“北の巨人” 北海道ワイン

この業界の「中の人」になる前から、そして今でも日本ワイン界の中で小生が畏敬の念を抱いている企業がある。
お題の通り、北海道ワインさんである。
www.hokkaidowine.com

そんな北海道ワインさんが、この度創業して50年を迎えた。おめでとう御座います。

当Blogの過去記事でも幾度と取り上げているが、初めて鶴沼の圃場を見学させて頂いた時、そのスケール感にはただただ圧倒され、感動する他無かった…。
okkuu-daaman.hatenablog.jp

(上記当時の記事投稿の冒頭に紹介している、「私のなかの歴史 『大地に描くワインの夢』」に関しては、掲載許諾期間が過ぎリンク切れとなっているので、後述の文献紹介を参照されたい。)

今や、北海道のワインを牽引する“リーディング・カンパニー”としてワイン愛好家の方々などに知られてはいるが、創業者の故・嶌村彰禧氏(2019年7月25日に逝去。92歳でした。)が山梨出身であること、そして“紳装”という衣料メーカーをワイナリーより先に立ち上げていた事は余り知られてはいない…。
(一度だけお目にかかったことがありますが、そのオーラには圧倒されると同時に何か温かみのあるものでした。)

その波乱万丈の一代記は、涙なくして読むことは出来ない。

当時、北海道新聞の夕刊に連載(2006年の12月12日から28日にかけて)された「私のなかの歴史 『大地に描くワインの夢』」である。日本経済新聞の「私の履歴書」のような連載読み物で、彰禧氏の生い立ちや会社設立に関するいきさつが、御本人の語り形式で綴られている。

この連載を画像で取り込んだものは今でも大切に保管しており、小生のiPad miniでいつでも見れるようにもしている。本当は、日本のワインを嗜好する方だけでなく、経済書として経営的な観点からも多くの人に読んでもらいたいが、新聞の切り抜きや過去記事を集めるのは至難の業である。

幸いにもそれに代わるものがあり、実際に手に取って読むことが出来る書籍や論文が存在している。

一つは、惜しくも先日逝去された、故・山本博先生の『日本ワインを造る人々:北海道のワイン』。下記の過去記事を参照して下さい。
okkuu-daaman.hatenablog.jp

そして、もう一つが、小樽商科大学名誉教授の故・篠崎恒夫先生による『二足のわらじ経営 北海道ワイン(産研論集 / 札幌大学経営学部附属産業経営研究所 編に掲載)
sapporo-u.repo.nii.ac.jp

この2つの文献は、是非目を通して頂きたい。

皮肉にも、当時“紳装”に引導を渡した北海道拓殖銀行はその後破綻の一途を辿り、債務を抱えても生き残った彰禧氏は不死鳥の如く蘇ったのである。そして、“先駆者”十勝ワインさん(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)と共に北海道のワインの祖を築くことになる。

現在、事細かに説明するまでもなく、北海道は一大ワイン産地として認知されるようになり、フランスからも、ド・モンティーユ(あの、『モンドヴィーノ』で取り上げられた時は思いもよらなんだ…笑)が進出するなど海外からも注目されている。そして、小規模ながらも個性あるワイナリーがひしめき、ワイナリー数の伸びは著しい。

しかし、そんな隆盛の祖となった“リーディング・カンパニー”の存在無くして、今の北海道のワインの発展はあり得なかったはずである。苦闘の歴史を経てやがて牽引車となり、GI北海道の設立に尽力され、農業面でも多大な貢献をされている。だからこそ、多くの人々に、“先駆者”と“北の巨人”を是非知って頂きたい。

Webサイトもこの2月になって刷新し、小樽のワインギャラリーもリニューアルオープンされてホスピタリティ溢れる魅力的な観光スポットとして生まれ変わった模様ですが、久しぶりに小樽市朝里川温泉の本社へ訪ねたくなる。現社長の嶌村公宏氏にも、久しく会っていないのでまたお目にかかりたい。

そんな北海道ワインさんに敬意を表し、乾杯❗️


写真は、昨晩3月9日、“戦友”との飲みの席で開けた当方保管の“鶴沼ヴァイスブルグンダー 2011”。
開けてどうなることやらと心配していたが、綺麗に熟成が進んでおりホッとした。

折角ですので、“1995年北海道ヴァイスブルグンダー”を小樽バインさんで頂いた、当時の記事も挙げておきます。
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