『端正なワイン』に込められた父子の夢〜イケダワイナリーの池田秀俊氏との語らいの夜

何故かぶる魂さんこと西片裕次氏の日本ワインの会の日は雨雲を吹っ飛ばしてしまいます。(笑)この日は雨降るかもしれない予報だったのに、結局広沢寺では雨どころか夕方に青空が見える程でした。小生は今回、上記の理由で二部からの参戦となりましたが、最寄の本厚木駅に着いたのが17時45分。平塚のハッピーキュージーヌ・ブラッスリーH×Mさんまでは小一時間かかりました。(相模線の車中が長〜く感じたのは言うまでも有りません・苦笑)筋肉痛の足を無理やりなだめ、ヒイコラ言いながら遅れて会に参上しました。(ホッ・遅れてスミマセン。陳謝)オーナーの相山洋明氏始め菊池シェフやスタッフの皆様の暖かい出迎えと西方氏の手荒い歓迎(笑)を受け、早速着席。
今回は、二部にてイケダさんのワインがフルラインナップで登場。しかも赤白の旗艦銘柄(後述)はなんと垂直試飲までアリの大サービス。秀俊氏直々出張の上にお宝物も頂けるという厚いおもてなしの精神は今までの訪問(2006年4月25日記事2007年3月17日記事参照)と同様どころかそれ以上でした。とっても楽しかったです〜♪
では、菊地シェフが多忙な中練りに練った渾身の力作と共に味わったイケダ父子のワインと共に語り合った夜を振り返りたいと思います。(メニューを書くよりもこちらよりリンク張らして貰います・笑)
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○『樽熟甲州(2005)』
イケダワイナリーのスタンダード白ワインで、名前の通り古樽で熟成しております。(発酵はステンレスタンクで)かつての訪問時に書いたように、樽の風味を感じさせない秀逸なバランスがイケダさんの売りですが、まずはこの1本でその良さを存分に味わえます。どっちかと言うとアンチ樽派(特に甲州ワインでは)の小生にとっては、樽っぽくないスッキリ辛口の樽物なんでとても好みです。秀俊氏によると、甲州は繊細かつ秀逸なバランスによって風味が演出されるのでその手法の選択肢として樽を取ったとのこと。決して目的ではなく手段としての樽であり、結果狙いとおりの演出を為し得たのです。
○『セレクト・白(2005、垂直で'04と'02ミレジムも)』
「選ばれた菱山の甲州ブドウ」により造られた新樽発酵&熟成のその名に恥じない逸品。小生が最も好きなイケダさんのワインです。
イケダ父子が好きなのが菱山産の甲州種。かの『無印豊満甲州』、菱山中央醸造さんのコンサルタントも引き受けていることからも伺え、鳥居平産より好みだそうです。その良さを充分に引き出すために樽発酵&熟成を行ったもので、樽発酵によりエレガントさが増しています。絶妙な酸味がGoo!でふくよかで優しい風味です。
甲州における繊細かつ秀逸なバランスによる風味の演出」はアフターの苦みを含めたトータルな物から成り立っており、秀俊氏曰く「どれか一つでも欠けたり・突出したりするのは好ましくない。」とのことで、その点をよーく見極めた上でのワイン造りを心掛けているそうです!
垂直試飲では、年代を経るごとに風格が加わり、甲州種のワインが実はちゃんと造ればタレ無い事が実感できました。素晴らしい!!
