ノン・バリックのシャルドネワイン考

鬱陶しい季節となってきましたが、こういう時はついついビールや発泡性ワイン等の泡物にどうしても手が伸びがちですが、手軽に頂ける白ワインも候補に入れてみては如何でしょうか?
とはいえ、どんなのが?と聴くといろんな答えが帰って来てワインに詳しくない人にとっては途方に暮れるだけ、、、。そんな訳で、比較的安価で気兼ねなく頂く事が出来るという観点でお薦め出来る樽に貯蔵しないタイプのシャルドネのワイン(タンク発酵して、それから瓶詰めするスタイル。)を小生頂く機会が最近何度かあったので、ちょっと振り返ってみました。


『バーダップシャルドネ(2008)』酒井ワイナリーさん・2007年11月3日訪問
定評が高い山形のシャルドネ。高緯度故にゆっくりと果実が熟して行くことから、奇麗な酸を残しつつ芳醇ながらも柔らかな果実の風味が醸し出されるためと小生は考えております。その中で最も個性的な趣を出しているのが、こちらの『バーダップシャルドネ』。
酸と果実の風味に加え、独特のミネラル感が加わっているのが特徴。荒削りな雰囲気が良い意味での素朴さに繋がっているのも印象的。今年からリリースされている若き当主・酒井一平氏の意欲作です。
山形では高畠ワイナリーさん(2007年11月3日訪問)の『フレッシュ&ドライシャルドネ』やタケダワイナリーさん(2006年8月1日訪問)の『ピュア・シャルドネ(ノン・バリックタイプでは私の中で最も印象に残った一本)』等樽に貯蔵しないタイプのシャルドネワインが多くリリースされています。それぞれ飲み比べすると同じ山形でもワイナリーのスタンスの違いが垣間見えて面白いです。


奥出雲シャルドネ・アンウッディド(2008)奥出雲葡萄園さん・2008年5月2日訪問
奥出雲さんのワインでは『小公子』や『奥出雲ワイン・ロゼ』等と並ぶ人気商品で、結構手に入りにくかったのですが、某酒屋さんにて最近取り扱いされるようになったので早速購入してみました。
訪問記で記した様に樽物は「複雑味を持ちながらも、素直に果実の味わいも表現したとても味わい深いワイン」ですが、こちらは程良い余韻も手伝って果実の滋味がより如実に現れています。派手さやインパクトで目を引くのではなく、「名より実を取った」と感じました。確かに人気商品であることが頷けます。


シャルドネ・アンウッディド(2008)都農ワインさん・2006年5月2日訪問
今年のリリース(2008年物)からはやや甘口の飲み口を優しくしたタイプとなりました。本格派路線の『シャルドネエステート』や『シャルドネ・アンフィルタード』と差別化を図り分かりやすい商品構成となったと云えるでしょう。
やや甘口とWebページの商品説明ではありますが、実際は中口と捉えても差し支えなく、ほんの少しの残糖分という感じです。飲み易さを優先した感じの造りでワインに飲み慣れてない人向けで、分かりやすさという点ではこれまで紹介した中では一番でしょう。幸い台風に遭遇してなかった年ですので結構期待していたのですが、飲み口優先のアレンジなのでこれはやはり最上級の『シャルドネ・アンフィルタード』で実力を判断した方が良いかもしれません。
同じ九州でも熊本ワインさん(2008年10月12日訪問)の『菊鹿のせせらぎ』ではこれがまた爆発するような果実の風味が際立っておりエキス分もタップリなので、風味の豊か度においてはこのワインがシャルドネのノン・バリックタイプで今までダントツだったと考えております。(小生の私見ですが。)


樽による貯蔵やマロラクティック醗酵等様々なテクニックを用い・高級感を演出すると云うのが一般的なシャルドネのワインのスタイルとなってますが、爽快な薫りと輪郭のある酸が特徴的なソーヴィニョン・ブラン、気品溢れる高貴感が売りのリースリング、独特のノワゼット香と蜂蜜の風味がそこはかとなく感じられるシュナン・ブラン等の著名な白ワイン用高貴品種と比べ、裏を返せば際立った特徴に乏しい優等生的存在でもあります。それだけに、樽無しのシャルドネのワインは果実のポテンシャルが問われて来ます。
今後、日本のワインの実力を測る上でこう云ったノン・バリックタイプのシャルドネワインは一種の指標であり、まだまだ伸びしろがあることでしょう。(逆に言うと栽培技術の向上という課題を提示しており、更なるレベルアップが望まれる。)
即ち、より良い原料に恵まれれば、その実力を今以上へと引き上げることが出来るのでは?と小生は考察しております。