにワインを導入するというアプローチで、いずれも日本市場によりワインを戦略的に浸透させていこうという意欲溢れる新商品でしたので、取り上げることにしました。

少子高齢化などにより酒類の需要が縮小する状況下において、今後を占う上での率直な感想と小生なりの分析を記して参ります。

<メルシャン・ワインズ ボルドー


「日本のお客様のための優れたテーブルワイン」
を至上命題に、メルシャンが著名なMW(マスター・オブ・ワイン)による監修のもと、威信を掛けて作り出した新商品群が「メルシャン・ワインズ」シリーズ。(下記リンク1参照)
【リンク1】 ワイン業界異例の取り組みへ。2つの国のおいしさをかけ合わせた「ブレンドワイン」誕生 (キリン公式noteより)
現在は、2系統のラインナップが登場していて、一般消費者向けの「ディスカバー」シリーズの“ブレンド”と、今回取り上げる飲食店向けの「ラグジュアリー・コレクション」シリーズの“ボルドー”が展開されています。この内、「ディスカバー」シリーズの“ブレンド”では、輸入ワインのジャンルでは異例の国をまたいだブレンドという余り見かけなかったアプローチを取り、意欲的な試みをされていますが、こちらの“ボルドー”も後述の様にユニークなブレンドを取っております。

プレスリリース
【リンク2】 キリンホールディングス公式プレスリリース(2022年2月2日発表)
にも記されている通り、「日本のお客様にとってより飲みやすく、より果実味が前面に出た新しいボルドーのスタイルをお届けしたい」とのコンセプトから出来た、メルシャンのボルドーワインの新商品で、珍しくマルベックが主体になります。
【リンク3】 キリン公式オンラインショップDRINXの商品詳細によると、マルベック50%・メルロ50%の比率。

アサヒビールの大ヒットワイン“アルパカ”が、研究に研究を重ね日本向けの味わいにシフトしているのは、周知の事実ですが…。(下記リンク4参照)
【リンク4】 ダイヤモンド・オンライン「輸入ワイン売上1位「アルパカ」はなぜ量販店で“自動的”に売れるのか 」(2021年12月21日)
このメルシャンの“ボルドー”も上記の例に漏れず、「日本向けの味わい」(下記リンク5参照)
【リンク5】 ワインバザールニュース「メルシャンの新しい挑戦、「国を超えたブレンドワイン」開発秘話を紹介! ~Mercian Wines体験会①」(2022年3月11日)
を追求しています。なるほど、酸味を抑え目にまろやかな味わいと、日本人好みの風味でまとめており、

●果実味を追求した飲みやすさ
●長期熟成よりも、若いうちから美味しく頂ける

といった近年のモダンボルドーを体現した中で、日本市場向けにチューンしたところと言えるのが特徴です。
そんな訳で、カベルネ・ソーヴィニヨンを構成からあえて外したのは、上記の風味を満足させるための敢えてな選択だと思いました。五月蝿いワイン通なら「えー」とか言いそうですが(笑)。それと、“アルパカ”の単なる後追いに終わらず、独自のテイスト(相対的に、“アルパカ”の赤は甘味を感じる)に落とし込んでいるのも良いところでしょう。

ここまで書くと非の打ちどころは無さそうだが、「どうしても」書きたかった事があります。それは下記の2点です。
(1)「日本人好みの風味」だからこそ、日本ドメスティックなスタイルは、『シャトー・メルシャン』ブランドで追求してほしい。
(2)モダンボルドーの潮流に、新品種をどう取り入れていくか?も問われている。

(1)に関しては、現在シャトー・メルシャンでは上位クラスから「アイコン」「テロワール」「クオリティ」の3階層でラインナップが構成されていますが、メルシャン・ワインズの“ブレンド”に相当するのが、「クオリティ」クラスの“藍茜(あいあかね)”や“萌黄(もえぎ)”などが価格帯からも相当するものと考えられます。
で、今回の“ボルドー”とクラス的にも価格帯的にも相当するものが残念ながら今のラインナップからは見当たらない事です(「テロワール」シリーズの、“城の平”は価格帯が8,000〜9,000円台、本商品は公式オンラインショップDRINXにて3,000円台)。
しかも、「日本ドメスティックなスタイル」であればこそ、日本ワインとして「メリタージュ」と称されるAOCボルドーの品種構成に捉われず、マスカット・ベーリーAをはじめとする善兵衛品種も含めて、オリジナルの品種構成でネオスタイルを追求して行けば面白いのでは?と、思います。
(2)に関しては、これは次回の課題になると思いますが、温暖化を見据え、気候変動に対応した新品種がINAOによって承認されたとボルドーワイン委員会より公式に発表されていますが(下記リンク6参照)これらの品種の内、今回の“ボルドー”に関係している赤ワイン用品種では特に
マルスラン(Marselan)
○トウリガ・ナショナル(Touriga Nacional)
といったブドウが、モダンボルドーの潮流に則った「飲みやすく果実味が出ている」タイプの品種だけに、これらをどう取り入れていくかが課題になって来ると思います。
【リンク6】 Climate-change-in-Bordeaux-compressé.pdf CLIMATE CHANGE 〜 How the Bordeaux vineyards are planning ahead(ボルドーワイン委員会 公式プレスリリース、2019年8月)
そして、こうした品種を他国、いやボルドーのある本家フランスよりもいち早くモノにしていく事で先取りしていく「攻め」の戦略が可能になると考えられます。

