蒼龍葡萄酒を訪ねました〜ウイークエンド蔵めぐり午後の部

午後は、昨日のラインナップに出て来た「南野呂・甲州和飲(750ml)」を購入するためにルミエールさんへ寄り道をして、それから蒼龍葡萄酒さんへ伺い、蔵めぐり午後の部に参加しました。
蒼龍さんのワインは時折スーパーで「無添加ワイン(一部輸入果汁使用)」を見かけた方がおられると思いますが、どうしてもそのイメージが強かったのは否定出来ません。
しかし、最近は勝沼産はじめ山梨で栽培されるブドウを用いたワインを前面に押し出すようになり、ジャパン・ワイン・チャレンジ(JWC)国産ワインコンクールでも入賞するなど、地元産の原料を用いたワインでの実力も認められるようになって来ました。


自社畑の面積が少ない(1ha弱・試験栽培が主)ことから農協等での原料調達が主ですが、先月のぶどうの丘での催しの記事にて記した様に原料確保はこちらのワイナリーでも悩みの種で、色々と腐心しておられる様なことを現社長の鈴木卓偉氏から話を聴きました。それでも、意欲的なワイン・特に甲州種の商品で種々の試みをなさっています。そして、以前の記事にて取り上げました社長のご子息・鈴木大三氏が栽培・醸造を担う様になり、次代当主として引き継がれ今後の刷新が期待されます。
今回は工場を一通り案内して頂いた後、畑も見学して試飲をさせて頂きました。ちなみに、自社の畑(日川沿いの南岸。メルシャン勝沼ワイナリーさんの近くです。)では上記の様に試験栽培が主ですが、甲州が通常のX字長梢、シャルドネやメルロ等の専用品種では一文字短梢の仕立てで栽培されてます。
それでは、試飲したワインを一通り振り返って記して行きます。
(詳しくは「続きを読む」↓をクリック。)

名前の通り、「きいろ香」に代表される柑橘の薫りがする辛口スタイルの甲州ワインは最近各社からリリースされています。(例えば、近隣の大泉葡萄酒さんでの「香り甲州・辛口」等)このワインも、ノンボルドー栽培による甲州ブドウを原料として柑橘香がするタイプの物です。飲みやすさのある風味でスッキリとした中にもほんの少しコクを持たせていて、食事と併せ易いスタイルに仕立てられてます。きいろ香よりお安い(店頭販売価格税込で、\1,582- 。)のでお買い得です。

  • 甲州シュール・リー(2007)
  • PREMIUM 甲州(2005と2007)

前者は同じ甲州種のワインでもこちらは厚みとボディー感を持たせるためにシュール・リー製法で澱からの旨味をワインに持たせたタイプです。そして、後者は収穫年の異なる2種のミレジムですが、2005年物はシュール・リーを施しているのに対し、2007年物は冷凍濃縮により補糖をせずブドウ本来の味を持たせる醸造法を行った、仕立ての異なるワインです。
甲州種は糖度が20度に達しない事が多く勝沼の近辺では15〜16度位、まれに高くて18度(専用品種では18度以上になり、20度を越えることもある。)と低く、ワインにするにはアルコール度数を稼ぐために補糖することが普通なのですが、2006年のJWCで受賞した『RESERVE 甲州(2005)』で採用された果汁の冷凍濃縮で補糖無しとしたワインが評価されたことが、後者の2007年産での造りの違いとなり、シュール・リータイプは別個のワインとしてリリースされているのです。
シュール・リーのワインは、酵母由来のアミノ酸の旨味が出た典型的な味わいです。'05年産と'07年産を比べると熟成により旨味とブドウの風味が良く調和して来て美味しさが増して来ているのが分かります。
そして、PREMIUM 甲州(2007)はリモネン様の重めの柑橘の薫り*1が漂うキレのある酸味と程良いコクが特徴です。冷凍濃縮によって変な厚みが出てくることは無く、完成された感じになっています。
甲州種では今ようやく醸造向けの栽培方法が各所で研究されるようになったことから、このワインは将来糖度の高いブドウが得られた時の指標になると思います。

山梨県産のシャルドネを用いた樽貯蔵のオーソドックスなスタイルのワインです。クリーンな味わいで丁寧な造りであることが伺えます。樽香がやや強めですが邪魔をしない程度に収まっています。

  • ベーリーA(2008)

こちらはボトルからではなく未発売ということから、カラフェで出して下さりました。蒼龍さんでは、ベーリーAの果実の風味を生かすために樽貯蔵はしておらず、タンク発酵後→瓶詰めであるとのことです。
イチゴの薫りが漂い、フレッシュ・フルーティさがちゃんと感じられ果実の風味を生かされていることがよく分かります。

  • PREMIUM メルロ(2007)

自園と穂坂(韮崎近辺)産のブドウ主体(両方で9割、自園と穂坂産は同じ割合)で、残りは長野松本産のメルロを用い、樽貯蔵したものです。しなやかな中にもコクとタンニンが感じられ、中庸なスタイルの手堅い造りのメルロのワインです。

カベルネ・ソーヴィニョンとブラック・クイーンの交配によるワイン専用品種を用いたこのワインは、メルロよりパワフルなタンニンと色味でブドウの性格が表れています。ハーブの様な薫りの後にプラムの様な味わいが印象的で、結構強く癖のあるブドウですがこのワインも手堅く、完成度の高い仕上がりになっています。


このように、色々と頂く事が出来ました蒼龍さんのワインは、結構自身作に仕上がっています。これらの高品位ワインは、ワイナリーでの直販か、限られた酒屋さんとまだ販路が限られていますのでちょっと手に入れるのは難しいですが、機会があれば試してみてはいかがでしょうか。
まだこれから課題はありますが、少なくともこれらの高品位ワインの認知度が上がり、原料ブドウの確保に目処が立てば手に入りやすくなるかもしれません。「無添加」のイメージを脱却するためにもさらに磨きをかけ、よりお手頃に頂けるようになればと思います。社長の鈴木卓偉様には案内や色々お話をして頂きました。改めて御礼申し上げます。有り難うございました。

*1:シトラスセントの薫りは3-MHに代表されるメルカプト基含有アルコールと物質が異なる。詳しくは過去記事(2008年3月9日)中の資料を参照のこと。