『自然派』・『亜硫酸無添加』といった枝葉末節より大事なこと

よく、『無添加ワイン』が持て囃されたりしていますが、そういったことより人様の口に安全に行き渡ることが何よりも重要です。(もっとも、「よいブドウ」であることが大前提ですが、、、。)
ワインの酸化防止について
(「ココ・ファームワイナリー:Webショッピング」のページより)
亜硫酸を少なくするのに超したことはないのは、言うまでもなく皆様ご承知の通りだと思います。ただ「安心」と「安全」を取り違えてはいけません。硫黄による薫煙*1は先人の立派な知恵なのです。技術の発達や、流通過程が整備されたことでワインが隅々まで行き渡るようになったのですが、亜硫酸を極端に少なくすると、運送・保管にはより一層のコストがかかることや、そういったこと故にセラーの無い一般家庭に受け入れられにくくなる面が生じることも事実です。*2 ちなみに、2007年3月3日の小生記事で触れたように、スーパーなどで販売されている大抵の「亜硫酸無添加」ワインは加熱による殺菌を施しています。(但し、加熱によりワインにとっては重要な存在たる香味成分が抜けます。)*3
また、発酵の過程で亜硫酸がワインに含まれる話ですが、何故かはブドウの果実にアミノ酸が自然に含まれているからです。(技術的な詳細は長くなるので敢えて触れません。)そのアミノ酸には硫黄を含有する化合物(例えば、システインメチオニン。リンク先は「Wikipedia」)も存在し、それが生命の設計図となるDNAや生体内の伝達物質となって構成され『無くてはならないもの』なのです。(酵母自身にも含まれます。当然、そこもSOの発生源です。高校で「化学」を学んだ人なら必ず知っているハズ。概要だけど中学生の教科書でも出てくる話ですよ。)
確かに、知らないことは罪ではありません。しかし、知らないのをいいことに糾弾したり、あるいは勘違いして「亜硫酸無添加」を盲目的に受け入れるのは本質からずれているような気がします。知識を理解した上で納得する。そして、購入する・しないは嗜好品なので、最後は飲み手本人次第だと思います。


本当に楽しみ・親しむためにも、知識を学び・理解することは決して損では無いと考えますが、皆さんはどう考えますか?
(日本のワイナリーで、このようにWebページで「ワインの酸化防止」をまともに取り上げたのは小生の記憶ではココ・ファームさんが始めてだと思います。[実際、PDFファイルで個々のワインのデーターシートも開示しています。]まだ色々な課題や不十分な所はあるにせよ、本当に「ちゃぶ台」にまでワインが浸透していくには、昨日の記事で触れたように「正しい『情報開示』、そして誠実な『コミュニケーション』」が今後ワイナリーに求められると同時に、5月5日の記事で記したように消費者もワインに限らずおセンチな雰囲気では無く真摯に向き合う時が来ているのは間違いありません。*4

*1:現在では、「ピロ亜硫酸カリウム」(リンク先は、国立医薬品食品衛生研究所の「ICSCホームページ」。旧名称である「メタ重亜硫酸カリウム」を略して『メタカリ・メタ重』と呼ばれることがあります。)という化合物の形で添加されますが、硫黄の薫煙や亜硫酸ガスのボンベよりも安全で手軽に扱えるようになりました。(但し、ワインの酸度が下がるので諸所の面で痛し痒しがある。)もっとも、手軽になった故に度を過ぎた使い方をした悪徳な造り手もいたのは事実で、そういった一部の人が弊害を引き起こしたために、亜硫酸は不憫にも『悪役』扱いされています。

*2:温度管理等細心の注意を払わないといけない代償が伴います。もちろん冷蔵庫に保管出来ますが、冷蔵庫はワインだけのために存在するものではないですから、、、。ワイン好きでない限り、家庭の台所預かる身にとってはワインだけ特別扱いはどうしても難しくなってしまいます。「あなた、ワインと家のことどっちが大事なの?」と目くじら立てられてもボクは知りません、、、。(苦笑)

*3:ワインは当然アルコールが含まれているので雑菌の繁殖は抑えられますが、亜硫酸を少なくすればするほど微生物環境は安定なものでは無くなります。したがって、再発酵やアルコールを餌に代謝する酢酸菌等の存在を無視できないといったリスクが生じます。スティルワインで熱処理を施さない真性の「亜硫酸無添加」はもの凄く扱いづらく、そういう訳でペティアンのような発泡性ワインで「真性亜硫酸無添加」を多く見かけるのです。それよりも、かの小生記事に書いたようにエタノール」がある意味最も危険でしょう。(苦笑・マジで心狂わせますからねぇ、、、。)

*4:そうでないと、「コミュニケーション」が成り立たない。 想定内は当たり前で想定外の時にどうするかはコミュニケーションにかかっているといえます。(参考:テストが甘いのよ 「谷誠之の 『カラスは白いかもしれない』 : ITmediaオルタナティブ・ブログ」より)