ルミエール訪問

1885年(明治18年)に創業と現存する日本の本格ワイナリーの中では最古参とされ、今は栽培のチーフを務める小山田幸紀氏の存在がクローズアップされているルミエールさん。
「レザンファン・カベルネフラン2003」を飲んでファンになったのと、「小山田氏に会いたい!」という一心で待望していたこのワイナリー訪問がようやく実現にこぎつけました。
降矢徳義氏が設立して以来このワイナリーの生産するワインは、戦前はもとより最近に至っても、数ある大手ワイナリーを差し置いて国賓を迎える行事などに採用されるなどその名声は高く(会社Webページ参照)、中堅ワイナリーの中ではタケダワイナリーさんやココ・ファームさんと並んで実力派でかつ造り手の顔が見えるワイナリーとしてボクは評価しています。(タケダさんのスパークリングワイン「キュベ・ヨシコ」やココさんののスパークリングワイン「NOVO」も国内で開催された国際行事でのおもてなし用として採用されてます。)
それだけでなく、このワイナリーが注目されるのは、何といっても栽培課課長を務める小山田幸紀氏が自然農法による葡萄造りを取り入れ、ただでさえ高品質のワインを造り上げるルミエールさんが原料造りからてこ入れを始めている事です。そして、現在小山田氏は、自社畑は勿論の事、契約栽培農家にも丁寧にお願いしてトータルな面から醸造用ブドウそのものの品質の向上に努めておられ、自社畑では自然農法を取り入れつつあります。
先のパカレ氏諏訪訪問の時も小山田氏は当然参加されてましたが、話を聞いた所、おおむね私が5月8日の記事に書いたように、自然農法をブドウ育成の手法の軸として取り入れつつも、その中で先人の知恵に経験則、そして現場での判断(これが一番重要だそうです)を元に臨機応変に対応して「テロワールの表現」を目指すという事でパカレ氏と同様のスタンスでかつ自分なりに咀嚼した形で栽培に携わっているとのことで、やはりパカレ氏の「自然体で臨む姿勢」に共感したという事です。そんな小山田氏に「自然農法はあくまでも手法の一つとして取り入れてるんですよね?」と質問した所、「そうですね。世間では自然派として捉えられているようですけれど、僕は特に標榜している積りは無いですヨ。」と淡々した中に丁寧な口調で語っておられたのが印象に残りました。
今回、その自然農法による畑を拝見さしてもらいましたが、ブドウの葉がつやつやしており、虫喰いの跡は少し有るけれど、健全な環境で育成されている(地面の雑草も野放図にボウボウと生えている訳でなく綺麗な野原という感じです。)のがよーく分かりました。
このあとは、小山田氏の案内により、現在は一部が発酵槽として残されている石蔵ワイン貯蔵庫でバレルサンプル(シャトールミエールから光シリーズ、果てはレザンファンシリーズ)を頂き、それから、売店に隣接したテイスティングルームにて試飲をしました。以下はその感想です。

<シャトールミエールシリーズ>
○赤(2004)
自社農園のカベルネ・ソーヴィニオン(CS)と、山梨市岩手地区のカベルネ・フラン(CF)と、塩尻のメルロをブレンドしたもので、エレガントで有りながら豊かで暖かみの有るボディーでいて優しい口当たりの赤ワインです。透明感が感じられる鮮やかなルビーの色彩が印象的です。絶妙のアサンブラージュが光るフラッグシップの名に相応しい一品!
