日本ワインを語るにあたって

最近メディアが取り上げる機会が多くなった日本ワイン。実際にモノとして向上し品質も上がっているのは事実ですが、情報だけが先行しているのも無きにしもあらずといった感が。
そんな現状を踏まえた上で、日本ワインに「本気で」親しむ人々にお願いしたいことがあります。
徒然なるままに書いたところはありますが、今の所小生が想う事をしたためてみました。
(1)相手を慮って欲しい。
良心的な造り手さん、その想いを大切に伝えようとしている心ある酒販店・料飲店さんが草の根活動していますが、そういった所に買い物やイベント・ワイナリーのツアーで訪れた方々は最大限の配慮で持って相手に接して欲しいです。
変にオドオドしていると、親しむ意識から離れ固苦しい雰囲気になってしまいますが、かといって『何でもあり』ではありません。特に、小規模ワイナリーさんで見学可能なところの場合、少ない人員にも関わらず時間を割いて対応して下さっています。節度持って参加しましょう。
(2)メディアやネット情報だけではなく、「現地」のリアルさも体感しよう。
小生mixiにも入ってますが、そこの日本ワイン関連のコミュでは、現地に行ってないのに憶測や断片的な情報「だけ」で語る人を時々見かけます。あるいは飲み自慢だけに終始することもしばしば。
確かに貴重なワインを頂いて嬉しいし、その気持ちは分かりますけれど、単に掃いて捨てる・あるいは酔うために造ったのではない食を深く楽しむツールとしての側面も持ち合わせています。そして、深く楽しむのなら有用な知識を正しい情報源から仕入れてこそでしょう。
嗜好品なのでもちろん人の好き好きはありますが、単なる嗜好品に終わらないのがワインに限らずお酒の魅力だと思います。そういったことは、大量消費・享楽的な日本のブラックホール『東京』ではなんでも手に入る故にそこにいるだけで全てを知った気持ちになるのだと思います。もし深く親しみたいのなら、情報の「イイトコ取り」に終始するのでは無く現地に赴き(1)を考慮した上で手に入れることの有難みから理解し、そして農家さんや造り手の話に耳を傾ける行動力も(時にはね。最低その土地に1回でも。)必要です。
山梨ワイナリーマップ(『br』 オリジナルマップ)
←お薦めです。
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(3)難しい話も考えることも必要
これは、浮世離れした良い面や薀蓄しか見るのではなく「現実」を知る上で通らなくてはならない関門といえるでしょう。
想いやキャッチフレーズだけで心酔するのは、『とんだ贔屓の引き倒し』に陥る恐れ大。
例えば、「癒し」や「心地よい」というフレーズをよく日本ワイン関係で見かけますが、造り手さんが書くのと、単に飲んだだけの飲み手が書くのでは全然説得力が違います。「自然農法」(敢えて、区別して「自然農法」と書いています。)も単に粗野で野放図にしているのでは無く、合理化を行いながらもその分で出来た余裕を多くの労力とこまやかな目配せに向けることでしっかりした農作物を生産していけるのです。
有機農法」という言葉が独り歩きしていますが、実際は「なんちゃって有機農法」が多く、本当にしっかりした農作物を産み出しているのは極々限られた人たちです。(普通の「慣行農法」以上に論理と観察眼が要求されます。)
有機農法」の例を引き合いに出しましたが、言葉尻や固定観念に囚われること無く見極めが出来れば、値段の大小に関係なく本当にこのワインは価値があるのだと理解した上で買えるので、ますます有難みを知ってより美味しく頂けると思いますし、自身の目利きの向上にも繋がります。
(追記:2008.4.24)
ブドウは、果樹栽培でもっとも難易度が高い物なのです。従来のように、生食用の余りという延長線上では美味しいワインはもっての外。ワイン用はまた違った技量が必要ですが、基本は同じということを付け加えておきます。用途は違っても、大事に育てなくては美味しいものが出来ない。普段の食生活でついついその有難みを忘れがちな我々消費者も、そういう「現実」も知るに越したことはありません。
○関連記事
「食糧危機」の本当の原因(「池田信夫 blog」、2008年4月18日記事より)
【小連載】本当に「日本のワイン」が認知されるためには、、、?(小生2008年3月14日記事より)
(4)やはりプライベートでもいいから「書いて」欲しい
文章にしたためることで、自分の記憶を思い起こさせることが出来るし、どう書くか考えることで自然と対象物にも自分なりの考えを持つようになります。
書く事が目的ではないのでそこを間違えてはいけませんが、いつか自分の財産になって生かされると思いますよ。
○関連記事
「漫画について語るのは、漫画を読むより面白い」(「昨日の風はどんなのだっけ?」、2008年4月10日記事より)


実際、旅先やイベント等で「Blog見ました!」といってくださる方をボチボチ見かけるようになってまして、心ある読者の方から励ましの言葉を頂いております。本当にありがたい話で感謝しております。(チョンボもしでかしたこともありますよ。でも、フォローは欠かせません。やはり僕自身気を付ける事が必要で、責任重大だと改めて感じる次第であります。)
今回の文章は飲み手さんに向けて書いていますが、小生も含め、農家さん・造り手さん・売り手さん・飲み手さんの立場問わず日本ワインに関わる人々は、こういったことを忘れずに表層的にではなく真に愛して接して欲しいです。
そして、マスコミの皆さんは、特定の情報にフォーカスする・あるいは全体を俯瞰するにせよ、本当に「足」を使うことに労苦をいとわずやって欲しい。それが、仕事なのですから。