丸藤葡萄酒工業・大村春夫氏のおもてなしに感謝!〜ウイークエンド蔵めぐり午前の部

やっぱり、名物オーナー氏のいるワイナリーは外せません。
昨日登場しましたルミエールさんも名門ですが、こちらも1890年創業の名門中の名門・丸藤葡萄酒工業さんです。
ただの名門ではなく、しっかりと地に足着いた歩みを続ける丸藤さん。ルミエールさんとはまた異なるアプローチで、山梨のワインを支え続け、またお客さんの信頼にも応え続けています。
「若い人にどんどん入って貰わないと!新しい事をして変えて行くことが必要。」とケレン味も無くスパッと仰っておられる社長の大村春夫氏は懐の深い人で、『ルバイヤート』の矜持を守り陣頭指揮を取りつつ次代の造り手へ熱い視線と優しい眼差しを持って分け隔てなく接し、日本のワインの良心と言える存在として同業他社の造り手さんから消費者まで様々な人々の信頼を得ています。
そんな大村氏の「蔵めぐり」に参加するのは2回目。(それ以外に時折買い物で何度か訪れていますが。)前回の時に記したようにお客さんを楽しませ・もてなすところは一級品で、時には軽妙なトークも交え(例えば、勢いが余って徒長している枝のことを「デブチンスキー」と例えたり、後述のテイスティングルームで他社さんの事を参加者がアルファベットのイニシャルを交えて話ししても一向に気になさらず逆に自分から他のワイナリーさんの話しをしたり(しかもちゃんと褒めるべき所を褒めている。)、それに加え「あ、うちはM藤だなぁ〜。借金多いからねぇ。そう云えばワイナリーの頭文字、“S”と“M”が多いな。」とかいうような意味のことを言うなど、、、。苦笑*1脱線しつつも丸藤さんの素敵なワインを美味しく堪能出来ます。そんな訳で、今回も昨日の午前午後含め4回(あと本日午後)とも定員一杯(13名)の満員御礼になってました。
ワイナリーの案内は前回の訪問でも記したように、例年通り、畑→醸造場→名物の貯蔵庫→デギュスタシオン(テイスティング)の順で行われるのですが、大村社長のお話のお陰で何度来ても飽きさせません。また、デギュスタシオンではちゃんとナチュラルチーズ(ブリー・ド・モーとコンテ12ヶ月熟成にミモレット)に地元の銘ブーランジェリー仏蘭西語で「ベーカリー=パン屋」の事)パンテーブルさん(こちらもよくお立ち寄りしてます。あの、新田商店さんの近所です。)のバゲットと大判振る舞いで出して下さります。とても有り難いです。
ワインも大判振る舞いで、

と、怒濤の9種を頂く事が出来ました。(*が現在発売中のワイン)
(詳しくは「続きを読む」↓をクリック。)

技術研鑽のために製造している瓶内二次発酵の山梨産のメルロを用いた発泡ワインで、部内でしか頂けない非売品を今回は最初に振る舞って下さりました。最初からこうもてなして下さると嬉しいの一言に尽きます。
 メルロのロゼの発泡ワインで8年間の熟成によるコクとかすかな渋味が溶け合っていて、泡と共に舞い上がってしまいそう(笑)になってしまいます。試験的に醸造したものとは云え、なんかお蔵入りにするのは勿体無いなぁと思いました。いつか、丸藤さんの「泡物」も市場に出して欲しいと感じました。

言わずと知れた、丸藤さんの代名詞とも云えるワイン。このワインが日本ワインを世に広めた功績となったのは異口同音に誰しもが認めると思います。
2006年産では残糖がちょっと残ったためちょっぴりモッタリしたとの評判が合ったそうなのですが(小生は甲州ではバランス上辛口に切りすぎるより、ほんの隠し味程度に残糖があった方が良いと云うのが考えです。そんな訳で私は2006年物はあれで良いと評価しています。)、その評判を踏まえ辛口に切るようにしたそうです。
その通り、辛口に切った効果は出ています。「ちょっと冷やしすぎて痩せたかんじかなぁ、、、。」と大村社長さんは仰っていましたが、時間を置いて飲んでみるとボディー感が出て来ます。そして、貯蔵中の2008年収穫の物はまだリリース前なので落ち着いてない事をさっ引いても2006年物と2007年物のそれぞれの美点を取った、ふくよかながらも程良い辛口になっており、今後2008年物の完成品がどのように仕上がって来るのか期待させられますね。やはり、甲州種のワインは繊細ながらもふくよかな膨らみがあるのが持ち味であると思います。

