仲村わいん工房訪問

午後は、大阪の新興ワイナリーで、このブログでも時々出てくる超もとい蝶メルロ(笑)」を作っておられる仲村現二氏の「わいん工房」を訪問しました。

近鉄南大阪線上ノ太子駅で待ち合わせし、軽トラで現二氏が出迎えて下さりました。そしてブドウ畑の間の狭く細いコンクリート道をくねくねと上がった所に現二氏の畑があります。
このワイナリーの存在を知ったのは、毎日新聞の大阪版に昨年10月から今年の3月まで連載された『大阪メルロースズメバチが教える葡萄畑から』という連載記事がキッカケでした。
もともと、現二氏の本業は酒販店で、大阪市内で小売と卸を営んでおります。お店は現二氏の父親である光夫氏(2003年80歳で逝去)が開いたもので、その光夫氏が65歳の時に唐突にワイン造りを始められたと新聞に書かれてますが、実際にはそれだけでなく、12年ぐらい前に自らコンタクトを取って、「古代甲州」の銘柄で知られる勝沼の名門「大和葡萄酒」の紹介で糖度の高いマスカット・べリーAを特別に分けて頂き、現二氏が修業のため足繁く通っておられたとの事です。(当時はブドウを植えたばかりなので、免許がおりて数年間は買いブドウで醸造に必要な最低限の量を確保していました。現二氏曰く、「今は余り行かなくなったが、当時は勝沼の方なんか目つぶってでも運転できた。」ぐらいに向こうの地理に詳しかったのです。というか、ボクよりよう知ってるかも知れん。驚)そして、現在はソムリエの資格を持ってらっしゃる小椋英且氏と共に「わいん工房」を兼業してます。
ちなみに、あのメルロを飲んで驚愕した雨宮幸一氏がおられるフジッコワイナリーさんには5・6年前にすでに訪問した事があるとおっしゃてました。(雨宮幸一さ〜ん、実は接点がすでにあったのですよ!)
仲村現二氏は、メルロ、カベルネ・ソーヴィニョンやデラウェア甲州種等を栽培し、全て自家農園のブドウで原料をまかなっておられますが、「光夫ルージュ」という実の中まで真っ赤なブドウの木が十数本のみあり、これがあの赤ワインのアクセントとしてほんの微量(年により1から5%ぐらい)ですが加えてます。また、「あんな山の畑で年何回もホース振り回してたら身がもたん!(爆)」という訳で低農薬・無除草剤で育てており、意識している訳ではないのですが所謂「自然派ワイン」(ボルドー液年数回散布と極力少ない量)になっているのです。とにかく、「百姓は毎年が一年生」を合言葉に、日々現場で実践を重ねて教科書に頼らずに栽培にいそしんでおられます。
さて、あのビビッドで華やかな味の「蝶メルロ」ですが、全部ステンタンク発酵&熟成で醸造されているとのこと。まず、約700Lの大きいタンク中で発酵し(自然酵母使用です!)、澱引き2〜3回後、ビールサーバーで使う10Lのステンレスタンクに移して2〜3年貯蔵するのですが、その上部空間に窒素ガスを充填しているのがポイントだそうです。「エエか悪いかわからんが、この方法がこの味を引き出すのに最適なやり方。」とおっしゃっておられる現二氏は、華やかな味で、しっかりしてるんやけど何も引っかからずに飲めるワインが好みで、人に嗜好合わせていたら百人百様で大変やから自分の好みで仕立てるそうです。(城戸ワイナリーさんと考えが似てますね。面白い。それから、小布施ワイナリーさんのメルロのことを素直に褒めておられました。「小椋君に取り寄せてもらったんのを飲んだけど、あれはホンマに美味しかった。スゴイと思うた。」雹害の話も知っておられた様です。)
傑作だったのが、現二氏曰く「いんちきワイン」と出された代物で、エライ色が濃く、濃厚な味わいのボルドーチックなワインだったのですが、面白半分で実験的にオークチップを入れて作った赤ワインで、「ボルドーの真似しようとしたら簡単にできる。でも、こんなワインでは日本人の日常の食卓に合わんし、飲んでて疲れる。(笑)」で、ボクも好かんワインやとお互い納得するのでした。(どうですか? ミシェル・ロランさん。笑)
将来は、キャンティで有名な品種、サンジョベーゼも植えてメルロとアサンブラージュし、イタリアをイメージし、日本風にアレンジした飲み飽きないワインを造りたいとのが当面の目標。小さいワイナリー、いや「わいん工房」なので、出来る事からこつこつやって行きたいとの事。
現二氏のユニークなキャラクターは単なる「関西人」のキャラの範疇を越えたオモロイオッチャンです。それでいて、真実を鋭く突く目を持つただならぬ大物としか言いようがありません。
(酒販店も営んでいることもあり、お酒の世界の裏話もたっぷり聞かせてもらいましたが、これもまたケッサクでした。でも、内緒です。)


(追記:2013年10月24日)
当Blog2013年10月23日の記事でお知らせしました通り、仲村わいん工房公式Webサイトが公開されました。わいん工房については、そちらも参照下さい。