「食」を通じて平塚のこれからを考える

午前の雨模様から次第に太陽が顔を覗かせる様になったこの日は、6月1日の記事で取り上げた
平塚商工会議所青年部 20周年記念イベント『平塚スタイル創造プロジェクト 公開ディスカッション』」
に行って参りました。私が大変お世話になっているブラッスリー・H×Mのオーナー・相山氏(当日はコメンテーターとして会を運営)から教えて頂き、内容が小生が関心を寄せている「食」に関わることですから尚更だと思い、一般参加もOKということなので聴きに行って参りました。概要はこちら(↓)
平塚商工会議所青年部 20周年記念イベント「平塚スタイル創造プロジェクト 公開ディスカッション」当日になりました。
(「Tip. Blog」より)
今回のイベントは、「食による地域ブランド創造」企画のいわば「公開コンペ」。
上記リンク先のBlogに掲載されているように
コーディネーター:(株)湘南ベルマーレ 代表取締役社長 真壁潔氏
コメンテーター;平塚商工会議所青年部 会長 高橋健二
        同理事 相山洋明氏
の3方が学生さん達のプレゼン内容を聴き、講評を行い、今後どうして行くのかというディスカッションというのが流れです。会場は、商工会議所関係者が多いのですが、最初は少なかった一般参加者も次第に席が埋め尽くされてきました。
さて、発表では、産能大の学生さんのグループと慶応SFCの学生さんのグループが独自にフィールドワークを行い、片や産能さん側が「ベルマーレ」というコアを生かしてスタジアムで皆さんが親しめる定番の「スティック」スタイルのメニューを提案すると云う「ハード」面からのアプローチ、片やSFCさんが「archi-commons」というコラボツールをWeb上で展開してまずは議論の場を設けてそこから平塚スタイルの食を提案して行くという提案と云う「ソフト」面からのアプローチというまさに好対照な内容。皆さん、興味深く拝聴しておられました。
その後、学生さんとコーディネイターの真壁氏とコメンテーターの高橋氏と相山氏との間で熱い議論が交わされ、盛りあがってきた所で持ち時間終了と銘一杯使った濃い内容となり、無事終了。2時間があっという間に感じました。
さて、この会の議論の内容は多岐にわたるので、全てを挙げるとBlogが埋め尽くされてしまいます。そこで、小生が気になった点を一つだけ挙げたい。それは、地域ブランドの全国的な認知に関することです。
壇上で、ベルマーレ社長の真壁氏は「Webだけでは無くマスコミに取り上げられないと、全国的に知られるような事はかなり難しい。」と云うニュアンスの発言をしておられた。確かに「湘南ベルマーレ」というサッカーチームを率いてマスコミを相手にしている氏としては見過ごせない問題で、ある意味日本の報道媒体の現状を踏まえた上での発言であろうと推察されます。
そのような前提で真壁氏は壇上の学生に既存のメディアと絡んで行くことに対して問い掛けを行ったところ、ある学生さんが

「人々の交流が活性化され賑わいを見せ始めると、周囲を巻き込み人が集まる。そんな賑わいの様子をWebを通じ積極的に発信して行くことで自然とメディアが注目し、取り上げられるようになると考えています。」

というような発言で回答していたのを聴き、なんかどっかで聴いたことある話やなぁ〜と頭の中でオーバーラップしました。それは、小生がよく参加している『ワインツーリズム山梨*1であったり、和歌山県北山村の特産品「じゃばら」に関するエピソード *2だったりします。
確かに、今は既存のマスメディアの影響力は大きいですが、実際は取材内容が浅く・内容の伴ってないものであったり(やらせが良く話題になってますねぇ、、、)、あるいは主導権を肝心の地元が取るのでは無くマスメディアやタイアップする広告代理店の存在にストローで吸い取られ、ある意味向こうの戦略にすり替えられる、といった事態が往々にしてよくあります。この件に関しては、枚挙にいとまが無いので例を上げるのは割愛しますが、下手に組むより向こうから「来させる」位の気概の方が、参加する側も「仕組まれた」ものでは無く自発的に盛り上がり、正の循環がもたらされると思います。
いみじくも、ディスカッションの締めの言葉で相山氏が