日本の銘ソーヴィニョン・ブランのワインとして、シャトレーゼ勝沼ワイナリーさん(奇しくも丸藤さんで修業した戸澤一幸氏が手掛けています。)と並ぶ逸品。以前も触れたようにソーヴィニョン・ブランのワインは日本では数少ないのですが、このワインとシャトレーゼ勝沼ワイナリーさんの二つが今日本では優れものだと小生は断言します。今回は最新のリリース品を蔵めぐりのお客さんに振る舞って下さりました。
薫りは以前の2006年物よりも大分沸き立っています。酸とコクのバランスが良く、特徴的なパッションフルーツや柑橘系の芳香と相まって品種の特徴が良く出てくるようになりました。前回の時は「まだまだ」という意味のことを社長さんが仰っていましたが、今回は納得の出来に大分近づいて来たそうですが、まだまだちゃんと造らないとアカンとも考えているようです。スッキリした辛口のが日本人は比較的好みなだけにソーヴィニョン・ブランの白はお薦めなのですが、近所のワイナリー同士で切磋琢磨してより美味しいのが出て来てくれることは有り難い話です。

日本のシャルドネワインは海外に追いつき追い越せという感じで樽のニュアンスをどう取り入れるか・果実の風味をどう生かすかが目下の課題であると思います。以前に「シャルドネ至上主義の光と影(その1)(その2)」と言う記事を2回記事書きましたが、この旧屋敷収穫のシャルドネは、樽が強すぎたり果実の風味が足りなかったりする様な時折見かける悪い見本の日本のシャルドネではありません。メルロの項で後述しますが、「小細工せず奇を衒って無い造り」と記してますようにしなやかで程良い果実の風味と樽のニュアンスを調和させている良質のワインです。今回は、瓶詰め前の樽貯蔵中のを頂きました。前者の二空き(二回使用したの意味。このワインで三回目の貯蔵になる。)の古樽では早めに収穫した酸の乗ったフレッシュなブドウを、後者の一空きの古樽では完熟のブドウを貯蔵してそれぞれをアッサンブラージュしてリリースされます。
ブドウを分けて収穫することでリスク分散も出来ますが、このように味の幅も持たせる事が出来、片方のブドウだけでは演出出来ない奥行きのある味をこのような工夫でより良いワインとしてリリースするように工夫されています。こうする事で、完熟だけでは補酸でpHを下げてバランスを整える・逆に早もぎでは補糖でアルコール分を稼ぐといった人為的な手段ではなく、可能な限りブドウ本来の味を生かしたワインとして出すことが出来ます。「小細工」や「奇を衒った」造りではなく丁寧にブドウを生かす造りなのが旧屋敷シャルドネの特徴なのです。

前日のルミエールさんのが果実の風味を生かしたフレッシュな味わいならば、こちらは程良くコシのある心地よい渋味が余韻となって出ているワインです。
最近のベーリーAの樽貯蔵に倣って「遅れてきた新人」ではありますが、丸藤さんが初めて手掛けたこのマスカット・ベーリーAの樽貯蔵は、出たての頃にも頂いたことがありかなり暴れている印象でしたがもう「蛹」の時期が終わり飲み頃に入って来ました。ここまで変わるとは驚きました。ちゃんとモノにしています。
丸藤さんらしい“一捻り”な所なのは、後述するプティ・ヴェルドーが5%アッサンブラージュされていること。このブドウが隠し味となってコアを形成してます。ぼやけた感じとならずしなやかさの中にも芯がある。そんな感じを醸し出しています。現在、大村社長さんの下で狩野高嘉氏と共に屋台骨を支えている安蔵正子さん(メルシャン勝沼ワイナリーの安蔵光弘氏の奥様)の力作です。