(追記)
今飲んでも美味しいのはモチロンですが、寝かせて年月が経ってから飲んで見たいワインです。
○白(2004)
甲州種100%の樽発酵・樽熟成ワイン。酸化熟成を上手に取り入れ、古酒でよくある蜂蜜のような風味が独特の味を醸し出しています。その一方でキレが有り果実味も程よく残された厚みのある辛口白ワインとなっています。結構個性的で、好き嫌いが別れるかも。(シャルドネであることからブドウの品種による趣きは別にして、酸化熟成が掛かっていながら果実味のある所がカタシモさんの「合名山・白」に似ています。ちなみに僕は「合名山・白」が好きなのと同様にこの「シャトールミエール白2004」も好きです。)
<光シリーズ>
甲州(2002)
先の「シャトールミエール白2004」をおとなし目にして、まろやかにしたバージョンと言えます。樽香もさほどきつく無く(ルミエールさんは全て古樽を使用しています。)、こちらはそんなに酸化熟成を感じさせません。さっぱりしていてキレの有る辛口ワインです。
(ちなみに、右写真の赤(カベルネ・ソーヴィニョン 2004)は希少品の為試飲出来なかったので、奮発して買いました。)
<レザンファンシリーズ>
甲州(2004)
先日近所の行きつけのワイン屋さんで2003を購入しましたが、程よい厚みと果実味が同居した飲み飽きないワインで、濃厚なチーズや肉料理でない限り結構色々な料理と合うトータルバランスの優れた甲州種ワインです。
まだ2004は出たばかりでどちらかというとフレッシュ感が際立ってますが、「一夏越えると程よい味わいになりますよ。」とは小山田氏の弁。
カベルネフラン(2004)
CFはボクにとって気品の有る香りが大好きな品種で、このレザンファンシリーズで虜になったといえます。2003に比べるとボディーの厚みではまだまだの感が有りますが、コレも、時間が経過すれば熟成が進み美味しくなる事でしょう。
○ブラッククイーン(2003&2004)
偶然2003が有ったので垂直試飲となった訳ですが、'03は酸味が特徴的で少し熟成が進んで枯れた感じになったにも関わらず酸味が際立って残っており、それがアクセントとなってます。但し、さぬきワイナリーの赤みたいな嫌みな酸味ではないので、そこはルミエールさんにのレベルの高さ故のものでしょう。
一方の'04は豊かなボディーと果実味と酸味のバランスがとれ、高いレベルになってます。
ブラック・クイーンという品種は濃厚な暗赤色で結構刺激的な風味に仕上がるのが特徴ですが、いずれも上手にまとめ上げています。
<石蔵和飲シリーズ>
○マスカット・ベリーA(2004)
前述した現存する石蔵発酵槽で発酵したワイン石蔵発酵槽の特徴である丸みの有る仕上がりがベーリーAの果実味と相まって素朴ながらも品性に富んだ味わいになってます。
ちなみに、石蔵発酵槽には品種により向き不向きが有り、ベーリーAとは絶妙の組み合わせとなるという事だそうです。
<その他>
甲州シュールリー(2005)
ルミエールさんが始めてリリースするシュールリー製法の甲州ワイン。M藤さんの濃厚なアミノ酸の風味やFッコさんのクリアーでブライトなシュールリー甲州ワインとは異なる、個性丸出しのフレッシュな酸味と切れ味が特徴の、有る意味シュールリーッぽく無いワイン。
何でも、小山田氏が自分の好みににあったシュールリーが無かったので作ったという結構思い入れの有るワインですが、イイ意味で個性が出てます。一度お試しあれ。スッキリサッパリの夏向きのワイン。美味しいです。
今回は、短い時間にも関わらず、盛り沢山の内容でとても楽しくかつ充実した時間を過ごせました。今、ルミエールさんは、小山田氏の下で徐々に改革が進められており、伝統におもねる事なく新しい風を取り入れている最中で過渡期の感が有りますが、そこは名門、芯はブレず腰を据えた建設的な取り組みで、今後の動きに期待大です
●参考資料
何ということをするか! シャトールミエール飲み比べ」(「ぶどう畑」より)
共同サイト管理者の一人であるmutsu様の寄稿。ルミエールさんの実力を伺う上で見逃せない貴重な資料であると同時に、飲み比べに至る抱腹絶倒なエピソードと文章が笑いを誘います。ホンマオモロイでっせ!