今度は、甲州で考察(その2)

化学専攻(つい暫く前では仕事もドップリ化学の部署でした。イヒ!←旧いな。)だった小生はついつい頭の中に「亀の甲」が、、、(苦笑)
でも、深く考える上で役に立ちます。
<薫りや風土の違いによる滋味>
6月28日記事の続きです。地理を知る為にまずは此方を参照。
本家甲州市のGoogleマップ
有名な「鳥居平」地区は県道38号の「38」の数字のすぐ北側、「菱山」地区が勝沼ぶどう郷駅の近傍、「城の平」地区が勝沼ICのすぐ南側です。日川は東から国道20号沿い、大善寺(あの有名なお寺です!)、祝小の「祝」の字のすぐ北側を西に向かって流れます。
柏原と羽曳野付近のGoogleマップ
甲州種が栽培されているのは、高尾山麓から「柏原市の柏」の左横の付近です。ちなみに大和川はJR関西線(柏原⇔高井田⇔河内堅上)沿いに東から西へ流れてます。
(注:おっくー所感=盆地と平野の違いはありますが偶然にしては似ています。^^;) )
地勢的に見ると、、、。
勝沼町Webページにあります「勝沼町のすがた」(1)を参照して下さい。所謂堆積岩主体の地質ですが、細かく見ると鳥居平は粘土質主体になります。一方、柏原や羽曳野では大阪市立中央図書館にて著作権法の範囲で複写した小寺正史氏の論文(2)によりますと、

です。
ここからまた小生の所感に基づく仮説ですが、この地質の違いが大きく薫りの違いに寄与していると考えています。
甲州種ワインを頂きた時に感じる醸造由来に限らず葡萄元来が持つ薫りの傾向としては

  • 山梨(勝沼)=フローラル系(百合、スズラン等の白い花系)
  • 大阪(柏原)=柑橘系(伊予柑、八朔、夏蜜柑の中晩柑系)

いずれも、所謂最近流行の「きいろ香系」(3-メルカプトヘキサノール・3-MHに起因)といったメルカプト基(−SH基)含有アルコール・エステル・ケトン・アルデヒド類だけでなく、モノテルペン系のも関与しているかもしれません。
もし、同じ柑橘系でも3-MHだとしたら、ボルドー液使用している柏原産(産地にて確認済み。大阪近郊の湿度を考えるとボルドー液不使用では厳しいです。メルカプト基とアルコール性水酸基を持っている3-MHではキレート性が強く、重金属と配位結合してしまいます。)では出てこない筈です。
大阪産は2005/2006問わず、南国系の晩柑に近い薫りが出ていると小生は過去記事で言及していますが、もしかしたら、富永先生が著書で言及している3-MH系の薫りだけではなく其の様な所に起因するかも知れません。
(ガスクロとか液クロで果汁を分析してみたくなります。苦笑)
●関連資料
Wikipedia - テルペノイド
構造式は、上段がフローラル系のモノテルペン、中段が柑橘系のモノテルペン。
薫りの構造式
(1)小仏層に関しては此方神奈川県立生命の星・地球博物館Webサイト)
(2)『大阪府におけるブドウ栽培の歴史的変遷に関する研究(小寺正史:著、大阪府立大学生命環境科学研究科博士学位論文、1986)』
書籍としては
NHK出版『知るを楽しむ・なんでも好奇心2005年 8・9月号 - ワイナリーへいらっしゃい』(小生所蔵)
料理王国社『ワイン王国 2005年春号』(小生所蔵)
ワイン王国 2005年春号甲州種特集が組まれてます。試飲では山形から鳥取までの甲州種ワインが出ています。この2冊は甲州種を語る上で必携の書籍です。おすすめです!
(追記)
ワイン王国社のサイトからでも購入出来ます。(定価で! 但し在庫僅少)