若き三名の造り手さんと“熱い“交流でした〜moto Rossoさんにて味わう午後のひと時

小生が時折お邪魔させてもらっている「愛ある日本ワインの聖地」・湘南の二大拠点の一つ、ブラッスリー・H×Mさんの支店moto Rossoさん。ユーロ カフェ&バル風の本会場でこの日ははオール・スタンディングで、くだけたスタイルにて新進気鋭の御三方をお招きして日本のワインを味わう催しに行って参りました。
本日登場したワイナリーさんは、

各ワイナリーの造り手である、酒井一平氏・戸澤一幸氏・小林剛士氏をお招きしての会です。人が入れ替わり立ち替わりの大盛況で、熱気に包まれていました!(会場の温度も本当にヒートアップです。笑)


各ワイナリー、お話を聴きながら頂いた順に振り返りたいと思いますので、詳しくは「続きを読む」↓をクリック。
(追記)
冗談半分で(といいつつ、半分本気で)コップ”、試しに持って来たけど、よかったなぁ。(笑)
<酒井ワイナリーさん>2007年11月3日訪問

  • 『小姫(白・2008)』
  • 『バーダップワイン(ロゼ・2008)』
  • 『バーダップ樽熟成・スペシャブレンド(2007)』

赤湯の温泉街のど真ん中に構える酒井ワイナリーさんは東北一の老舗ワイナリーとして知られ、古式ゆかしい製法に則りながらも若き当主の酒井一平さんが少しづつ新しい試みを取り入れています。ちなみに、畑の下草を食べてくれるヒツジさんはちゃんと健在しておりまして、只今冬場につき畑のある山麓の羊小屋で世話をして休息中だとのこと。(一平さん談)
山形のぶどうはなんと云っても奇麗な酸が特徴。甲州デラウェア、マスカット・ベーリーAにメルロ、カベルネ・ソーヴィニョンと山梨や長野の造り手さんがうらやむ程のワイン用ブドウが出来ることなのです。ゆっくりとブドウが熟すことから、とても出来のよい年は旨味が存分に蓄えられ味に奥行きが出て来ます。
そんな訳で、デラウェアの『小姫』も甘味でありながらもしつこさが無くバランスの取れた程良い喉ごしなのです。また、名物のレトロなエチケット(お店の看板にもなってます。以前のワイナリー訪問記での写真をご覧あれ。)がトレードマークの『バーダップ樽熟成・スペシャブレンド』は心地よい渋味と深み・そしてグラスを掌で包んで温めると黒イチゴ系+スミレのような薫りがスーッと立ち上がって来ます。聴けばこの年のカベルネ・ソーヴィ二ョンとメルロの出来が良かったとのこと。どうりで味わいと薫りがとても上出来で、一平さん曰く「これから寝かせて置いておくともっと味が良くなる。熟成が楽しみです。」と語ってました。
そして、今回は『バーダップワイン(ロゼ)』が新調しての登場。この2008年産からはセニエ法*1によりこしらえたマスカット・ベーリーAの本格辛口ロゼに生まれ変わったことが特筆すべきことでしょう。辛口といっても本当にごくかすかな甘味も持ち、しかも先の酸がワインをしっかりとしたものにさせています。また、濃い桜色のとても奇麗な色調です。地道な造りの中にも、艶やかで華があり、今回新たな発見をすることが出来ました。幅広くいろいろな料理に合わせ易くも、造りが良く真面目な出来のワインで、日本のワインで貴重な辛口ロゼの一つに数え挙げられます。(日本のロゼワインはどうしても見栄えだけ狙いのお土産ワイン的な甘ったるいのが多く、なかなかどうして良いのが少ないのです。一方で外国の本格辛口も大口の所でないとなかなか見かけません。店舗でも見かけることもあまりない。)
山形の赤湯温泉に泊まれば町中の温泉街からもふらりと浴衣でも羽織って寄れます。是非、名物ラーメン屋さんの龍上海本店(酒井ワイナリーさん訪問時に昼御飯に寄った時の写真はコチラ。行くなら赤湯の本店でしょう。*2)と併せて行ってみて下さい。実直でこれからの赤湯のワインの新しい歴史を担う若き当主と家族、そして気さくな従業員のおばちゃんが暖かく迎えて下さりますよ。
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山形ワインフェスティバルに行って参りました!(2007年11月2日記事)
シャトレーゼ勝沼ワイナリーさん>2006年6月16日訪問