以上の2つの課題は、「日本のワインにおける、リーディング・カンパニー」だからこそ出来る事では⁉︎ と、期待を込めて書いております。
チャレンジャブルな課題へ果敢に取り組んで行って欲しい。それが筆者の希望です。

後編に続く)

ワインの知識を養える書籍

長らく更新を控えておりましたが、情報共有の手段でちょうど良いアイテムである事から(似たような手段で”note”が最近流行っていますが…)、折角ツールとしてこのBlogで発信すればと思い、記事を書くことにしました。

そんな訳で、今回のお題は『ワインの知識を養える書籍』。


ワインに関することはまことしやかな風説がよく飛び交っています(特にネットで)が、科学的な見地での「知識」がきちんと伝わらず埋もれがちになってしまっています。そうした知識を分かり易く伝える日本語の書籍は中々お目にかかれなかったのが、その原因の一つです。(ワインが産業として盛んな国々では、多く出版されていています。事実、英語の成書は多い。)

 でも、最近になっていくつか目ぼしい日本語の成書が出版されている事から、これを機に紹介して、ワイン生活のお役に立ててもらえればと思います。 

 

<入門編(対象:ワイン初めての人から上級者と全ての層に)>

○『科学者が書いたワインの秘密〜身体にやさしいワイン学』
PHP研究所:刊、Kindle版あります!

https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-76635-5

著者の清水健一氏は、協和発酵に入社後、ドイツのガイゼンハイムワイン研究所に留学、サントネージュワイン~アサヒビールを経て、現在は酒類や微生物の研究関連のコンサルタントを務めておられます。

web.archive.org

【追記】(2022年5月11日)

上記のリンク先がサイト閉鎖に伴い無くなってしまいましたので、ウェイバックマシンによる、インターネットアーカイブを参照しています。

清水氏の書籍と云えば、講談社ブルーバックスで長らく続くベストセラーの『ワインの科学-「私のワイン」のさがし方こちらもKindle版あります!がよく知られています。

『ワインの科学…』が基本のお話をかいつまんで軽妙なタッチで描かれた名著とすれば、最初の『科学者が書いたワインの秘密』は、最新のトピックスに焦点を絞り分かり易く伝えてくれています。

出来れば、両方の書籍を買って読んでもらいたい。眉間にしわ寄せることなく読めるワイン製造の入門書として最適です! 

 

 <上級編(対象:ワイン愛好家やワインヲタク・笑)>

○『ワインの科学(文庫版)』

 (河出書房新社:刊、Kindle版あります!

https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309467269/

www.kawade.co.jp

 

【追記】(2023年12月2日)

文庫版が再販されたことから、こちらをBlogに掲載いたしました。

世界的ベストセラーとなった『ワインの科学』(日本語版は2008年出版)と『新しいワインの科学』(日本語版は2014年出版)の出版を経て2021年に文庫版が刊行されました。栽培・醸造・人体とワインの3つの章毎に、技術全般では無く、ワインを嗜む人々が非常に関心を寄せる数々のテーマに関して焦点を絞り、科学的に解明されている事実を詳しく説明してくれています。

元の単行本は結構なボリュームの本ですが、コンパクトな文庫版になっただけでなくKindle 版もございます。長年のベストセラーが、手に入りやすい形で再販されるのはありがたいことです。時の流れは早い。

 

○『きいろの香り : ボルドーワインの研究生活と小鳥たち』

(フレグランスジャーナル社:刊、Kindle版あります!

https://www.fragrance-j.co.jp/book/b211473.html

富永敬俊氏と云えば、ワインに通じている多くの方々が「甲州きいろ香(シャトー・メルシャン)」を想起されるかと思いますが、多大な功績としてボルドー大学にてソーヴィニョン・ブランの香りの元となる物質を発見した上に、香り発現のメカニズムについて解明されたことが挙げられます。

この功績を伝える伝記も出版されておられますが、当コラムでは『ワインの知識を養える書籍』という趣旨から、こちらの書籍が相応しいので紹介いたします。

科学的な記述による「きいろの香り」の詳細についてのご本人による解説もさることながら、現地での生活を通じての様々な日常風景も交えたお話は、富永先生の人となりが垣間見え殺風景な技術書に止まらない良書と云えます。残念ながら富永先生は2008年6月8日に逝去(享年53)された上に、この単行本も絶版となって入手出来なくなってしまいましたが、近年電子書籍化されたことは朗報でした。是非とも手にとって頂きたいです!

