【小連載】本当に「日本のワイン」が認知されるためには、、、?(その1)

最近、日本ワインが注目されるようになっていても、それは本当にマスコミの情報だけでは推し量れないものがあります。単にブームに乗っかるだけや、消費量を増やせばイイ、というものでは無い!と、小生は考えております。そんな訳で、今日から(不定期になりますが)色々なモノの見方から、「真に『日本のワイン』が浸透していくには?」と言うテーマでぼちぼち考えていきたいと思います。(竜頭蛇尾にならへんかったらええんやけど、、、。苦笑)
まず、今日は『ブドウの生産量から世界と比較する』というお題で、原料の生産に関して見て行きたいと思います。
葡萄・ワイン国際機構(OIV)のWebページでは、ブドウ並びにワインに関する統計データーが掲載されています。
速報値では2006年の物が出ていますが、詳細データーは2004年のが最新ですので、此方で見て行きます。(英文ページ Statistics>Statistical Situation の項での、“Situation and statistics of the world vitiviniculture sector”のPDFファイル(2004年版)を参照。)
まず、“Surface area ofworldvineyards”を見ますと、ブドウの栽培面積(27,28ページ)は

  • 日本=20[単位:1000ha]
  • スペイン=1,200(29ページより、耕作中でワイン用に用いられている分は=1,117。)
  • フランス=889(29ページより、耕作中でワイン用に用いられている分は=844。)
  • イタリア=849(29ページより、耕作中でワイン用に用いられている分は=739。)
  • アメリカ=398(29ページより、耕作中でワイン用+食用に用いられている分は=284。)

これから分かるように、まずワイン用のブドウでどれだけの面積が占めているか分からない日本と並列に比較するのはナンセンスですが、それでも上位4カ国との差は圧倒的です。これは、生産量(30,31ページ)でも同じです。

  • 日本=2,058[単位:1000qx(qx=quintals=100kg)]
  • イタリア=87,092(32,33ページより、ワイン用に用いられている分は=72.735。)
  • フランス=77,142(32,33ページより、ワイン用に用いられている分は=74,935。)
  • スペイン=73,173(32,33ページより、ワイン用に用いられている分は=69,864。)
  • アメリカ=61,246

(ここで注目して欲しいのは、日本は栽培面積で1位の約1/60なのに対し、生産量では約1/44だと言う事です。これを、単純に見ると量的な面では生産性が高いことになります。質の問題は、、、何とも言いようがなく、分かりません。)
では、ワインの生産量(34,35ページ)ではどうか?

  • 日本=862[単位:1000hl]
  • フランス=57,386
  • イタリア=53,000
  • スペイン=42,988
  • アメリカ=20,109

となり、そのワインを輸入する国は何処が多いかと言えば(36,37ページ)、

  • 日本=1,665(91-95年は812)[単位:1000hl]
  • ドイツ=13,043(91-95年は9,776)
  • イギリス=11,945(91-95年は6,735)
  • アメリカ=6,415(91-95年は2,509)
  • フランス=5,514(91-95年は5,679)
  • (おまけ)ロシア=5,051(91-95年は3,191)
  • (おまけ)中国=563(91-95年はたったの3!)

となり、フランス以外での需要が高まっているのが一目瞭然です。世界の生産量の総和が1991-95年は263,092[単位:1000hl]で2004年は298,170[単位:1000hl]、消費量の総和が1991-95年は223,877[単位:1000hl]で2004年は236,961[単位:1000hl]と殆ど変わっていないことから、需要が逼迫して値段が上がるという経済原理ではごく当たり前の理由もありますが、為替や経済力の差がさらに日本国内での値段上昇へ繋がっていると言えるでしょう。ただ、17ページのグラフを見て頂くと分かるように、日常消費しているフランス・イタリア・スペインの単位体積当たりの価格[単位:euro/°hl]は1995年とさほど変わらない水準です。すなわち、このことは、単に「輸入ワインの値段が上がった」と言うよりも、
「高額なのと、安価なのとの二極分化がより激しくなっている。」
と言う方が正しいかもしれません。(そりゃそうです。高価なものの方が、目に付きますから。しかも、そういうものは生産量が希少なので、価格上昇が尋常ではありません! 本格焼酎の時と同じ現象が世界的に起こっている、と考えても差し支えないでしょう。
ちなみに上記輸入国一覧での一人当たりの年間消費量(42ページ)は、

  • 日本=2.0(97年は1.9)[単位:l]
  • ドイツ=23.7(97年は22.9)
  • イギリス=18.0(97年は14.0)
  • アメリカ=8.2(97年は7.5)
  • フランス=54.8(97年は60.6)
  • (おまけ)ロシア=7.1(97年は3.6)
  • (おまけ)中国=1.0(97年は0.7)

となり、先の一連のデーターとこの結果からもごくごく一部の層に消費が偏って拡大しているから余計にプレミアムなワインのお値段が、、、と、言う訳です。(汗)
さて、今日の結論は、

  1. 「日本のワイン(純粋に、原料から国内産のワインです。)は高い」と言いますが、多面的に見れば単純に『高い』とは言えません。
  2. ワイン用ブドウの生産量が圧倒的な所は調達が容易だから、安くなるのは当たり前。(但し、海外産の安いワインの質が良いかどうかは???ですよ。)
  3. しかし、需給のバランスが異様に偏っていることは事実。(だから、輸入物でごく一部が高騰し、それに引きずられて輸入ワインの値段が上がる。)

こんな所でしょうか。
次回は、ワイン法絡みで見ていこうかな?と考えています。
<続く>


(追記)
ワインに関しては、ここ最近世界各国のが輸入されるようになりました。開放が進めば国内産業が衰退すると言う人がいますが、逆に開放することで明確なスタンスを打ち出してより優れた製品を産み出し抗していけることを、池田信夫氏が3月11日付でエントリーされた記事で言及しております。(コメント欄も含め、「単なる会社の規模の大きさ」や「巨大資本」が最適解では無いことに注意。資本をどれだけ効率良く投下出来るかということです。)
このことからも、日本のワインにとって、選別が進む一方で良い刺激になっていることは確かです。ここからが正念場で、逆に「日本ワインの独自性」をきちんと醸し出した上で、「ワイナリー毎の個性」を明確に打ち出して行けば良いのは明白です。(一部記述を手直ししました。2008.3.14)


○関連記事
シャンパーニュ、拡大する生産地(2008年3月7日付「ワインニュース」)
フォレスター社ワイン総合情報サイト「WINE21」より)