剪定講習会開催

錦城葡萄酒さんの園場で、甲州種のX字長梢剪定についての講義が開催されました。ワイナリーや栽培家の方々が熱心に聴き入っておられ、中身の濃い充実した時間でした。詳細はTeam Kisvin Webページの報告をご覧下さい。

この技術は、勝沼篤農家・故土屋長男先生がゼロから創り上げた理論で日本独自のものですが、実はブドウの生理に沿った完成されたものです。土屋先生の著書『実験・葡萄栽培新説(現在は絶版)』で東大名誉教授の浅見博士が寄せた序文に記されているように、地元の農学校を出たのみの学歴にも関わらず、諸外国の文献を独学で読破し、自ら実践して栽培理論を構築されたのです。
伝え聞く所によると、晩年はX字型でも占有面積を小さくし、少ない施肥での栽培で収量をきちんと確保していた(勿論、品質も満たした上で)そうです。また、実際に名人と称される先人の方々は、良質なブドウをX字長梢剪定でコンスタントに生産していました。ところが過去は、良いものから生食用に出荷されワイン用には『余り物』しか回った来なかった事が往々にしてありました。「X字では良いブドウが出来ない」と誤解されるようになったのも、そういった経緯が背景にあります。
歴史に、“if”は無いと云われますが、もし土屋先生始め先人の方々とワイン製造サイドとの交流があれば、もともと生食用主体のX字の技術をワイン用に改良し、ブレイクダウンしたことで、今よりもワイン用ブドウ栽培技術が進んでいたかもしれません。
しかし、よくよく考えて見るとこれだけ多くの情報が蓄積された来た今、もう一度先人達の築いた礎に立ち返りつつ他の仕立て・整枝剪定も包含した上で知識を再構築することにより、昔成し得なかった事を取り戻せるチャンスが巡ってきたとも云えます。
新しい歴史は、過去の延長線上にあり、そして更なる未来に繋がる。そのためには、単なる恩返しよりも『今』を大切に生きることなのでは? そうすることできっと先人達は天の上で喜んで下さるはずです。
[追記]
X字型長梢剪定のポイントについては、こちらの小生記事も参考にして下さい。