因みに『甲州樽発酵・Grande Cuvée』というスペシャル・ヴァージョンもシークレットアイテムとしてありますが、こちらも菱山の選りすぐりのブドウにより造られたセレクト(白)の兄弟分で、力強い香りと風味が存分に楽しめます。甲府にお出かけの際、南口近傍の某酒屋さんで探して見てください。(あればラッキー!→即購入・笑)
○『遅摘み甲州(2005、お宝で'98ミレジムも)』
晩熟の甲州を更に収穫を遅らせ、甘味を増したものを用い、絶妙の控えめな甘口に仕立てたワイン。「食中酒としても飲めますよ。」(秀俊氏)のコメント通り、食事の邪魔をせず、しかも酸味やボディー感も程よく備えているので甘口好みの人は勿論のことワイン通にも親しめる懐の深い銘柄です。遅摘みのブドウが有する摘みたて時の薫りを生かすため、『樽熟甲州』とは逆に、樽発酵・ステンレスタンク熟成でこしらえてます。
で、お宝アイテムで出て来た1998年物ですが、なんとバックオーダーとして還ってきたものを「あまり考慮せずに保管していた」(秀俊氏・笑)ものですが、状態はとっても良かったです。古酒として蜂蜜状の薫りと風味が加わり、とっても上品なデザートワインとして楽しめました。
これら白三銘柄は全て甲州種ですが、秀俊氏は今後も甲州種に特化していきたいとの抱負を語ってました。甲州贔屓の小生にとっては嬉しいコメントです! これからも楽しみ〜♪
○『ヴァン・ルージュ(2005)』
カベルネ・ソーヴィニョンとマスカット・ベーリーAをアッサンブラージュしたイケダさんのスタンダード赤ワイン。とても美しいルビー色の赤ワインでカベルネの持つ渋さとベーリーAの果実味が程よく溶け合っており、程よい厚みと飲みやすさを両立させてます。イケダさんが樽の使いこなしだけでは無くアッサンブラージュの技術も確かなものであることが、これを飲んでよく分かります。
実際、H×Mさんでも人気アイテムでよくご指名されるお客様が多いそうです。定番ワインとして売れ筋であることが頷けますな。
(スミマセン、にしかた先生。『ヴァン・ルージュ』登場していませんでした。お詫び申し上げます。ご指摘有り難うございました。)
○『マスカット・ベーリーA(2006)』
とても美しいルビー色の赤ワインで、ベリーAの果実味が程よく出ていながらも、甘いキャンディー香に支配されること無く、ワインとしての厚みと飲みやすさを両立させてます。
最近はココさんの『第一楽章』始め、タケダさんの『マスカットベリーA・古木』、シャトー酒折さんの『マスカット・ベリーA樽熟成 キュベ・イケガワ』など生食用ベリーAっぽく無いワインらしさが前面に押し出た銘柄が続々出ています。イケダさんのこのワインもこれらの例に漏れずしっかりした物でありながら飲みやすさを兼ね備えた逸品です。善兵衛さん、日本人の口に合ういいワインブドウを創出して下さりました。ホント有り難うございます!
○『セレクト・赤(2005)』
かの藤島大氏が、『Sports Yeah!』(No.139、2006年3月発行。124ページの『至高の晩餐』に掲載。)にて賞賛されたスペシャル銘柄の赤。こちらは、カベルネ・ソーヴィニョンとメルロをアッサンブラージュした物で、白と同様「選ばれし葡萄でのワイン」だけあってとても美味しく、重厚さもちゃんと持ってます。「いい選手」ですよ。ホンマに。
ワイナリーでの自社畑を持たないながらもこれだけの美味しいワインを造られるのですから、契約農家さんとのお付き合いを大切になさっていることが伺えます。まさに「身の丈経営」でブドウ造りを全て農家さんの腕に委ね信頼関係を築いてきた結果がこうして美味しいワインになるのですから、とっても嬉しいのではないのでしょうか。
「小さくとも素敵なワイナリー」、まさにイケダさんにあてはまるこのフレーズ、素敵なフットボールクラブにブラッスリーにワイン、三つ揃えば無敵です♪
○『メルロ・Grande Cuvée(2005、垂直で'04と'03ミレジムも)』
その名に恥じないイケダワイナリー珠玉の旗艦的存在赤ワインで、2004年物は国産ワインコンクール(2005)で金賞を受賞しております。『セレクト・赤』と同じ物のメルロを使用してますが、より重厚さを感じさせ、風格タップリでいてエレガントで端整。赤白全ての銘柄問わずこの「エレガントで端整」さが貫かれていることから、自らのワイン造りに対するコンセプトが確立しており筋の通った姿勢であることがよく分かります。長野で造る長野産のメルロのワインはどっしりした口当たりの仕立てが多いですが、こちらは『超もとい蝶メルロ』と似たビビッドさとスムースさが上記のコンセプトを演出してると見受けました。
