埋もれさせて置くのが勿体無い日本ワイン!〜 日本のスパークリングワインのパイオニアがリリースした意欲作

ちょっと仕事が一段落したので、会社帰りに“充電”も兼ね「愛あるお店」に伺い先日の『掘り出し物』を頂くことにしました。
○『ドメイヌタケダ・ブリュット(1997)』
○『ドメイヌタケダ・アッサンブラージュ赤(2006)』
タケダワイナリー
写真右の前者は、日本を代表するスパークリング『キュベ・ヨシコ』とは敢えて異なるキャラクターで出された新商品(エチケットにMETHOD TRADITIONAL(メトード・トラディショナル)と銘打ってあるように、『キュベ・ヨシコ』と同様、れっきとした伝統的製法の瓶内二次発酵のスパークリングです。)、そして左の後者は以前紹介した通りワイナリーの中核商品です。(ワイナリー販売での価格は税込で、それぞれ\6,720-と\1,848-です。)
『キュベ・ヨシコ』と同じくシャルドネ100%のスパークリングですが、例えて言うなら『キュベ・ヨシコ』が矜持ある由緒高き老舗旅館の背筋通った女将とすれば、『ブリュット』は田舎の気の置けない肝っ玉母さんの様な趣。でもキャラクターが違えどもベースは一緒。即ち、岸平典子社長の緻密かつ真面目なワイン造りが忠実に反映されていることです。
詳しくはこちら(↓)をクリック!!
さてこのスパークリング、実は瓶内二次発酵が終わった後の澱との接触期間が7年間という長期熟成物。通常の『キュベ・ヨシコ(ワイナリー直販価格 \8,820-)』が3年に対しこちらは7年で、しかもお値段は安い! 更に、上級の『キュベ・ヨシコ 1992年良質年産RD(“Récemment Dégorge”の略で、「レスモン・デゴルジェ」と読みます。同\12,810-)』と比べると尚更だと思います。『1992年良質年産RD』が10年間の接触ですから、上級物でリリースしてもおかしくないのですが、イベント当日に岸平典子社長に質問したところ、曰く、「『キュベ・ヨシコ』で出すには自分としてブドウの質がちょっと納得いかないものだったので、それならばと思い切って冒険してみましたら、面白い物に仕上がったので敢えてリリースしてみました。」というエピソードとのこと。まさに「瓢箪から駒」的な物語から産まれてきた野心的な作品ですね。
シルキーかつ繊細で艶やかな『キュベ・ヨシコ』に対し、野性的で底力を感じさせ、熟成期間が長い故に某ビールのキャッチコピーよろしく「コクがあるのにキレがある」泡物です。ある意味180度対照的な趣きですが、緻密かつ真面目なワイン造りであることには変わりありません。故に泡立ちはきめ細やか。『サンスフル・赤(2007)』の様なケレン身の無い直球勝負な所(しかも今回のは剛球です!)に却って好感が持てます。一時期流行ったシャンパーニュのRM(レコルタン・マニピュラン)*1買うんだったら、出所がはっきりししかも造り込みがしっかりしたコチラを買う方が断然お買い得です。
で、一方の『アッサンブラージュ・赤(2006)』はかつて紹介した2005年物と異なり、カベルネ・ソーヴィニョン45%、マスカット・ベーリーA45%、ブラック・クイーン10%と異なる比で仕立てています。落ち着いて腰の据わったメルロ主体の2005年物と異なり、2006年物はチャーミングで華やかなカベルネの性格が前面に押し出されていて木イチゴのような薫りが漂います。ウォッシュチーズとドライフルーツ(マンゴーとレーズン)を一緒に頂く定番の併せ技との相性が特に良かったのが印象的。こちらも、キャラクターは前年と違えども良心的なお値段で生真面目な造りであることには変わりありません。
ブドウの出来に対し忠実にかつ機敏に硬軟使い分けながらも、根底に流れるポリシーは共通したものがあり筋が通っているタケダさんのワイン。改めて脱帽させられた夜の一時でした。

*1:かの有名なモエ・エ・シャンドンはじめシャンパーニュの有名処は「グラン・メゾン」と呼ばれる大手製造業者が農家さんからブドウを買い付ける形態を取っているのに対し、レコルタン・マニピュランはブドウ栽培から醸造まで一貫して手掛ける生産者による所謂「自家モノ」で、優秀な造り手さんのは大量生産のグラン・メゾンものより美味しい。しかし、生産者によって当たり外れが大きくなおかつ同じロットでも品質にムラがあるのも事実。インポーターさんでも見極めるのが難しく、一般消費者にとっては難解極まりない厄介な代物です。