鍋割山荘訪問&登山道補修

「丹沢の天狗」と呼ばれ、多くの人に親しまれている草野延孝氏が営まれている鍋割山荘。そこには何とも言えない人を惹き付ける魅力があり、名物メニューの「鍋焼うどん」だけでなく、雰囲気・適度な距離感での大人の人付き合いが出来る居心地の良さ・そして何と言ってもご主人の草野延孝氏と奥様の人柄による所が大きいです。
勤務している会社の山好きな人が鍋割ファンで、しょっちゅう通っていたことから連れて行ってもらい、それが縁となって今でもお付き合いさせて頂いております。そして、春と夏の登山道補修には都合がつけば参加させて貰ってます。
草野延孝氏の話はいろいろな所で語り尽くされているので詳細は省きますが、僕が思うに、本当に博識で山の事だけでなくいろんな知識を持っており話を聞けば勉強させられるコトばかりで、なおかつしっかりとした芯を持ち合わせながら思考が柔軟で変に頑な所が無い所に魅かれます。それとチャーミングでユーモアたっぷりで大らかな雰囲気の奥様が「縁の下の力持ち」で山荘を支える存在で、そのおもてなしの精神は何物にも変え難いとても有難いものなのです。
朝からドピーカンの晴天で、じっとしているだけでも汗が出る天気だったコトから、雷に遭うのはカンベンと早めに出発して、県民の森の駐車場に車を停めレッツゴーです。今回は体調万全で調子がエエ感じです。
二俣で登山届を出してそれから名物のペットボトル置き場に到着。ココで荷造りをし、背負子に2Lの水入りボトルを6本と自身の荷物(小屋へ差し入れのワインと自分用の水も入ってます。^^;) )をくくり付け約20kg近く背負って出発です。先客にはボクより若い男の子二人と女の子の3名のグループがいて、男の子二人は沢山のペットボトルを担いでました。(重い方のを後で山荘の秤で軽量したらナント58kgでした! ちなみに草野氏は去年暮れ57歳で110kgのボッカに成功しております。最高記録114kgに次ぐ記録です!
今回は体調を整え前夜早めに寝て充分に睡眠を取ったことから絶好調で、乗越まではあっという間につきました。山へ行くと下界での事を綺麗サッパリ忘れ純粋に楽しむコトが出来るのでリフレッシュには最適です。(というか、下界の事を引きずっているようでは危うて登山でけへん。)風通しが良かったので一旦休憩。息を整えて汗を拭き体制を整えて出発。早めに歩きましたが負荷があるので程ほどにマイペースですが、この際だからノンストップで行ってしまえと勢いで登り、結局山頂まで行ってしまいました。
ちなみに、さっきの先客の3人組ですが鍋割で出会ったカップルとその友人で、馴れ初めの話は、男の子の方か女の子の方のどっちの方か忘れたのですが、何でも『BE-PAL』読んで草野氏の所へ尋ねてみたいという好奇心から山登り始めて1年か2年ぐらいですっかりヤマノボラーになって山荘のお手伝いをして、それがキッカケで山荘で出会い目出度く二人は結婚することになったとか。(おめでとうございます。パチパチ。スンマセン、記憶がおぼろげで。ちなみに奥様曰く「鍋割は山の出雲大社」で、出逢って結婚した二人は末長く縁が続いているという霊験あらたかな(?)山小屋です。ボクもそれにあやかりたいものです。)
それより、彼らの姿を見て経験も大事だけど、何よりも好きで山に来ている。その精神が大事やなぁと思ったのと同時に「初めてだった頃の気持ちを忘れない」ことを改めて感じました。
で、夜は恒例の小山和義氏の『ヨーデルの夕べ』とヒメホタル鑑賞会です。今回の小山氏の声の通りは何故かとても良くて何だか冴えてましたね。外せないのが名歌「丹沢に寄せて」、いつ聴いてもエエ歌です。それと、ヒメホタル(陸生のホタル)がこの時期出没するのですが、今回は小丸方面側と後沢乗越方面側に少々下った所にそれぞれ4・5匹程度と少なめで少々淋しかったのですが、ホタルのはかない美しさにいつも感動します。で、終わった後は小屋の外で二次会。奥様のギャグが今回は冴えまくり。(笑) 若いメンツも加わり(一応僕も若い方なんやけど。)なんかミョーに盛り上がりました。
