ピュアな気持ちで山と向き合えた三日間〜北ア・五龍岳

さて、その五龍登山ですが、2006年12月30日の晩に白馬五竜スキー場の仮眠所に入り、翌日から2泊3日の予定で行って来ました。
元旦の挨拶にある通り、本当に今回の山行は山の神様に感謝する事と同時に、夏より厳しい環境に身を置く事でより自然の懐の深さを感じる事が出来たと思います。
携帯付属のカメラなので多少写りがイマイチですが、写真はコチラをご覧下さい
<1日目(12月31日)>
夏の時と同様、白馬五竜テレキャビンに乗車しスキー場トップのアルプス平ゲレンデへ。滑っている人の邪魔にならないよう遠慮がちにパーティーはゲレンデの脇をそそくさと通り抜けます。
ゲレンデ最上部からは直ぐそばのピーク「地蔵の頭(1673m)」に入り、そこからは冬山登山の世界と一転します。荷物が夏と違い防寒対策等により高度な装備を必要とするので嵩だけでなく重さも半端ではありません。
すでに登山者が入っていたのでトレース(踏跡)が付いてますが、時折潜る事もあり、一歩一歩足を運ぶのが大変で夏の倍近いペースになってしまいます。特に登りは大変!(そういう訳で夏と違い、1泊余分な日程で余裕を持たせています。)
「小遠見山(2007m)」まではひたすら登りの連続で一同ヒイコラ言いながらでしたが、登り付くと『武田菱』の雪形がくっきりと浮き出ている目標の五龍岳(2814.1m)が目の前に対峙し、「あの山に登るのだ!」と思うと気が奮い立ちます。そのあとは、「中遠見山(2037m)」「大遠見山(2106.3m)」とアップダウンを繰り返しますが、さすがに足が潜るのは大変なのでワカンを足に装着して「西遠見山(2268m)」近くのベースキャンプ設営地点まで前進です。
ほぼ予定通り6時間の歩きでしたが、初日はとりあえずここまで。テントをさっさと設営して重い荷物を運んだ疲れを癒すために早めに(18時半!)就寝です。zzz、、、。
<2日目(元旦)>
晦日に続き、朝から晴天です。4時に起床し食事と支度をして6時に出発。「白岳(2451m)」への登りの基部で初日の出を迎えました。この時の太陽の姿の美しかった事! そして朝日に照らされる五龍とその南方に続く名峰「鹿島槍ヶ岳(2889.1m)」の姿は神々しいものでした。
白岳の登りは一面の大雪原。稜線上を行くのですが、雪庇を避けるようにルートは少し南斜面寄りを取ります。やがて白岳の登りを経て雪の付いた五竜山荘に到着。ここで岩稜がそそり立つ山頂へ向かう前に一服入れて、気を引き締めます。
ここからはしばらくは稜線上を歩きますが、岩稜を避けるために西側(黒部側)を巻いてトラバースします。固い雪の片斜面のトラバースなのでとにかくここで滑落しては大変です。アイゼンをシッカリとかまし、ルート取りに気をつけながら慎重に通過、稜線の鞍部の直下に到着です。そこからは鞍部に向かって直登し、最後の難関である山頂直下の雪の急斜面をイッキに上がります。
がむしゃらに最後の力を振り絞り、山頂に到着。風はあったものの冬型の気圧配置が緩んでいた事から、日常の冬とは違いこの日は穏やかでした。北アルプス北部の盟主・剣岳(2999m、夏冬問わず日本の山で最も登山者に厳しい山として知られる。)の姿も見えます。そんな訳で無事に登れたと思うと同時に何度も言うように山の神様には感謝する他ありません。
先行して到着していたパーティーと山頂で記念写真の取り合いをしたあとは、感慨にふける間もなく下山しなくてはなりません。(いくら穏やかな天候とはいえ寒いし、、、。)それに、山は登りより下りが難しいのです。『無事に降りれる事』、これが登山で一番重要な事です。冒険だけで行くのでは決してありません!
下りは勿論元来たルートを忠実に下るのですが、山頂直下の急斜面は言うまでもなくさっきのトラバースも慎重に下らなくてはなりません。実は登りよりもこの下りの方がとても緊張し、ある意味一番肉体的にも精神的にも堪えたのがこの行程でした。メンバーの方の檄も飛ぶ中細心の注意をはらい、山荘に戻った時にはようやく胸を一旦撫下ろす事が出来ました。
最後は白岳の大斜面を下りベースキャンプへ。本当に緊張からとき放たれたのは、この時でした。持って来た缶ビールで乾杯。今年最初に飲んだお酒はビールでした。本当に美味しかったデス。
<3日目(1月2日)>
緊張もあってか眠りが浅かった1日目とは違い、2日目の晩はぐっすり眠れました。この日は曇りで時折小雪がちらつく空模様。7時に出発する頃は雲が高かったのですが、次第に低くなり途中中遠見山で振り返ると、雲の中に五龍岳始め山並みが隠れてました。
後はスキー場めざして降りるだけですが、最後まで気を抜いてはイケマセン。ただ、登りに比べ圧倒的に短い時間で歩く事が出来ました。(後述のコースタイム参照。)
折角なので、地蔵の頭手前で2006年12月3日の白毛門登山で行う予定の筈が積雪量の少なさに断念していた雪中ラッセル訓練を実施。登山においてはマニュアル通りの学習ではなく何事においても実践が重要。おかげさまで時間があったのでラッセル訓練も出来ました。
地蔵の頭を過ぎるとそこはスキー場。一転してまた世俗の世界に戻りメンバー一同苦笑。またまたゲレンデを遠慮がちに通り、テレキャビンで下山。後は、小生の "赤い彗星号" で大町温泉郷・薬師の湯にて体を暖めて汗を流し、東京方面へ帰るメンバーを信濃大町駅まで送り別れの挨拶を交わし、一路大阪へと帰省するのでした。
(行程)
<1日目>
アルプス平(8:40) →地蔵の頭(9:10〜20)→途中休憩2回→小遠見山(11:20)→途中休憩1回→中遠見山(9:42)→途中休憩1回→西遠見付近ベースキャンプ(14:10)
<2日目>
ベースキャンプ(6:10)→途中休憩1回→白岳(7:40)→五竜山荘 (7:55〜8:10)→五龍山頂(9:50〜10:10)→五竜山荘(11:20〜40)→西遠見付近ベースキャンプ(12:50)
<3日目>
西遠見付近ベースキャンプ(7:00〜10)→中遠見(8:05〜15)→小遠見山(8:40)→途中ラッセル訓練(9:10〜40)→アルプス平 (10:00)