ワインの香り全般に関する著書(『アロマパレットで遊ぶ:ワインの香りの七原色』)もお勧めです。

 

【追記】(2022年9月12日)『もっとMBA』を追加しました。

○『もっとMBA マスカット・ベーリーAの魅力と可能性』

山梨日日新聞社:刊、単行本のみ 

https://www2.sannichi.co.jp/BOOKS/seikatsu.php

「日本のワインづくりの父」、川上善兵衛翁が育種した、マスカット・ベーリーA(以下、MBAと略します)。いまや、日本のワインシーンには欠かせない品種となっており、OIV(国際ワイン葡萄機構・http://www.oiv.int)にも品種登録されました。

本書籍は、こうした背景にも関わらず、名前は知られてもいまだ認知度が低いMBAに関する詳しいお話を、名だたる執筆者陣が分かりやすく・丁寧に記した解説本です。

MBAが産まれた背景やその歴史、特徴、手がけているワイナリーやおすすめの銘柄などを多角的に紹介しています。是非手に取って、一読してください!
(この単行本で紹介しきれなかったお薦めの銘柄もございますが、どうしてもと云う方はSNSを通じて、小生のアカウントまで連絡下さい。但し、プロフィール非公開や鍵付きアカウントの方にはお答え致しかねます。)

 

<ワイン製造(醸造・栽培)を生業とする人編(もちろん、一般の方々も!)>

○『イギリス王立化学会の化学者が教えるワイン学入門』

エクスナレッジ:刊)

https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767825397

イギリス王立化学会の化学者が教えるワイン学入門

イギリス王立化学会の化学者が教えるワイン学入門

 

 書名に、「化学者」とあったことから、元化学の研究に従事していた私としては買わずにいられませんでした。(笑)

冗談はさておき、ワイン造りの工程が川上から川下まで全てにおいて詳しく、しかも平易な言葉で噛み砕いて説明されていますので、技術的なことをきちんと知りたい人にはうってつけであります。一般の飲み手だけではなく、売り手や造り手などの業界関係者のプロの方々にこそ一度は目を通して欲しいです。

近代的なワイン醸造、いわゆる”モダンワインメイキング”がテクノロジーの塊という印象を持たれて久しいですが、実際は”古の技”のメカニズムが解明され取捨選択された結果、先人の経験と知恵に基づく過去の造りの積み重ねの延長線上にあることが、この書籍を読めば理解出来るかと思います。

 

○『新ワイン学』

(ガイアブックス:刊)

http://www.gaiajapan.co.jp/books/food/wine/3697/

新ワイン学

新ワイン学

  • 作者: 
  • 発売日: 2018/11/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

最後に挙げるのは、もはやワイン造りに携わる造り手向けの、純粋な専門技術書になってしまいますが、日本語での成書が少ない事から貴重な書籍として挙げておきたいと思います。

この本の前身となった『ワイン学』という書籍が1998年に刊行されていますが、時を経てちょうど20年後に現在の日本のワイン製造に携わる第一線の技術者が集結して新しく書かれたもので、旧著とは内容が完全に変わっています。

製造現場での技術革新は、徐々にではありますが絶え間なく進んでいるのがよく分かります。

 

以上ではありますが、レベル毎に合計7点、日本語でのワインに関する知識を養える書籍を紹介しました。ネットで様々な情報が飛び交う今日この頃だからこそ、こうした書籍をじっくりと読んでもらいたいと切に願っています。

 

はてなBlogへの移行とご挨拶

ご無沙汰しております。当Blog管理人のokkuu-daamanです。

諸般の事情により、Blogの更新を休止しております。

 

日本のワインを取り巻く状況はここ数年、激変しております。

 

今となっては、私管理人が過去日本各地のワイナリーを尋ね歩き書き記した頃と、現在の様相は様変わりしている所もありますが、過去の日本各地のワイナリー訪問の大切な記録をアーカイブしておきたいと同時に、脚光を浴び始めた頃の状況も知って頂きたい意向から、敢えて閉鎖せず公開は続けて行く所存であります。

 

しかし、当Blogを掲載していたプラットホームである「はてなダイアリー」が2019年春でもって終了し、「はてなブログ」へ統合する事になりました。 

そこで、当Blogも「はてなBlog」へと移行する事になった次第であります。

 

Blogのサービスは変わりましたが、引き続き今後も何卒よろしくお願いいたします。