さて、翌日は登山道補修です。天気のことも考え、予定より早めに開始。階段用の横棒と杭に丸太を背負子にくくり付け、現場に出発。大丸隊と小丸隊に別れ、私は小丸隊に。毎年勉強させられるコトが多い登山道補修、定石の作業手順はあるのですが、現場での臨機応変な対応が重要なのです。この登山道補修、荒れる登山道を見るに見かねた草野氏が自発的にやり出したのですが、全て自費で賄い資材の運搬も草野氏自身がボッカで運んでいるのです。でも、僕が思うには、山に来る登山者を「お客様」として捉え(もちろん、変に迎合するようなことはしません!)、気持ちよく安全に道を歩いて貰いたいという素朴な願いが根底にあり、それを知っている有志が、「ボランティア」と言う大層な志よりも本当に好きで参加しているという義務感に駆られてやっている所が無いゆえにボク自身とても魅かれるモノがあってお手伝いしに行きたくなるのです。
(これだけほっといてでも集まってくれるのだから、県も材料費だけでも支払いすべきだと思います。他の所は県が予算を出して業者に任せて整備させている上に、国定公園上の登山道として同等なのですから。それと、木材は腐りにくい檜を使用してます。単価は高いが、防腐剤浸透させた杉材より長持ちし、結果的にはかかるお金や環境への防腐剤のインパクトとかを考えるとなんかオカシイでと思います。)
幸いにも曇り空のままで雨に降られずに作業は終了。昼御飯は名物の『鍋焼うどん』を頂きました。
今回は実直で朴訥ですけど柔軟な思考で博識の草野氏とチャーミングでユーモア溢れる大らかな奥様始め、小屋のスタッフの皆様にはお世話になりました。改めて感謝の気持ちで一杯です。
(行程)
7/15(土)
出発(県民の森駐車場、12:15)→二俣(12:30)→ミズヒ沢登山口(ペットボトル置き場、12:45〜55)→後沢乗越(13:10〜25)→鍋割山(14:15)
7/16(日)
登山道補修(7:30から午前中いっぱい)
鍋割山(13:10)→後沢乗越(13:50〜14:15)→県民の森(15:10)
(おまけ)
ヨーデルの夕べ』の翌朝、朝の風景を眺めながら小山氏が面白い事を語ってくれました。
日本には、「ヨーデル協会」なるものが存在するらしいですが、いくつかの流派(スイス派やチロル派等など)同士が固まって派閥を形成し、それぞれの派が自分の派の事しか考えず互いに貶しあっていて風通しの悪い組織になってしまい、流派に関係無く忌憚無く意見を出し合ったりそれぞれの良い所を学んで向上心を持って切磋琢磨していく姿勢が感じられないそうです。(本場と異なりただでさえ日本ではマイナーな存在なのだから、良い意味での結束を保たないといけないと云うのに、、、。) そういう訳で、在籍中は喧嘩もしたりしたのですが、やがて次第に距離を取る様になり現在はフリーで活動の場を求めることに転進。そうすることで、逆に余計な気苦労から開放されかえって自身の歌唱力研鑚や活動に割ける時間が増えたそうです。
そんな小山氏も、お年を召して(50代だったかな?記憶があやふやでスミマセン。)喉よりも腰が今一つの様で、しっかりとした声を出すためには姿勢が大事(後、鍋割に自身の楽器などの機材を運ぶパワーも維持しとかないと!)なので、今後どれぐらいまでできるか不安と仰ってましたが、草野氏とは異なる形ですけど、シッカリした芯は持ちつつも変に頑なな姿勢を取らず、変化を恐れずに進取の精神を保ちつづける柔軟さには頭が下がると共に、「ああ、こんな感じで年を取っていくことが出来たらなぁ〜。」と率直に感心しました。