秀俊氏は大学卒業後、カリフォルニアのリッジ・ヴィンヤーズ(←ジンファンデルで有名な由緒あるワイナリー。最近『カベルネ・ソーヴィニョン モンベロ(1971)』がボルドー対ナパ・ヴァレーの再対決でボルドーに返り討ちを浴びせた。笑)とオーストラリアのハンター・バレーという対極の位置(ご本人曰く、前者がナチュラルな志向で、後者がテクニカル系だそうです。)にあるワイナリーでそれぞれ修行された体験を積んでます。そのおかげで、客観的に広い視野でワイン造りを俯瞰出来る様になり、コンセプト確立に大きな影響を与えたのでは無いかと小生は考えております。
面白かったのは、垂直試飲にて、『セレクト・白』はミレジムを経る毎に風格が増してかつブドウの出来に左右され難い味わいである傾向に対し、『メルロ・Grande Cuvée』ではミレジムでのブドウの出来やワインの熟成具合が如実にワインの味わいに如実に反映されていると僕自身が感じたことです。(赤だから尚更か)
まだキャラの硬い2005年物。酸味が際立ち、華やかな風味の2004年物(大概この年のは何処も濃いワインになる傾向が強いですが、イケダさんの姿勢からか濃厚さに依存しすぎてない所がまた秀逸。)。熟成感たっぷりの2003年物。と色々楽しめることが出来たのです。
○『山ソーヴィニョン(2005、シークレット・アイテム)』
と言うか、サンプルで非売品のラベル無しの瓶でした。(笑)
この品種(出典:(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所)は、伊豆ワイナリー・シャトーT.Sさん訪問記事にも記したように、山ブドウに起因すると考えられる適度にワイルドな酸味がアクセントとなり、複雑な香りと深い味わいを有するカベルネの長所をそのままに異なった雰囲気をさりげに醸し出している所がポイントで、交配種の中でも比較的ワイン種らしさが保たれていると言えましょう。
とはいえ、なかなか他にこの種でワインを手がけるところが少ないと見ると、何か敬遠するもの(栽培上か醸造上の理由かは定かではありません、、、。)があるのでしょう。しかし、そこはイケダさん、ちゃんと「エレガントかつ端整」に仕上げてます。でも、遊び心も垣間見せてくれる「飲んでいてウキウキ」系だったので、とても楽しかった!
「『日本のジビエ』といえる鹿肉やしし鍋にピッタリ」とも書きましたが、今回供された鯨肉とのハーモニーは最高でしたね。また、セリのソースとも相乗効果も加わりまさにブラボー状態!(笑)本ワイン会一番の話題品でした。
○『巨峰(ロゼ・2006)』
甘口というカテゴリーになってますが、控えめなので中辛口と言っても差し支え無いでしょう。ロゼワインは中々需要が高まり難い存在で、日本のワインで本格派となると限られたものになってしまいます。(機山さんのが終売になったのは返す返すも残念、、、。)でも、数少ない食中酒としても通用する美味しい日本のロゼの一例としてリストアップして置きたいのは間違い無し!
生食用のブドウからでも、本格ワインとして世に出していることは特筆すべきです。
確かな技術だけでなく、その志の高さは本当に絶賛ものです。そして、お父様の俊和氏もそうですがご子息の秀俊氏もとても親切な方で、初訪問での秀俊氏の歓待ぶりや2回目の訪問時の俊和氏の応対には頭が下る他ありません。それと、親子共々立て板に水の如く、質問には丁寧にかつ淀みなく答えるのには驚かされます。この日のワイン会でも小生の質問に真摯に答えて下さった秀俊氏は、皆さんからも人気を集めてました。(引っ張りだこで、限られた時間の中テーブルに巡回されてるその姿に微笑ましいものを感じましたよ。)
まさに「父子鷹」の精神の下、静かに人気を浸透させる名ブティック・ワイナリー。これからも、美味しいワインを造り出して下さい!
(当日は、ご当主の池田秀俊氏始め、会を企画して下さった西方氏、ブラッスリーH×Mさんオーナーの相山氏を始めとする菊池シェフ他お店のスタッフの皆様にはいろいろとお世話になりました。改めてこの場を借りて御礼申し上げます。有り難うございました!)