京丹波有数の中堅ワイナリー〜丹波ワイン訪問

山陰道(現在は国道9号線)の京都側入口の都市、亀岡からさかのぼり約30kmの所に京丹波町有数の工場群があります。松下電工の照明器具製造を主に手掛ける「クロイ電機」とそれに併設されたグループの工場、そして丹波ワインのワイン工場が建っています。ふと見回すと、周辺には垣根栽培のブドウ畑が点在しており、ここがワイナリーとようやく気付かされます。工場手前のワインハウスではワインやグッズが販売。また、レストランが訪問客をもてなしてくれます。
数々の日本のワイナリーを訪問してきた「み=ご」氏のサイトでも紹介(「〜食の名産地でワイン醸造〜」というサブタイトルにて。)されているように、地方の名士がワインに感銘を受け一念発起して設立したワイナリーで、現在では年間50万本(ワイナリー関係者談)の生産を誇ります。(ワイナリー歴史は、社のWebページ「丹波ワイン歴史」の項にも詳述。)また、関西のワイナリーと聴くと丹波さんの名を上げる人が多く、割合全国的にも有名な部類です。
地元の名企業が設立したワイナリーだけあって、見学コースや試飲コーナー、そして交通の便(土日は無料のシャトルバスも運行)等と至れり尽くせりですが、見学ツアーは一般客向きですのでワインに詳しい人には少々物足りないかもしれません。3haの自社畑では垣根栽培にて、白はシャルドネピノ・ブランとセミヨン、赤はカベルネ・ソーヴィニョンとメルロとピノ・ノワールとサンジョベーゼと植えていますが、試験中も含め40品種近くにも及びます。(ワイン用ブドウに詳しくないと知らない品種が結構あります。)マンズさんのレインカット方式も取り入れており、品種にも拠りますが、試行錯誤が続いているのか色々な仕立てが取り入れられています。おおよそ自社畑では20tの収穫で、旗艦物の「クロワッサード」シリーズ(自社畑100%使用。出荷量の2〜3%。)や主力の「鳥居野」シリーズ(一部買い付けブドウを使用。契約農家はごく少なく原料の多くを買い付けに頼っています。括弧内は複数のワイナリー社員さんからの証言によります。)
試飲では旗艦商品の「クロワッサード」シリーズはじめ無料にて担当スタッフが提供して下さります。頂いたワインについて下記に感想を。
丹波ピノ・ブラン(2007・緑ラベル、ワイナリー限定販売)
ステンレスタンクにて発酵した、爽やかな飲み口の軽快な辛口ワインです。ピノ・ブランのワインではオーソドックスな仕上がりでほのかな甘味の奥に爽快な洋梨の香りがします。
ちなみに、白ラベルの「クロワッサード」シリーズのピノ・ブランは樽発酵・樽貯蔵とよりボリュームを持たせた造りになっていますが、残念ながら完売です。
鳥居野・白(N.V.)
円やかな風味の白ワインで、セミヨンとリースリングアッサンブラージュです。バランスを取った風味で飲みやすさ重視のワインです。
○マスカット・ベリーA(2006・ワイナリー限定販売)
こちらはよく見かけるチャーミングな苺の香りと優しい味わいのミディアムボディーのベリーA赤ワイン。
赤ワインの入門者向きという位置付けです。
鳥居野・赤(N.V.)
カベルネ・ソーヴィニョンとメルロのフルボディーの赤ワインで、樽の香味がちょっと目立ちますが、そつなく仕上げています。
クロワッサード 丹波カベルネ・ソーヴィニョン&メルロ(2005)
流石に旗艦商品だけあって、「鳥居野・赤」より樽の香味とブドウの渋味、酸やコクが程良くもしっかりと感じられます。
ネックなのは高価な点と数量が限られていること。確かに出来は良いですが、価格対質の面では、山梨・長野や山形の優れたカベルネ&メルロのワイン(単独もしくはアッサンブラージュ物)の方がより優れていると感じました。
クロワッサード 丹波ピノ・ノワール(2002)
日本では少ないピノ・ノワールのワインですが、こちらはワイナリー現地のみの蔵出し分です。結構希少価値ですが、やや樽の風味が勝ちすぎて、しかも枯れ気味な時期にさしかかっているのか、ピノ・ノワールの繊細でチャーミングな感じが薄れているのが残念です。実際、優れたピノ・ノワールのワインは年を経て熟成しても繊細さが失われないので、造り(栽培・醸造共)に関してはまだまだ改良の余地ありです。


会社の規模がそこそこ大きいだけに、本格ワイナリーでもどちらかというと観光色がある方です。残念なのは、経営規模の割に、自社畑100%のワインが数量少なくしかも顧客である地元京都の料亭や旅館等に優先して出荷するため、一般にお目にかかることが少ないことです。大手の様なフルラインナップというのはよほどの資本力があれば出来ることで、実際海外の有力シャトーやドメーヌ、ワイナリーでは商品群を絞っています。(ボルドーならボルドーブレンドの赤、ブルゴーニュではピノ・ノワールの赤とシャルドネの白。イタリアのトスカーナではサンジョベーゼとスーパータスカン物。米国ではカベルネ、メルロ、ジンファンデル、シャルドネのヴァラエタルと種類も明確で特色ある構成です。)経営資源を集中し、自社畑率を向上させてワイナリーのコンセプトをはっきりさせ、ラインナップを絞れば更に優れたワインが輩出されることでしょう。
様々な特色あるワイナリーが日本各地に出現している中、今後どのような方向に進路を進めて行くか注視して行きたいと思います。