東北のワインを語る夕べ・第2部

引き続き、場所を改め構内のラウンジ“Y”にて、東北産ワインを代表する銘柄を7種頂きました。小生の個人的な所感を以下に記します。
○サン・スフル白(2010)
山形県産のデラウェア100%で造られたワインで、典子社長の講演で触れられた地場産業の振興の一環でもあります。(「地域産業資源活用計画」申請事業として認定。)発泡性ワインで夏の暑い日に似あう一本。爽快な風味と自然な味わいが楽しめます。
○ドメイヌ・タケダ アッサンブラージュスペシャル(2009)
自社農園産のブドウを用いたワインのシリーズで、シャルドネとマスカット・ベーリーAを原料に用いてます。2008年産の同じワインを購入して頂いたことがありますが、正直この時のは固い印象が強く、ふくよかさに欠けているなぁと思いました。しかし、2009年産は果実の風味が出ていて、丸みと味の幅が拡がって奥行きの感じるワインになってます。個人的には、小生は欧州系専用種(甲州も含む。あと交雑種はベーリーA等はOK。)のワインしか普段は買わないのでこちらの方が好きです。
○ドメイヌ・タケダ ベリーA古木(2009)
こちらも自社農園産で、第1部で触れた、先々代の重三郎氏が植えた古木(樹齢約70年)のマスカット・ベーリーAを赤として醸し、樽貯蔵を行ったものです。樽の香味とべーリーAの華やかな果実の風味が溶け合っています。山形のブドウを用いたワインは総じて高い酸度が特徴ですが、このワインはマロラクティック発酵によりまろやかな口当たりに仕上がっており、刺々しさが無くなっているのが良い所です。以外とがしっとしたタンニンが感じられますが、新樽100%ではありません。もう少し熟成してからの方がきっとより美味しく感じられるでしょう。
○シャトー・タケダ赤(CUVÉE 039・2007)
タケダワイナリーといえば、瓶内二次発酵方式の『キュベ・ヨシコ』がトップキュベとして良く知られていますが、本当の意味でのトップキュベはスティルワインの『シャトー・タケダ』シリーズであり、その中の白眉が赤の『CUVÉE 039』です。この年のブドウを仕込み樽貯蔵した所、樽ごとの性質の違いから味わいのキャラクターが分れたことから、重みがあって複雑で芳醇なのを『CUVÉE 039』として、エレガントでバランスの取れたのを『CUVÉE 034』として瓶詰めし、販売してます。
抜栓直後は閉じていますが、時間が経つとビロードのような滑らかな味わいに加え優雅な芳香が立ってきます。もちろん、複雑味のある味わいと長い余韻はトップキュベならではの物。かつて頂いた2004年物は、代替わり時の過渡期故に典子社長の『色』がまだ未完成でしたが、ここで確立されて来た感があります。一つ面白かったのが、「父ちゃん(重信氏)にしか出せない、男の人らしい力強さが羨ましい時も正直ある。」と笑いながら答えていた事です。何気に典子さんの負けず嫌いなところが垣間見えた、社長の顔というよりもちょっと人間臭いエピソードといえるでしょう。まぁ、そこがワインの個性であり人それぞれのもつ良さで、典子さんにしか出せない所もあるのが面白いところでしょう。
○五月長根葡萄園 白(2010)
エーデルワインさんの『名刺代わりの一本』と呼べる代名詞的存在で、このワイナリーの名前を広く世に知らしめたワイン。
リースリング・リオンとは、技術陣を顧問として招聘したサントリーにより開発された交配品種で、栽培性を容易にすることを目的としてリースリング甲州三尺を掛け合わせたヴィニフェラ種のブドウです。
やや甘口の仕立ても相まってコクのある風味となってますが、クリーンで流麗な造りからか完成度も高いです。奇を衒わず、きっちりした形での実直なスタイルからか、結構人気も高いです。個人的には、もう少し残糖を減らしたやや辛系(これは、最近のドイツやオーストリアのワインの傾向も踏まえ。但し、完全な辛口に切らない。)の仕立てでもいいんじゃないかと思います。その方が、食事に合わせやすいのと、本格度が更に増してワインとして完成度が高まることを期待しているからです。是非、残糖減らした辛口版にもチャレンジして欲しいなぁと思います。
○ハヤチネゼーレ ツヴァイゲルトレーベ 樽熟成(2007)
もう一つ、エーデルワインさんの顔といえるのがツヴァイゲルトレーベの赤ワイン。襟の正しい・実直なスタイルはこちらでも踏襲されています。
しっかりとしたタンニンでありますが、粗野では無く紳士的なのでちゃんとした赤を飲み慣れてない人でも堪能出来ると思います。ココアの様な深みと口当たり、プルーンの様な味わいと薫り、樽貯蔵で出ている複雑さがそれぞれよく噛みあっていてジェントルな佇まいになってます。こちらもお薦めの逸品。
ツヴァイゲルトレーベといえば北海道産が良く知られていますが、道産ツヴァイゲルトレーベでは、ジンギスカンのような豪快な料理がよく似合います。一方、こちらエーデルワインさんのでは、じっくり燻したローストビーフにコクのあるブラウン系のソースの方がお似合いです。それぞれの土地ならではの味わいを、ワインと食事の組み合わせでより違いを感じられるでしょう。まずは、試してみてはいかがでしょうか。
○高畠マスカット・ベリーA ブラッシュ(2009)
高畠ワインさんに2009年より新しく就任した醸造責任者・川邊久之氏(かつてカリフォルニアのナパ・ヴァレーにて、醸造コンサルタントとして活躍。東京バイオテクノロジー専門学校講師も務めている。)の指揮の下、造られたワインの一つで、ベリーAのロゼワインです。
ほんのりと薄甘口で、ホワイト・ジンファンデルを彷彿とさせます。飲みやすいワインですが、ただのベタ甘ではないので幅広くいろんなシーンで使えます。そこは、川邊さんが手掛けただけのことはあります。夏場なら、キリッと冷やして野外でバーベキューの箸休めになんか合いそうですね。
最近はロゼワインが注目されているらしくて流行っているそうですが、国産のロゼも色々あって迷います。その中でも、結構これはイケる口で、山形産のワインのロゼというだけでなく「日本のワイン」のロゼとしても高いレベルの物です。


以上、第一部と第二部を振り返って見ました。山梨で他県のワインを堪能する企画が開催されるようになったのも隔世の感があります。今まででは考えられなかったイベントと云えるでしょう。有意義な催しとなりました。
(山本先生と岸平様、本当にありがとうございました。また、コーディネーターの笹本貴之様始め、関係者の皆様にはこの場を借りて改めて御礼申し上げます。ご苦労様でした。)
【参考文献】
東日本のワイン』(ワイン王国:刊、山本博:監修)
【関連記事】
山形だけじゃないよ!(2009年6月1日小生記事)