「もう『普通のお菓子屋』とは言わせません!」 シャトレーゼ勝沼ワイナリー訪問

あの「イケメン」戸澤一幸氏が率いるシャトレーゼ勝沼ワイナリーさん。5月20日のワインフェスでそのポテンシャルの高さを見せつけられた私は勿論、次なるターゲットとして狙っていました。いやがおうにも期待が高まります。
万力公園の「グリル・パイナリー」の名物メニュー、ビッグランチプレートで腹ごしらえをして勝沼に戻り、戸澤氏とご対面後、早速畑に案内して頂きました。
シャトレーゼさんは、元々山梨で1955年に今川焼き風お菓子のお店を起こしたのが起源で、その後首都圏を中心にフランチャイズ(FC)を展開する洋菓子を中心とした菓子店として発展し、今や西日本の一部(九州全県と中国・四国の一部)を除きほぼ全国的に店舗を出してます。
その関連事業としてスタートしたのが「勝沼ワイナリー」、「お菓子屋さんが片手間にやっているワイン」と見られがちですが、戸澤氏を中心に新規に立ち上げ、一から取得した果実酒製造免許が2000年にようやく認可され(普通は取得が困難な為、有休免許を買い取る形が多い)したというだけあり、気合いの入りようが違います。その戸澤氏は、山梨大学を卒業後、勝沼御三家の一つ丸藤葡萄酒工業さんの大村春夫専務の下でワイン造りのイロハを学び(「丸藤さんでは、大村専務のお蔭で大学では学問でしか教えてもらわなかった事以外の実践的な所を学ぶことが出来、それが財産になってます。」という意味のことを仰ってました。大村専務の懐の深さが伺えるエピソードですね。)それだけでなく広島にある独立行政法人酒類総合研究所にても研修したという筋金入りの経歴の持ち主です。
そんなワイン道のエリートの戸澤氏ですが、本当にハツラツとした方で変に気負いの無い親しみやすい人柄が魅力的です。しかも、サッカーフリークでダイヤモンドさんの雨宮吉男氏や勝沼醸造さんの栽培責任者小林剛士氏らと共にサッカーチームも結成してる熱い心の持ち主でもあります。(畑の案内の合間には、当然二人でW杯の話で持ち切りでした。笑)
シャトレーゼさんの自社畑は、勝沼地区の鳥居平と等々力、一宮の野呂地区に畑を所有してますが、コレもシャトレーゼさん本体の社長さんである斉藤寛氏が土地を所有していたという偶然に恵まれ、ただでさえ勝沼のどのワイナリーがのどから手が出るほど欲しがる鳥居平に畑をこしらえる事が出来たのです。(さすがバックに大資本が付いているのはには敵いません。)
その鳥居平の畑に案内して頂きましたが、相当の面積でしかもかなり上の方まで開墾されており、午前中までに降っていた雨で濡れているハズの地面は、強烈な太陽の日差しが降り注ぐ天気ということもあり、すっかり普通の地面になってました。独特の粘土質の土壌とはいえ、いかに水はけが良いかが分かります。(笹子トンネル方面からの風通しの良さも含め、そこが勝沼の銘醸地であることがよく理解出来ました。)
ちなみに栽培品種は、
鳥居平=シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンソーヴィニヨン・ブラン、甲斐ノワールセミヨン
等々力=シャルドネカベルネ・ソーヴィニヨン
野呂=カベルネ・ソーヴィニヨン
と結構大規模に幅広く栽培してます。(鳥居平では試験栽培で、シラー、サンジョベーゼ、カベルネ・フランヴィオニエもあります。スゴイですね。) また、甲州種に関しては「鳥居平甲州の会」との契約栽培でまかなっております。
さて、工場ですが、鳥居平の畑から一望出来るのですが、よーく見ると広い土地の隅っこに平屋建ての建物しかありません。新興ワイナリーということもありますが、ブドウ栽培が軌道に乗り供給が安定して出来るようになるまでは小さな工場で凌いで、それから改めて工場を建てる事を前提としており、醸造設備には相当お金をかけてますが、瓶詰めや打栓、ラベリングに関しては最小限の設備で手作業となってます。
あと、特筆すべきなのが、FCでお菓子の店舗を持っていることですが、酒類販売出店制限の特例法が8月末に失効になることを踏まえ、FC店でのワイン販売を拡大するそうです。従って、マーケティングにおいて有利な立場になることは間違い無いです。そこで、いかに高品質のぶどうを供給する体制造りを整えることと販売戦略が課題となるでしょう。
さて、試飲ですが今回はワインフェスで頂いた物以外のを中心に頂きましたが、一番の印象は年毎の進化が著しく、ワインの品質が年毎に向上していることが、よく分かったことです。甲斐ノワール(2004)が以前の2003より良くなっていることは、5月20日のワインフェスの記事に書いた通りですが、シャルドネの垂直試飲では2001→2002(ココまでは鳥居平・等々力のをアサンブラージュ)→2003(鳥居平ぶどうのみ使用。ワインフェスで賞味。)と多少産地違いがあるとは言え、洗練されて来ている事がよく分かりました。また、味わいがワインフェスの記事に書きましたように一貫した物があるのが特徴です。それが最近のヴィンテージになってより一貫性が強まり、シャトレーゼさん」のワインとしての風味を確立して来つつある。率直にそう感じました。
潜在能力を発揮しつつある行く末が楽しみなワイナリーです。
(追記)
4年前(2002年)にシャトレーゼが買収した甲斐市の「ベルフォーレワイナリー」、こちらは主に輸入果汁等を原料に使用したワインを主に生産し、チーズ・ガラス工芸品等の販売も行っている「観光ワイナリー」的存在に対し、今回の勝沼ワイナリーは地元産ぶどうを全てに使用した「本格”日本製”ファインワイン」という位置づけです。
くれぐれも混同しないように!