現状認識のギャップがまだ大きい

昨日の記事ではいろいろと書き、またコメントを頂きましたが、現状認識が日本の国内で大きくバラつきがある事を考えると、「実効的な提言」以前に「実効的な議論」が行えない状態でなおかつAll or Nothingの二元論(しかも、各論の細かい領域で部分最適だけな議論に陥りがち。)に拘泥する可能性が大きく、具体的に進める段階で頓挫するのが関の山でしょう。
その原因は、池田信夫氏Blogの2008年5月20日記事(「人材鎖国」)や楠正憲氏Blogの2008年5月10日記事(「SI業界もネット業界も世界に打って出られない理由」)で書かれているように政策の面で身動きが取れにくく、大きく構造が変えられることなく細かな改編のみ積み上げられ様々な事情が複雑に絡み合った世の中になっているからです。
現在の社会構造は戦後の段階で決められたもので、高度経済成長期のころにはフィットしていましたが、現状では大きく実情と乖離しているのは事実です。むしろ、一見伝統的な日本酒の酒蔵がとる「吉川町の村米制度」は実はモジュール型に拠る分業制であり(しかも、清酒蔵や焼酎蔵の杜氏流動性を持った季節労働者集団だったのです。*1 *2もっとも、武士は「〜食わねど高楊枝」で硬直化していましたが、、、。農工商と庶民はしたたかやったんです。)、その上で相互信頼に基づく緊密な連携を取ることで、需給は勿論のこと社会変化にも対応が容易に取れます。逆に、もたれ合いに依存しているゼネコン型の多重下請け構造は、一蓮托生型で大きい構造故に社会変化に対する身動きがとり難く、結果泥沼状態となっています。そして、この構造は池田氏が上記記事中にて

この閉鎖的な産業構造は、長期雇用や企業別組合など戦後にできた制度によってつくられたもの

と指摘されている様に、決して日本の伝統の中で時代の変遷と共に育まれたものでは無く、ある意味戦後50年強という日本の歴史の中ではごく短い特異点独特の現象で、なおかつあたかも日本伝統というようにすり替えられている事が問題なのです。
『古きに学び、新しい風を取り入れる』とよく言いますが、それは古今東西問わず何処でも根底に流れる大切な教訓*3であると小生は思います。

芋焼酎はこれで決まり(追記)
日本酒と本格焼酎は歴史的に接点があり、相補って来たことが双方の酒類に取って刺激となって発展を促してきました。かつての焼酎ブーム(悲しいかな、もう今ではそういう感じになっています。この書籍では、酒類の消費が全体的に伸び悩み奇しくも焼酎ブームが醒めた今の状況を予見するかの如く「お酒の消費のあり方」にも考察している。もっとも、「消費のあり方」はお酒に限らない永遠のテーマでもあります。)の最中に出版され、当時小生も正しい理解を深めるために購入した今回の参考文献は役に立つ良心的な芋焼酎の手引書です。

芋焼酎はこれで決まり』(洋泉社:刊)

*1:Webページ「きき酒師のホームページ:日本酒を嗜む」の『日本酒の専門知識 酒づくりの専門家・杜氏』の項参照。

*2:芋焼酎はこれで決まり』(洋泉社:刊、小生所蔵。)の p.100〜105「本格焼酎の企業・情報・環境(佐藤淳:文)」と、p.140「芋焼酎・知れば知るほど・9〜杜氏の系譜」を参照。

*3:『破壊の先に創造が生まれる』もそんな教訓を表す言葉の一つとかと。