ナチュラルファーム・グレープ&ワイン(『比賣比古(ヒメヒコ)ワイン』)さん訪問

カタシモさんの本拠地である柏原市太平寺。そこより山手に上がり「高尾山」と称される小高い山の上にヒメヒコさんのゲストハウスが立っております。そこからの大阪平野の眺望は絶景で、併設されたレストランではワインを頂きながらの食事も楽しめ、おもてなしの設備も充実しております。(何と、野外BBQやミニゴルフも楽しめます!)
1999年に試験醸造免許を、2001年に本醸造免許を取得して翌年より本格的にワイン販売を開始した出来立てホヤホヤのワイナリーですが、後述するように40年の樹齢のマスカット・ベリーAの樹が存在する事からブドウ栽培を長年手掛けておられたとの事です。
しかし、かつては多数のワイナリーが存在していた(一時は100社をも越えていた!)大阪のワイン造りの灯を絶やしたくは無いという熱意の下でワイナリー創業を決意され、2006年11月13日の 『大阪産ワインヌーボ・フェアー』の記事で触れている柏原&羽曳野市5社の一角を占めるに到ってます。
今回、案内をして頂いたのが醸造責任者で栽培も担当しておられるこのワイナリーの「顔」と云うべき照屋賀弘氏に色々と話を伺いました。
で、この照屋氏、山梨のワイナリーとは浅からぬ縁を持っており、あのイケダワイナリーさんの池田俊和・秀俊父子両氏との親交を持っておられ勝沼を訪れる際はお世話になっておられるそうです。しかも、独立行政法人・酒類総合研究所の研修生時代は金井醸造所の金井一郎氏と同期生だったというのにビックリしたのでした。やはり業界は狭いものなのですネ。(笑。それに回り廻って繋がっているこの縁も大事にしないといけないと思いました。)
さて、ヒメヒコさんで栽培しておられる品種は、
(白ぶどう)
甲州(堅下本ブドウ)、シャルドネソーヴィニョン・ブランリースリングピノ・ブラン、ナイヤガラ
(黒ぶどう)
カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、マスカット・ベリーA
なのですが、驚いた事にこれだけの多品種で河内の地に適した品種の模索を続けている上に温暖化を見越してシラーを、そして「植えてもいないのに最初からでけへん(注:関西弁での「出来ない」の意)と決めつけるのはアカン。」という思想の下にピノ・ノワールの栽培にも着手しているとの事です。一見無謀とも思えるその挑戦的な姿勢ですが、実は照屋氏はものすごく物腰の柔らかい方でその奥に持っている情熱は物凄いモノとしか言いようがありません!
その姿勢は栽培にも反映され、かつて若木の頃には一本木仕立て(一番古典的な棒仕立てとは少々異なり、アサガオがツルを這わすような感じの棒に沿った仕立て方。)を取り、成長するに従い垣根仕立てに転換したのですが、それも色々な仕立て方のオンパレードで、一般的なコルドンからギュィヨー、果てはオリジナルのも試す(例えば、コルドンなら両側にT字状にするのを片側だけにする等書き出せばキリが無い。)といった工夫や、土壌造りでも様々なチャレンジをされてます。
しかも、この上に徹底した減農薬栽培を取っておられることから栽培にかける手間は並大抵のモノではありません。(併設されたミニゴルフ場も手作業によるメンテなんです!最近では、害虫より鳥獣害、特にイノシシや狸、野生化したアライグマがぶどうをかっさらって行くことが多く悩みの種だそうです。これは、大阪のワイナリー何処もが抱える問題で、結構対策が大変だとのこと。)
こうした労苦を越えて造られるワインは主に白は甲州・ナイヤガラ、赤はメルロ・ベリーA、ロゼと5〜6銘柄のラインナップですが、やはりイチ押しはフラッグシップの『華』という銘柄のベリーAのワインで、2004年のと2006年のミレジムのを頂きましたが、’04年のは本当に『華』の様な香り(スミレみたいなフローラル系)と共に口に含んだときの酸と甘味のバランスと程良い余韻のボディー感が良かったです。’06年のはそれから比べるとまだまだという感じですが、瓶詰め仕立てなのでこれからの熟成を待ってから改めて評価したいと思います。
ちなみに先述の「40年の樹齢のマスカット・ベリーAの樹」、これは棚仕立てですが、樹に負担をかけないよう収量を制限した上に丁寧に面倒を見ているだけあって樹の幹が綺麗な縦縞でしかも密度のある樹体になっている健全な状態だと素人目にも一目瞭然でした。
また、甲州から造られている『康(かん)』、こちらはシュール・リー期間が三ヶ月の辛口ワインですが、シュール・リーで厚みを持たせるよりも味の幅を拡げるといった仕上げ方で醸造しており、そのお陰でスッキリした味わいでアッサリ目の和食との相性に優れたワインです。
醸造設備も見せて頂きましたが、綺麗に掃除が行き届いている上に整然と配列されたタンクが並んでいる中に目を引く存在が。実は圧搾機は古典的な菱山さんと同様のバスケット式なのです!また打栓も一本ずつのオーソドックスのなもの。まさに、栽培から醸造まで手間暇かけて造られた手造り感一杯のワインなのです。
大阪の新星というべきヒメヒコさん、一銘柄当たり多くても千本単位という規模は小さいものです。が、その奥に秘めたる情熱は他に無い『熱い』モノという他ありません。これからの健闘を期待するのみならず大阪のワイン文化の底上げの一翼を担う存在として他のワイナリーと共に頑張って欲しいと願ってます!
醸造・栽培担当の照屋氏には本当にお世話になりました。改めてこの場を借りて厚く御礼申し上げます。)