カタシモワインフード訪問

旅の終りには骨休めで実家の大阪に立ち寄り、かねてから訪問したいと希望していた大阪二大ワイナリー(おっくーの私見ですが)を訪れる事になりました。
カタシモさんは、私にとっての日本ワインの原点です。(多分、ここのワインを飲むことが無かったら、「日本ワイン」の「に」の字も語ってなかっただろうと思います。)かつて、オトンにせがまれて免許取り立てのボクが運転手となり、突撃アポなし訪問したのが10数年前(実際は1990年)の話ですが、それ以来のおつき合いをさせて頂いております。西日本一の老舗ですが、社長の高井利洋氏は老舗の座に甘んじる事無く、あくなき情熱で「日本人による日本人のためのワイン」にチャレンジしつづけておリ、3月20日の記事でも触れた、甲州種の原点であるカタシモ本ブドウを丹精込めて育ててます。
今回は、昨年末試作品であったモノを頂いた自家農園産カタシモ本ブドウ100%本格辛口白ワインと瓶熟成の和食に合うメルロ赤ワインの製品版と、その他の新製品を試飲する事を目的に訪問しました。
いつも気取らずに出迎えて下さる高井社長としばし歓談後、試飲場のヘリテイジテイスティングルームに向かいました。(都農ワインの話をしましたら、高井社長もビックリされて感心しておられました。)
早速ですが、お楽しみの製品版の試飲コメントを、(いずれも2005年ヴィンテージです。)
○キングセルビー・甲州葡萄辛口
名前は「甲州葡萄辛口」ですが、自家農園産カタシモ本ブドウ100%の白ワインです。試作品と同様、瓶底にビッシリと酒石酸塩の結晶が敷き詰められているのが良質な白ワインの証です。
カタシモ本ブドウは山梨の甲州種と異なり、(1)酸の量が多い、(2)果皮の着色が薄紫色(山梨の甲州種は完全に紫に染まる)、(3)粒が小さく楕円形(山梨のはほぼ真球)、という特徴があり、聖武天皇が立てた紫香楽宮の遺構からブドウの種が沢山見つかっている事(高井社長談)から、実はシルクロードから近畿を経て甲州種の原点となるブドウが上陸したのではという説もあるぐらいなのです。現在のカタシモ本ブドウは明治の頃に新宿御苑から甲州種の苗を持ち帰った中野喜平氏の尽力により普及したものです。(参考:柏原市ホームページの「柏原ぶどう」の項、写真:社長さんのblog「こだわり醸造家のつぶやき」と日本ワイン応援ホームページ「ぶどう畑」より。2007年3月2日に追記。)
低温(5℃)で一日だけスキンコンタクトして冷凍濃縮・発酵後、無ろ過で瓶熟成したもので、上記のようなカタシモ本ブドウの性格の良い所を引き出したシャープで端正な風味で、程よい豊かなボディーをもつ白ワインです。透明感あふれる淡いイエローで、試作品と比べると酸味が落ち着きを見せ、よりジェントルな味に仕上がってました。ほのかな柑橘系の香りがさらに味を引き立てています。(直売店価格=1,995円 限定595本)
山梨の数ある甲州辛口白ワインと充分タメ張れるどころか、ある意味で充分に圧倒させる魅力溢れるワインに仕上がってます。でも社長曰く、「まだまだ完成形ではありません。」と今後の進化も期待されます。恐るべし。
○カハラワイナリー メルロ
大阪・キタの曽根崎にあるレストラン「カハラ」のために特別に醸造された赤ワインで、カハラのお客様が2003年に植えたメルロから取れたブドウを委託醸造したものです。
そのコンセプトは、「魚料理にも合うメルロの赤ワイン」(樽熟成の物だと濃厚な肉料理との食べ合わせに限定されるので、合わせる食事の幅を拡げシチュエーションを変に選ばないものをこしらえたかったというのが高井社長の談)で、まるでみずみずしい果実味溢れたメルロワインで、今までブログに出てきた数あるメルロワインとは一線を画したスタイルに仕上がってます。と、いうかメルロでもこんなワインが出来るのかと驚嘆させられます。試作品と比べるとよりなめらかさが際立つ風味に仕上がってました。
レストランでのみ出されているワインですので、販売はされてませんが、今後「キングセルビー」ブランドで販売される事が待望されます。
○葡萄華(デラウェア&ナイヤガラ)
あのグラッパに新顔が登場です。デラウェアとナイヤガラからこしらえたもので、前者がアルコール度数29度、後者が35度です。素朴な落ち着きのある仕上がりのカタシモ本ブドウグラッパと違い、デラヴァージョンがデラの氷結ワインと同じくシャープでエレガントな仕上がりに対し、ナイヤガラヴァージョンは思いっきり孤臭(フォクシー・フレーバー)丸出しで思わず一瞬引いてしまいますが、飲んでみると「これ芋焼酎やんけ。」となかなか美味しい味です。特に、後者は香りだけで判断して欲しくない逸品です。(ホント、何も言われずに出されると、芋焼酎と間違えます。面白がって遊ぶのにエエかも。笑)
で、終りと思いきや、社長自らが「とっておきの秘密兵器があるのですよ。」と差し出したのが、カタシモ本ブドウのブランデー、機山さんと同様、有る意味実験的に作られたものですが、これがまた良くできてました。上記の「甲州葡萄辛口」の特徴を凝縮した美味しいブランデーでした。自作したグラッパ用の蒸留器を、ブランデーも出来るように改造して作ったというのですから恐れ入ります。
今回は、秘密兵器に驚かされましたが、ナント瓶内二次発酵による本格スパークリングワインも試作中(!)とおっしゃってました。常にチャレンジ精神あふれる高井氏には、いつ行っても驚愕させられる事ばかりです。
●参考記事
「河内ワイン」の搾りかすからアイデア製品 : 技あり関西
YOMIURI ONLINE
日本人の味 求め続けて - カタシモワインフード
大阪日日新聞