半可通ではなく、正しく・噛み砕いて伝えることが出来るかが大切

人々は自分が手にするものに対し、そのときの身の丈にあった相応の価値を求めますが、必ずしも合理的な判断だけで全てが決まるわけではないという一つの例です。
脳が語る「不況だから値下げ」の誤り
ニューロマーケティング〜話題の新手法の実力【その2】

(「NBonline日経ビジネスオンライン」より)
ちなみに、原典の論文の方はこちら
Marketing actions can modulate neural representations of experienced
pleasantness

"Proceedings of the National Academy of Sciences", Feb.3,2009;106(5))
こういうのを報道すると、「新しいマーケティング手法だ!」だともてはやす一方で、「脳内解析で市場を語るのは言語道断」とか云う一方的な拒絶反応が出そうですが、冷静に考えるとこの実証が伝えたいのはそういうことでは決して無い筈です。(ちょっと、日経さんのタイトルがまずいんじゃないのかなぁ、、、。)
「口に取り付けたチューブを介してワインを試飲」ということで、普通に味わうときの官能的な薫りや味わいの要素が排除されているじゃないかという反論が出るとは思いますが、それはさて置き、実証実験でこのように検証するということはアプローチの一つとして有用ですし、実際人が盲目的に他人から伝えられた評価を鵜呑みにするという危険性があることの裏返しでもあります。

 今回の実験を行った研究者グループの一員であるスタンフォード大学経営大学院のババ・シブ教授は、「実験結果から、企業が学ぶべき点は2つある」と言う。
 1つは、売り上げを増やすためだけに、価格を引き下げてはいけないということだ。消費者は安売りされた商品を買った時には喜んだかもしれない。しかし、いざその商品を消費する時には、安い商品という意識が影響して、その商品にあまり喜びを感じない可能性があるからだ。
 2つ目は、たとえ価格を引き下げても、消費者にそのことだけを訴求してはならないということ。シブ氏はカリフォルニア州のワイン生産者を例に取り、彼らは、価格よりも、自分の作ったワインを専門家がどれだけ高く評価しているかの方に消費者の注意を向けようとしているという。

この様に、最後の方にて日経ビジネスオンラインさんの記事では書かれていますが、『専門家』というものが曲者で、バイアスがかかったものになって本当に正しい知識と評価をしているかということに行き着きます。また、生産する(サービスする)方も、単に『ゴージャス』にすれば良いと勘違いしてはイケマセン。
とにもかくにも、上記引用に書かれている価格云々の話も然りですが、突っ込んで見てみると、消費者と生産者の間に立つ料飲店さんや小売の方々が単に造り手の想いを一方的に伝える(あるいは単なるヨイショ)ではでなく、『皮膚感覚を理解して』造り手のさんの代弁者として正確な情報のもと懇切丁寧な接し方(そして楽しく対話も)で販売しているか、また、マスコミも正しい取り上げ方をしているかが問われて来るというのが(至極当たり前のことですが)素直な結論です。