この処方箋を真面目に目を通して欲しい

OECD(経済協力開発機構)より、対日審査報告書2009年度版が発表されています。昨今取り巻く事情を正しく認識する上で、ざっと目を通してみました。
農業関連では、次のように書かれています。記述を抜粋したのを下記に引用します。


非製造業の生産性を如何にして向上できるか?
2002年に始まった輸出主導の拡大期において、製造業における労働生産性の上昇率は年率7%以上に加速した一方、サービス業の生産性上昇率は2%を下回っていた。日本では、サービス部門が付加価値や雇用の70%を占めていることから、この部門の生産性を高めることは持続的な成長とOECD諸国のトップランナーとの格差を縮小するために重要である。サービス業の生産性の弱さは、各般の政策によって競争を強化することの重要性を示している。
●競争政策は、独占禁止法上の適用除外を減らすこと、過料・課徴金の引上げ、サービス業において主たる役割を担う中小企業への特例の段階的廃止によって一層効果を高めるべきである。 ●規制改革は、日本における起業が相対的に複雑で、時間と費用がかかることを国際比較が示唆していることからも、参入障壁の低下に焦点をあてて加速すべきである。加えて、構造改革特区に導入された改革は全国展開するべきである。 ●国際的な競争は、サービス輸入にかかる障壁を低下させることや対内直接投資を促すことで、増進すべきである。投資拡大には、潜在的な投資家を断念させている投資障壁と製品市場規制を取り除くことが必要である。
更に、小売、エネルギー、運輸、そして対事業所サービスといった重要なサービスにおける競争は、広範な改革によって強化される必要がある。特に、電力やガスではいわゆる独立規制機関が設立されるべきであり、消費者が一層サービス提供者を選択できるようにすべきである。また,農業政策の改革は,高水準の生産者保護が世界価格の二倍近くの水準に生産者価格を押し上げていることから,消費者に多大な利益をもたらすと考えられる.貿易と生産を歪曲する価格支持は所得補償に置き換えるべきである。
(中略)
もうひとつの優先課題は、金融部門の効率性を高める改革を導入することと、低収益性という、特に地域金融機関に顕著な、従来からの課題に対応することである。資源配分の歪みを減少させるために公的金融機関の民営化を進めることや、銀行が融資実績に乏しい分野、たとえば農業等への参入を促すことが重要である。 当局は、歪みとモラルハザードの原因となっている地域金融機関への優遇的な規制上の取り扱いを減らし、同部門の合理化を促すべきである、人口高齢化の中で効率化を促進するという点では、リバース・モーゲージの活用の障害を取り除くことが必要であり、こうしたことにより、高齢者の流動性制約を緩和することができる。

(注:太字は管理人によるもの。「日本語サマリー」から抜粋。)

上記の記述に焦点を絞って報告書を振り返って見れば、簡単に云うと
「新陳代謝を託し、一刻も早く新しい組織に重点的に血流を流すことが必要。」
と宣告されているのと同様です。政権交代の陰に隠れて表立って報道されていませんが、今年の6月に農地法の改正が可決成立しています(詳細は、農林水産省のWebページにて公開されています)。法律の改正による下地が整えられていますが、肝心の施行に必要な制度やサポートの充実がなければ骨抜きのままで無意味になってしまいます。
現場で見て想うに、公が総花的に全てあまねく保護するのでは無く、新規参入や時代の趨勢に応じた新しい農業のあり方を模索し市場を開拓する農家を重点的に支援して民の自立を促進出来る方向へと転換しなければならないと痛感するだけに、報告書の内容には頷かされます。そして、正しい理解の下で国民が今後を見据えた考えを練った上で行動し、行政も執政していかねばなりません。
この報告書は、日本の経済状況に対し第三者的視点で的確に捉えています。書いてあることはあまりにも図星なので、政治家や官僚・お役人だけでなく市井の人々も「自分の国がどうなっている」のかを知る上で是非読んで欲しいです。