「6年の歩み」を遙かに超える年月の重みを噛みしめた一夜〜「それいゆ at 二期倶楽部広尾」

かつて、何度か記事にて触れてます山梨の「銘ローカル・ワイナリー」の一つとして挙げられるのが旭洋酒さん。この度、様々な縁あって会に招待を受けました。
<関連する過去記事>
『北風と太陽』の物語〜鈴木御夫妻がワインに込めたひたむきな愛情を味わう(2007年3月11日記事)
「地元に根ざしつつも果敢に挑戦!」旭洋酒訪問(2006年5月28日記事)
<そして、此方も参照して下さい!>
小生お手本の日本ワインサイト自転車で行く 訪問・日本のワイナリー」の旭洋酒(有)/ソレイユワインの項参照。
私がこの会で率直に受けた印象が、「ここまで来たか!」の驚嘆の一言に尽きます。立ち上げてから僅か6年。しかし、その年数以上に凝縮されたワイナリーの歩みとそれに応えるようにして開花してきたワインは、何よりもその素晴らしさを雄弁に物語ってます。
では、ソレイユさんが出された「お品物の到達点」を小生が感じたままに記して行きたいと思います。
以下はこちら(↓)をクリック!!
○ソレイユ クラシック・白(2007)
ボクが思うに、『究極のちゃぷ台ワイン』という言葉がぴったりの、親しみ溢れる隠れ銘ワイン。(小生が、初めて感銘うけた「ちゃぷ台ワイン」とキャラは違いますが、何気に通じるものが有ります。)
同じ地元衆御用達と謳われて販売されている『究極のちゃぶ台葡萄酒』が「三郎の葡萄酒」ですが、此方は地わいんでありながら現代のワインに繋がるものを持ち合わせた希有な存在であると感じており、マイ・フェイバリットワインの一つに数えられます。猫の目のように変わった2007年の天候(梅雨時の多雨に、夏季の猛暑、異様に気まぐれだった秋の空。)でも、しっかりとしたボディー感と豊かな晩柑系の薫りを持ち合わせ、単なる「飲み飽きない」では無く「おいしく沢山頂ける」ワインです
○千野甲州(2003・2004・2006)

小生が知る限りでは日本で一・二を争う質をもった甲州ブドウから樽発酵を経て出来た、至高の甲州種ワインの一つ。何てったって、旭洋酒さんとの出逢いのきっかけとなった「思い出の一本」。

