小布施へ行ってきました!

もう半分衝動で、約1週間前にオブセワイナリーの曽我彰彦氏による「メーカーズガイド」、1年ぶりに申し込みました。そうしたら、トントン拍子に話が進み、宿の方もYH好きならご存知の素敵なおぶせの風YHも予約出来てラッキー! 年度末ですが、ヤマも越えたことだしと思っていたトコロにDMが届き、お便りを拝見して行かなきゃという気持ちから急遽決めたのです。
いきなりですが、今回は好奇心の赴くままに昔のワイナリー初訪問のドキドキ感を思い出す、原点に帰った楽しい訪問でした!
当日は、出来るだけゆとりを持って臨みたかったので、朝早めに出発。11時には小布施に到着し、前回と同様穴観音の湯に車を置いてチャリンコで街へとくり出しまずは竹風堂本店近くのお蕎麦屋さん「朝日屋」で腹ごしらえ。大盛りのざるを頼みました。ココは志賀高原でのスキーの帰りにちょくちょく寄っていたのですが、もうあふれんばかりの盛り。(笑) 少し落ち着いてから店を出てワイナリーへ向かいました。
もう二度目なので、道は憶えてます。目的の時間ちょっと前に着くと、彰彦様とバッタリ。第一声が、「自転車で神奈川から来たんですか?」と半分冗談の言葉に苦笑。で、まずは売店へ向かうと、今日ガイドを聴きに訪れたもう一方とご対面。
「あれー!!!」
なんと、その場にいたのは先日のワインフェスで知人を通じ紹介された長野県在住のH氏が! 別に示し合わせていた訳でもないのに、あまりにも偶然だったのでお互いビックリしました。(笑) と、いうことで今回は彰彦様、H氏、ボクの3名でこじんまりと。なにやら、今日は「ひょっとしたら!?」の予感が、、、。
まずは売店上の中2階で、4種のシャルドネテイスティング。彰彦様から忌憚ない意見を聴かせて頂きたいという意向から、イーブンな条件で比較するために樽から一旦大振りのグラスに移し、それをめいめいのグラスに取ることに。で、小生の感想は下記の通り。
(1) 少ーし硫黄っぽい感じ(いわゆる「還元香」デス。)にパンを焦がしたような香りがほんのりと。果実香は少しあるかな。味のバランス(酸味・甘味)が取れている辛口で、心地よい余韻がずっと続き旨みタップリ。旨い!
(2) まずは果実香がガーッと湧き立つ。それがまず印象に残る。だけれども、なんか「鉄板」。(味が平面的で何だか素っ気無い。) うーん、、、。
(3) ほどほどの果実香。酸味良し、甘味もよし。果実味が出ているのはコレ。バランスが取れていて、まぁ万人受けしそう。これなら、飲み慣れてない人もオッケーですね。でも、個人的には優等生過ぎて、、、と感じました。
(4) 果実香は(2)と(3)の中間という感じ。なんか酸味のトゥが立っていてそれが突出している感じで、「キューッ」と来るようです。まぁ、酸味がアクセントになっているのでそういう意味ではキャラがはっきりしていると感じ、この方がイイかな?
同じシャルドネでも、違いがあって。また、H氏や彰彦様ともコメントは様々で好みも当然それぞれ。でも、3人言ってるコトは違うけれど、概ね方向性は似てます。H氏とボク二人共(1)がイチ押しでした。で、答は彰彦様は勿論知っているのですが、一通り頂いた物のボクなりの感想を記してから、種明かしをします。しばらくお付き合いの程を。(笑)
それから、次は地下のセラーへ移動し、別のシャルドネを樽から頂きましたが、(1)があまりにも良かったのですが、、、。
(5) (1)と比べると強めですが「還元香」します。でも、「自然派原理主義(苦笑)」の人がやたらと好むようなプンプンしたものではありません。ちなみにボクは原理主義派でも無いしかといって「還元香」はあっても特別気にしない。果実香は程良い感じ。味は、まるでブドウを丸ごとかじったかの様なので野性味あるけど、さらに心地よい余韻が印象的です!
それから、しばし説明の後、1階のセラーへ。ここからは赤ワインです。
(6) とっても綺麗なルビー色。チェリーの香りがちょうど良い感じに香り立ちます。口に含むと清楚なお嬢さんという感じの程良い酸味と渋味が。これだけなら、「ああいいワインだなぁ〜」で終りですが、その後ブドウの滋味に続きじわじわとダシの旨味が。(5)と同様複雑味があり、しかもミネラリー。決して濃い味ではありませんが、じっくり味わって飲みたい赤です。
(7) 透明なガーネットで今度はブラックベリー様の香り。すこーし青臭さと還元的なトコロもありますが気になりません。(ボクなら全然気にしない) で、酸味はまだ立っておりこちらはジャジャ馬な女の子といった趣。でも、渋味は大分あっても円やか。こちらも余韻と旨みタップリで、さらに寝かせておくとエエ感じに絶対なるなと思いました。
(8) これが見た目でいかにも濃い味と分かる濃厚ガーネット色。口に含むと凄ーくパワフル。いわゆる「帰ってきたオーソドックスな小布施の味」です。渋味もタップリあります。でも、かつてのパワフル一辺倒ではなく内に秘めたるベリー系の味と香りがそこはかとなくします。(5)〜(7)はワインだけでもじっくり行けますが、これは食事(肉系)とかと合わせて飲みたくなるそそられるワイン。
で、再び地下セラーへ移動して、赤残り3種を。
(9) ムッチャ濃い果実味。(7)をもっとパワーアップした感じでとにかく「クラシカル」なスタイルです。これだと、二杯目以降は「もう負けました」と圧倒さの前にクラクラ。これはジビエや強烈ウォッシュ系チーズでないと太刀打ち出来ませーん!
