マスカット・ベーリーAはVinifera:Labrusca=50:50ではありません。

先日、岩の原葡萄園訪問の際にも触れました、川上善兵衛翁の交雑品種の系統に関しての補足です。(異なる種での掛け合わせなので、「交配」ではなく「交雑」(Hybrid)です。念のため。*1
一般に、マスカット・ベーリーAはお題の様な捉え方をされてますが、きちんと調査するとそうではない事が分かります。
まず、善兵衛翁の論文『交配に依る葡萄品種の育成』(「園芸学会雑誌」第11巻, 第4号 (1942))、ならびに著書『実験葡萄全書(中編)』(1933年)で片親のBaileyについて小生が調べ上げたのをまとめたのが下記の系統図です。


Baileyの交雑の系統に関しては、実際に交雑したMunson氏の著書“Foundations of American grape culture”[T.V. Munson & Son, Denison (Texas)] (1909)(『実験葡萄全書(中編)』の参考図書にもなっている。)で記されてますように、Vitis Vinifera, Vitis Labrusca, Vitis Lincecumii Buckley種の3種の交雑です。
そして、別ルートから調査して辿った結果が下記の通り。


(“Vitis International Variety Cataloguehttp://www.vivc.deを基にBlog管理人が作成。)
Baileyの交雑の系統に関する違いより、二通りの説があります。が、学術データーベースからの出自が最新の結果であることから、後者の系統図がより正確なものであると云うのが現在の結論です。
(図の注)
V. V. = Vitis Vinifera , V. L. = Vitis Labrusca , V. L. B. = Vitis Lincecumii Buckley
(書籍のリンク先は、著作権法をクリアしたデジタルアーカイブです。ご参考までに。)
(追記)
上記善兵衛翁の論文『交配に依る葡萄品種の育成』を読むと、劣性な孤臭の形質を薄めるとあります。(pp.368)
すなわち、「本邦の風土に適し」「樹生強健」な(論文そのまま引用)米国種であるLabrusca種に、同じく米国種で無香なLincecumii種の掛け合わせたもの・もしくはその血を引くものを片親とする考えの下で、日本に適した良質の醸造用ブドウを育種しようとし、結果の検証まで行っている所は驚嘆する他ありません。
(追記2)
リンクを修正しました。(2016.9.18)

*1:同じ種同士の掛け合わせによる品種改良は交配(Crossing)と称し、交雑とは区別しています。