学生は4年単位で入れ替わり立ち替わりする訳ですが、有能な頭脳を持つ彼らが外に流出するのは勿体無い。我々経営者が、中小だけど魅力のあるものにして、新しい人を受け入れる余地を造らないと活性化が進まない。これが我々の今後の課題だと考えています。

という内容の発言は正鵠を得ていると小生は考えています。つまり、如何に地元の人々がどれだけ活動に関わり、地域を育てるという共通認識を育むかといった所にこれからの成否の鍵があるのでは無いかということです。
地域おこし・ならびにブランド創造は、それぞれの世帯の事情で全員が常に関わることが出来ないかもしれません。ましてやこれだけ人の出入りが激しい世の中になると昔からの定住者だけで完結してしまうことでは様にならない。常に関心を持って貰い・参加出来る場を提供する事が必要です。そして、「新しい血」を受け入れ新陳代謝を活発化させていかねばなりません。もちろん、前日の記事の見出しではありませんが、
「個人がしっかりしてこそ、きちんと個人に還元される社会になる。」
という前提が必要ですけれど、このような参加出来る場があることで、一人一人が考え自律した社会となるでしょう。(ニワトリが先か卵が先かということより、これからの成長よりも成熟して行く世の中をサヴァイブして行くには良くも悪くも「個人の自律」が求められている流れに傾きつつあります。もう後戻りは出来ないでしょう。)
同じ湘南でありながら、茅ケ崎や藤沢・鎌倉と違い地味なイメージに埋もれている平塚ですが、お洒落なイメージが先行しすぎた先の三者が独り歩きしたイメージに翻弄されてカオスに飲み込まれ・なんとなくコントロールし切れない負の側面を考えると、まだ平塚には異なる選択肢での発展が残されているのでは?というのが小生の考えです。(小生在住の小田原はまた別の問題が色々とあります、、、。まぁこれは、何処の地域も大なり小なりあることですが。)そういう意味で、今回の「食」というテーマは最も関心が引きやすく、皆さんが参加しやすいテーマであると思います。今後、学生と実務家に加え、市民の皆様とのコラボレーションがより深いものになり、成果が少しづつでも早く具現化されることが第一の目標なのではと小生は考えております。
○関連記事
「甲州」種の問題はある意味日本の諸問題の縮図(その2)(小生2009年2月28日記事)
後半の<まとめ>にて

「ハード」を扱う当事者である農家やワイナリーを支援する「ソフト(施策)」の充実に力を入れることが、何をおいても必要なことです。その姿勢がやがて温度差を解消し、持続的に自律した地方として「成長(昔の、右肩上がりの成長では無いことに注意!)」することに結実するでしょう。
(太字は管理人による追加)

と取り上げていますが、行政が何もかも率先してお膳立てするのでは無く、民間主導による芽を潰さないような支援を行うことが何よりも大切だと思います。行政がしゃしゃり出るとどうしてもコントロールしたがるのが常で、多くの悪しき先例で見られる様に(自治体の負債が巨額になって行くとか、、、)多くの試みがしぼんでいってます。


関係者の皆様、お疲れ様でした。
ワインツーリズム・ワイナリー&会場巡り(いずれも小生2008年11月8日記事)
ワインツーリズムでは勝沼の既存のコミュニティー(結構色々あるのです)や商売をしている人達とプロデュースする側が同列で取り組んでおられます。えてしてプロデュースする側は「上から目線」になりがちですが、そうでは無く同じ目線で「イイものは伸ばして生かし。悪いものは今の時代に合わせて改善」とひざを突き合わせての議論を経た運営があって今回の成功に結びついたと考察しております。

*1:プロデュースしている「ソフトツーリズム」さんのサイトはこちら

*2:「日経デジタルコア」でも北山村の取り組みが紹介されています。【地域情報化の現場から】第32回「北山村応援団を作ろう!〜飛び地の村で自治体初のブログポータルサイト『村ぶろ』〜」を参照して下さい。バイタリティー溢れる試みをWebを存分に活用することで住民参加を促進している一つのモデルケースではないのでしょうか?