(10) 香りからしてなんか樽々してます。小生の好みでは無いッス。味も予想通り樽が勝ってます。昔の新世界系ワインほどではありませんが、ボクは樽系は正直ダメですね。
(11) (10)と似ていますが、こちらの方が果実味が出ています。タンニン穏やかでこちらの方が断然好み。濃さも(10)と同じで(8)(9)より相対的に大分薄いですが絶対的には普通の感じです。けれん味の無い素直な口当たりでいて味わい深いので、スイスイ行けますね。それでいて飽きがこない!
さて、では種明かしをしましょう。
(1) 今までオブセさんで取ってきたリュット・レゾネのシャルドネ。2006ミレジムで、ドメーヌ・ソガシリーズの上のクラス向けに用いる予定。2005物では発酵前の澱下げ(デブルバージュ)をしないとか、発酵後の樽熟成において澱攪拌(バトナージュ)を控えるといった自然な醸造形態をとってましたが、2006物では多少手を入れてます。
(2)〜(4) ミレジムは(1)と同じ。 但し、収穫時期を変えたり((1)も含め、一ヶ月ぐらいの幅で変えてます)とか、ノンボルドーもあります。(1)と比べると洗練された現代風の醸造で発酵後の樽熟で澱引きをし(だから澱由来のパン香がしないのです)、ドメーヌ・ソガシリーズの下のクラスとして一般向け用で検討中のものです。
(5) 2006ミレジムで、栽培はビオロジー(低濃度ボルドーのみ)のシャルドネ醸造は自然酵母で低亜硫酸。
(6) 2006ミレジムで、栽培はビオロジー(低濃度ボルドーのみ)のピノ・ノワール醸造自然培養酵母で低亜硫酸。(ワイナリーサイト内「小布施のビオロジックワイン一年目とは」で確認しました。訂正しておきました。申し訳ありません。)
(7) 2006ミレジムで、栽培はビオロジー(低濃度ボルドーのみ)のカベルネ・ソーヴィニョン。醸造は自然酵母で低亜硫酸。
(8) 2006ミレジムで、栽培はビオロジー(低濃度ボルドーのみ)のメルロ。醸造は自然酵母で低亜硫酸。
(9) 2004ミレジムで、30ヶ月ボルドー樽貯蔵のメルロ。醸造は培養酵母
(10) 2005ミレジム(雹害の年)で、10数ヶ月ブルゴーニュセガン・モロー)樽貯蔵のメルロ。醸造は培養酵母
(11) 2005ミレジム(雹害の年)で、10数ヶ月ブルゴーニュ(フランソワ=フレール)樽貯蔵のメルロ。醸造は培養酵母
いやー、面白かったです。ちょっと、栽培・醸造技術面の専門的な話題に振れてしまいましたが、読んでいかがでしたか?
さて、本筋はココからで種明かしに対するボクの感想ですが、まずお天道さんの気まぐれがブドウにホント反映されるのだという事を痛感。樽香の強いボルドー樽でも果実の圧倒的パワー溢れる2004。そして、円やかなブルゴーニュ樽とはいえ強めのモローの方が樽香が出る2005。
良年であった2004ミレジムと雹害によるダメージをうけた2005ミレジムで、ブドウの持つポテンシャルの違いがこれほどまでに出ているのだと思うと改めて自然の力への畏怖を感じるのです。
それと、ビオロジーと自然酵母醸造の(5)〜(8)は、久々にブドウの元来の滋味を噛みしめつつ醸造で引き出される旨みをじっくりと味わいながら飲みたくなるウキウキ感溢れるワインだと率直に思いました。取っている手法は「何も足さない何も引かない」最小限の手の入れ方ですが、試行錯誤の上人智と自然の力の調和により産み出された「手塩にかけたもの」(2007年3月3日日記参照)だと思うと尚更です。人智は科学の進歩を促しました。しかし、時には技術の駆使のみで造り出した「テクニカルワイン」といった色物となってその過程で沢山の大切なものを失ってきました。その反動がカウンターカルチャーとしての「自然派ワイン」というものになって現れたのです。でも、その両方共「本当に美味しい」といった素朴な視点が欠けているのでは?と小生は声を大にして叫びたいのが心情です。でも、この旅で「北風と太陽」の物語ではありませんが心のつかえがとれ、平静な心を取り戻したなぁと思いました。
ボクの想いはさて置き、彰彦さん曰く「まだまだ完成形ではありません」が、始めたばかりの試みをこれからもじっくりと暖かく見守って行きたいと共にこれからの飛躍を祈願してます。(ホント、楽しみ〜♪)
翌日、「太陽のワイン」が待っている平塚へ朝早く一路ひた走るのでした。
(オブセワイナリーのスタッフの皆様、そして曽我彰彦様。貴重な体験ならびに色々なお話しを聴かせて頂き有り難うございました。本当に御礼申し上げます。)