またまた社長さんからのサービスで思わぬ飲み比べが出来たのがこのメルロ。塩尻の契約農家さんの良質なメルロを丹念に熟成したもので、後者は現在ANAの航空機中でリザーブされています。(ファーストクラス)12ヶ月間の熟成と瓶詰め後の熟成とでこのように変わるのかというので参加された方はワインのちゃんとした経時変化を知る格好の教材となったようで皆さんとても喜んでおられました。
ルバイヤートさんの専用品種のワインはオーソドックスな中にもやたらと気取り過ぎた所が無いのが嬉しいです。日本の赤ワインは骨格がしっかりしていないというのがもっぱらの評判で実際その傾向は否めませんが、昔から日本のワイナリーで「丸藤さんの赤ワインは良く出来ている。」と評価されています。かような評価の様にしっかりとした骨格はもちろんですが、気取りすぎて四角四面になっておらずおいそれと飲むのに取っつき難いことはありません。それでいて、矜持があるのは社長さんの姿が投影されているかの如くです。(旧屋敷収穫のシャルドネもそうです。ある時丸藤さんを訪れて2004年収穫のシャルドネ *2が良かったので、「小細工せず奇を衒って無い造り」でしたと感想を伝えた所、小生が尋ねた通り大村社長さんが「ウン、うちは小細工してないからね。」とスパッと答えて下さったのが印象に残っています。)

今、勝沼で赤ワイン用専用品種として注目されているのがこのプティ・ヴェルドー。ボルドーではカベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、カベルネ・フランに次ぐ4番目扱いの「補助品種(主に色付け用)」なのですが、この地では色付きはもちろんの事、味の点でも単独でワインに出来る程優れた出来になります。丸藤さんは早くからこの事に目を付けていて(何と、1999年からこっそり試験的に出ている。)、2006年収穫から一般にも販売(2008年より)されるようになりました。以前の「蔵めぐり」の時にも記しているように濃色のガーネットとしっかりとした色彩もさることながら、スミレの様な気品のあるブーケが印象的です。先のメルロと比べ包み込むような懐の深いタンニンと相まって奥ゆかしさの中に品性の高さも兼ね備えています。
“本家”ではあくまで控え扱いですが、ここはフランスではありません。土地と品種のマッチングを考えて優れたワインとして出せることが肝心なのです。もちろん、日本において高貴品種での栽培を確立して行くことはグローバル化した存在となっている「ワイン」で存在を確たるものにする必要条件の一つなのですが、固定観念に捉われずに品種を選択してモノにすることも必要条件であるというのが筋の通った論理だと思います。*3


このように、多くのワインを囲んで見ず知らずの人々とあっという間に和やかに楽しむ事が出来たのはとても幸せです。本当に大村社長さん始め丸藤の皆様には感謝する他ありません。丸藤さんでの蔵めぐりの参加されたお客さんはいつも満足した笑顔で名残惜しそうに出ていかれます。これも、「大村マジック」もさることながらただならぬ名門だからこそ成せる業だといえるでしょう。
いつもよくお邪魔させて頂いてますが、改めてこの場を借りて御礼申し上げます。大村春夫様、本当に有り難うございました。手堅く・地道ながらも一歩一歩とこちらも変革を続ける丸藤葡萄酒工業さんの健闘をこれからも見守って行きたいと思います。

*1:剽軽な面ばかり書いていますが、ある催しで大村社長さんのみがブラインドのテイスティングである赤ワインを「ドルンフェルダー」と答えてただ一人正解だったのです。ソムリエさんも脱帽してました。(井筒さんのです。)

*2:リンク先の写真左のワイン。実家の両親が褒めていました。

*3:名の通っていない産地やワインが勃興している所では古今東西問わず品種に対する柔軟さが成功に繋がっている例を良く見かけます。身近なところでは、ここ日本でも北海道でミュラー・トゥルガウが良質のワインとなっていることが挙げられます。