なにわの心意気は熱かった〜「大阪ヌーボーフェアー」開催

大阪のワイナリー五社がボジョレー・ヌーボー解禁日に敢えてぶつけた催し、「大阪ヌーボーフェアー」が昨年に続き二回目の開催となりました。
今回は、浪速野菜とのコラボレーション。名門料亭『花外楼』さんの協力の下、大阪府下で生産される地場の美味しい野菜料理が振る舞われました。去年は80名の出席者が今年は120名。NHK毎日放送(ラジオ)の取材陣も訪れ、これほど大賑わいになるとは嬉しい話です。気軽にワインを味わってもらおうと皆さん寄ってらっしゃい見てらっしゃいともてなしに徹してられたワイナリーの皆さんと、主催者の熟塾の皆さんの奮闘ぶりには頭が下ります。
それでは、ワイナリー五社をアイウエオ順に振り返ってみましょう。
飛鳥ワイン2007年5月2日訪問)
まずは、新酒のデラウエアのワインを味見。爽やかな薫りの青デラ仕込みで、ジュースリザーブドイツワインでの「ズールゼルブ」の事です。)により果実味が際立ってます。炭酸ガスのプチプチとした感じが出来立てのワインらしくフレッシュ感を引き立てています。
また、ヴィンテージ物も出品されていました。飛鳥さんはシャルドネとメルロが出色の出来。シャルドネ(2005)は瓶熟仕上げで樽を敢えて施さず果実味を全面に押し出している一方で、メルロ(2005と2006のアッサンブラージュ)は新樽ながらも樽の香味が程よく抑えられていてブドウと樽の風味が調和しています。それぞれの良さを生かす仕上げ方を心得ている所に好感が持てます。
カタシモワイナリー2006年4月6日2007年5月2日訪問)
堅下甲州を中核商品として意欲的な試みにチャレンジしているカタシモさんは今年から新任の栽培・醸造担当技師が加わりました。今年は亜硫酸無添加の新酒(大阪産100%の原料で、純然たる「無添加もの」です!)にも挑戦。初めての試みで、しかも小洒落たデザインのボトルは開栓もしやすく親しみやすさも持てるよう配慮しています。
通常の新酒では、辛口仕上げの堅下甲州とマスカットベーリーAの出来がとても優れてました。堅下甲州はドライな口当たりながらもコクがあり洗練された風味。ほのかな柑橘系の薫りが華を添えてます。そして、ベーリーAは天候が幸いし糖度22度まで上がったとのこと。新酒とは思えない濃厚さと旨味がありしかも酸味も備わっているのでしっかりした赤ワインに仕上がっています。シナモンの薫りも沸き立つこのベーリーAには驚きました。
河内ワイン
デラウエアの新酒とシャルドネ(2006)を出品されていました。
デラの新酒は完熟ながらも低温発酵により独特のフォクシー・フレーバーが抑えられ、心地よい風味となってます。しかも、ベタ甘過ぎない所が良かったです。しっかりした仕上がりながらもワインの苦手な方にも薦められる良品です。
シャルドネ(2006)は樽仕込みでは無く瓶詰めタイプ。和やかな口当たりの中に酸味が備わってアクセントとなり後味に締めを持たせてます。
<仲村わいん工房>2006年4月6日訪問)
仲村現二氏が一人で手掛けられているこじんまりしたワイナリーは優れた赤ワインを産み出しておりその質は内外のワインと引けを取りません。今回は、カベルネ・ソーヴィニョンとメルロのアッサンブラージュによる「がんこおやじ」新酒ヴァージョン二点を出品されていました。
一方はCSとMeのみですが、もう一方は「光夫ルージュ」が隠し味に加えられたヴァージョン。CSとMeだけでも南仏のワインの様に太陽をたっぷり吸い込んで深い滋味とカシスの様な薫りが満ちて華やかな仕立て(青臭さが無いのも秀逸)となり、これだけでも優れものなのに、ホンの少し加わった「光夫ルージュ」が他には出せない果実味と鮮やかな色味を加えてます。(ガーネットから濃いルビーになっているのです。)二つ飲み比べると、その違いがよく分かります。この品種が、あの「蝶メルロ」のビビッドなキャラに貢献している事が実感できました。
比賣比古(ヒメヒコ)ワイン2007年1月5日訪問)
大阪五社の中でも新規組になりますヒメヒコさんは、ナイアガラとベリーAの新酒を出品。これがとても良い出来でした。
ナイアガラは生食用のブドウですがワインにすると癖のある薫りが出やすく同じラブラスカ系のデラウエアよりも個性的なワインに仕上がることから醸造家の腕が問われます。普通は甘口に仕上げることが多いのですが、ヒメヒコさんは敢えて中口にしてしかもデラとは違う特徴的なフォクシー・フレーバー(所謂、炭酸飲料の『ファンタ・グレープ』っぽい薫りというより匂いですね。)が抑えられ食中にも味わえるワインになっておりビックリしました。
そして、ここの売りはベリーA。同じ柏原の地でもカタシモさんとは異なり濃厚さよりも旨味重視にシフトした味わいです。しなやかな味わいとじわじわと薫り立つチェリーとカカオの香りが本来のワイン用品種としての力を発揮したものである証明です。
生まれ故郷でも、こうやって地場のワインが力をつけている事に隔世の感があります。地元の人々がこうやって特産の農産物を存分に味わえる機会を提供して下さった事に敬意を評すると同時に、この勢いが一時のものでなく地道かつ静かに浸透して行き、いろんな人が大阪にも「エエワインがあるでぇ〜♪」とさりげにアピール出来る時が来る事を祈ってます。
○関連記事
主催者、熟塾さんのレポートもアップされています!(PDFファイル)
有り難い話に、小生の記事を掲載。有り難うございます。m(_ _)m