過去記事にて書いているように、ブドウの持つ底力に改めて感服させられるソレイユワインのフラッグシップの一つ。
今回、2005ミレジム(「溢れんばかりの薫りと果実味のパワー」に圧倒されました。)を除く垂直での提供を受けましたが、年月を経て味わう同じ「一文字短梢式」を編み出した栽培顧問・小川孝郎氏(何度かお目にかかっていますが、まるで鈴木御夫妻を見守るお父さんの様な存在の素敵な方です。)の特上甲州種を丹念に醸したワインが、ミレジムの違いを雄弁に語れる領域に達している事は他の甲州ワインとは一線を画しています。
2003(最初のリリース)=はかない美しさ・メランコリックな趣の果実味。
2004(小生が一番最初に頂いたソレイユさんのワイン)=熟成したロワール・サヴニエールのシュナン・ブランのごとき重厚さに、蜂蜜の香りと風味。
2006=難儀な年でありながらも、輪郭が備わった凛とした面持ち。
と、それぞれ感じる所が異なりますが、どのミレジムの根底に有るのはしっかりした酸と腰の据わったブドウの味を想像出来るコトです。揺るぎ無きキャラクターを持ちながらも包み込むような味わいにはいつ頂いても惚れ込みます。
油がしっかり載った紅鱒と充分張り合うどころか、お魚さんの味を十二分に惹き出してくれます。
○それいゆ メルロ(2005)
心地よい薫りとしなやかさが信条のメルロの風味を存分に堪能出来る傑作。
メルロは信州・塩尻が適地とされ今や一大産地となってますが、実は山梨も場所を選べば(他府県でも傑出し、またご当地の風土を反映したメルロが、日本には捜せば有ります。詳しくは小生まで。)このように存分に風味溢れる山梨産メルロはそう他にはありません。(例えば、山梨産だとシャトレーゼ勝沼ワイナリーさんも傑出したメルロのワインを出されてます。)
カカオとダークチェリーの薫りにうっとりさせられ、穏やかなタンニンと心地よい果実味が豚の胸腺のムニエルとピッタリでした。
実は、直売場で購入させて頂いたのを親孝行にと今年の正月実家で家族揃って頂いてたのですが、両親共々「うわっ〜!」と驚いていました。(日本のワインに'90年代前半といち早くから目をつけたのも両親です。)そういう経緯からも、後述するピノが話題性として先に取り上げられられがちですが、「それいゆ」シリーズをしっかり支える出来のイイ兄弟として可愛がって(\(^o^)/)やりたくなりますね。
○それいゆ ピノ・ノワール[b](2005)
スイス・クローンとアッサンブラージュさせたノーマルの2005物と異なり、ル・モンの新樽(剛氏談)でたっぷりと9ヶ月熟成後、15ヶ月間瓶熟したブルゴーニュ・クローン単一のこの「ピノ・ノワール[b]」はまだワイルドなキャラクターですが、樽のタンニンとブドウの持つ渋味とが溶け合っており、某オーナー氏が「クリスマスでのジビエに合わせたい。」とか某商店さんが「これぐらいの渋さがイイ!」と太鼓判を押しただけあって、ピノ・ノワールの持つ潜在能力を醸し出してます。
始めは、中々薫りが開かないのですが、次第にチェリー香の後、鞣皮っぽい薫りが出てきます。(そんなキャラは本家ブルゴーニュのそれにも勝るとも劣らない。驚)、じっくりと頂く、あるいはさらに寝かせて置きたいと痛切に感じます。
「それいゆ」という暖かみのあるネーミングの裏で、さり気に「千野甲州」とは異なる芯を感じさせる旭洋酒さんのもう一つの柱として成長しつつあります。ソレイユさんの、いや日本のピノとして存在感溢れる逸品です。
野性味の有る鴨胸肉に、九条ネギとバルサミコ酢のソースがスーッと入り込む。そんな面持ちで食事も美味しく進みました。
○それいゆ ピノ・ノワール[b](2004)
で、これからはデセールかと思いきや、今回のサプライズ・ワイン! 支配人の金子氏の粋な計らいにより、リザーブしていた物をサーブして下さりました。
2006年3月11日のお披露目以来、時を経て出された同じブルゴーニュ・クローン単一のワインを久しぶりに頂きましたが、それはもう問答無用においしいピノのワインとして筋が通ってます。これだけの変貌ぶりには驚きますが、それ以上に旨味・酸・渋味・薫り、どれを取っても申し分無いですし、それぞれの要素を感じつつも調和が取れ、お互い高めあう相乗効果でより美味しいワインとして熟成が進んで来ています。
一言で、「美味しい」と語るだけには語り切れない感動がありました。本当に「サプライズ!」でした。
最後の〆は、金子氏特製の「ソレイユ・甲斐ノワール(2005)」をヴァン・ショー(ホッとワイン、もといホットワインです。笑)に仕立てて下さったのを頂きました。あの酸味とタンニンの際立った品種(カベルネ・ソーヴィニョンとブラック・クイーンの交配種)をオリエンタルかつ丸みの風味といった「甲斐ノワールらしくない甲斐ノワールのワイン(笑・それだけ旭洋酒さんが腕利きだと言うことです。)」をさらに味わい深く頂く事が出来、とても心が「ほっ」としました。
さて、改めてソレイユさんのワインに思うのは、

  1. 単なる暖かさだけでは無く「鋼の芯」をさり気に備えたキャラクターに進化して来ている。(「千野甲州」は言うまでもないが、フラッグシップ系の「それいゆ」シリーズのピノ・ノワール物は「新たな核」となりつつあります。
  2. フラッグシップ系の「それいゆ」シリーズと「千野甲州」に注目が行きがちだが、レギュラークラスの「モグラさん」エチケットシリーズや一連の甲州ワインが現代に即しつつ「地の要素」に立脚したワインで有る事。

と言うポリシーで、1は新たな発見として、2は忘れかけていた事を再確認と言う形で強く認識した事です。(独自のキャラクターでありながら、「クラシック・白」が国産ワインコンクール・甲州辛口の部で3年連続入賞と言うのが何よりも優れた事の証左です。)
当日は、ご当主の鈴木御夫妻始め、栽培顧問・小川孝郎氏、会を企画して下さった支配人の金子猛雄氏他スタッフの皆様にはいろいろとお世話になりました。改めてこの場を借りて御礼申し上げます。有り難うございました!