山梨の菓子メーカーさんが母体となって造られたシャトレーゼ勝沼ワイナリーさん。こちらでは日本で数少ないソーヴィニョン・ブランのワインを造り出しています。持参された2007年産からは、華やいだ品種の特徴香(グレープフルーツやパッションフルーツの様な薫り)と爽快ながらも繊細な酸が生き生きと立ち上がって来ます。そして、カラフェに移してデキャンタしたのを頂いた時の味と薫りの膨らみには改めて驚かされます。以前小生もリリースされたばかりのを購入させて貰いましたが、日本のソーヴィニョン・ブランのワインの中で間違いなくトップで、外国の同品種のワインとも比べて遜色なく、それでいてオリジナリティーを追求している貴重な存在です。(今後、2008年のミレジムがリリースされるのが楽しみです。)
そして、なんと云っても定番なのが、甲州のシュール・リー。以前山に担いで持って行ったこともあるこのワインは異口同音にイイと誰もが語る人気の旨口ワインです。先週の山梨訪問でも店頭にお邪魔させて頂きましたが、いずれの年のも作柄を反映しつつ安定した品質を誇っている事は間違いありません。生産量を誇るのではなくこじんまりしながらも、奇麗に整備されたワイナリーの設備が先の薫りの華やかなソーヴィニョン・ブランといい、甲州といい全てが高い質となって反映されています。また、正統派の樽熟成『マスカット・ベーリーA 樽貯蔵』は近所のお酒屋さんも御薦めの逸品(過度に樽っぽく無く果実の風味とのバランスが絶妙)。そして、デザートには『大人の甘口』セミヨンのデザートワインがピッタリです。生真面目(で、ナイナイの岡村隆史と似ております。「本家」と比べ背が高いです。笑)な懇切丁寧に説明して下さる戸澤一幸さん(山梨大「ワイン学士」の第1号生のお一人です。)が中心となって少数精鋭で切り盛りされています。勝沼にお出かけの際は日川を挟んで目と鼻の先にある某大手さんが目印です。そちらを目印にしてまずはシャトレーゼさんに寄りましょう!
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『ワインフェス2007・春の足音』、行って参りました。
ワインフェス2006春、行って参りました。
(いずれも、山梨の「ワインフェス」参加記。前者が2007年2月25日開催、後者が初の2006年5月20日開催。)
<四恩醸造さん>

  • 『ローズ・赤(2008)』
  • 『ローズ・ロゼ(2008)』
  • クレマチス・橙(2008)』

昨年の9月に産声を上げたばかりの“つよぽん”さんこと小林剛士さんの四恩醸造さん。根っからお酒を愛し、自分の職業は「百姓です。」と公言してはばからない小林さんは、「もし、自分がこのお酒を飲んで貰うなら、どんなお酒が受け入れてもらえるのだろうか?」と想像して、一から自身で全て立ち上げたことで、固定観念にとらわれないワイン・いやお酒造りをされてます。
最初から「ワインはかくあるべし」というのではなく、あくまでも自分がたしなむ立場になってのお客さん目線なので、日常の食卓でもかしこまった場でも懐の広い「食事でふと飲みたくなる」ワインです。だから、変に「こういう食事に合わせなアカン」「このワインにはこういう料理」とかいうよりも、こんなので一杯やりませんか?という感じで付き合ってもらえればというイメージ。(日本酒が合うようなお料理でも寄り添ってくれる様な感じ。*3
でも、それだけ懐の広い存在だからこそ、実は最も気を使って、練りに練って考えた造りをされてます。普段心置きなく飲んで貰うからには、なおさら質や味に対する心遣いは人一倍。例えば、『ローズ・赤』はお手頃でも飲み口のあるワインとして味わってもらうために、単に「飲みやすい」だけで無くごくっと飲んだ後の味の余韻を演出するようにとちょっぴり甲州が隠し味に加えられてます。(マスカット・ベーリーAが主体)また、『クレマチス・橙』は甲州の旨味を出すために仕込みにて味がのっている皮を一緒につけ込む醸しで(この醸し具合が程良い加減なのです。しかも、飲みやすさも演出するために泡が一緒になっている発泡性。*4 )という風に、発酵はシンプルに・造りは細やかにと、丁寧にしかも既成概念に括られないアプローチ。というか、枠はめて見る方がどうかしてるよとツッコミ入れたくなります。(笑)
農作業もされつつ、ワイン造りに販売と実質一人で切り盛りされているのでワイナリー見学は出来ませんが、信頼出来るショップや料飲店での販売での声やこうしたイベントでお目にかかるお客さんとの対話にはとても熱心。姿勢は確立しつつもまだまだ伸びしろが有ることを自覚し、これからも日々是成長して行く心意気を常に持ち合わせているつよぱんさん。次はどんなアプローチで仕掛けて来てくれるかが楽しみです。
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時代が変わればこそ企業(ワイナリー)の有り様も変革へ(2008年1月10日記事)
埋もれさせて置くのが勿体無い日本ワイン!〜【特別編】
埋もれさせて置くのが勿体無い日本ワイン!〜 その、ハシゴ先にて「山梨の新星」を味わう
(前者が2008年6月1日、後者が2008年4月29日の記事。)



沢山の人が分け隔てなく詰めかけた今回の催し(小さな会場ながらもキャパ以上の人で満員御礼)、いろんな人と酒井さん・シャトレーゼさん・四恩さんのワイン、そしてホットな日本ワインの造り手の心意気を気兼ねなく味わう事が出来てとても良かったです。
会場のmoto Rossoを運営してますオーナーの相山洋明様、会の共催者であります亀屋商店の猪俣光司専務、そして西方裕次様(ブルゴーニュ魂)、運営ご苦労様でした。改めて御礼申し上げます。
そして、造り手の酒井一平様・戸澤一幸様・小林剛士様の皆々様、本当に有り難うございました。
(追記2)
『バーダップワイン(ロゼ・2008)』、2月に正式リリースされました。お買い得なのでさっそく購入。写真の通り、とても奇麗な酒石の結晶が底に溜まっています。過去の様々な経験から「酒石の出るのは旨い」傾向なのでそそられます。

*1:完全に発酵し切って果皮の色を全て出し切る前に中抜きで皮と果汁を分離して、それからは白ワインの様に果汁だけで発酵します。正統派のロゼワインの製法。ダイヤモンドさんの”ROSADO”もそうです。

*2:昔、登山の帰りにも寄ったことがあります。

*3:「日本酒には学ぶところが多く、奥深い。」というような意味のことを仰っていたのがとても興味深い。

*4:先日の記事でも書いたように、「ラムネ感覚でゴクッと頂く」という表現が本当に相応しい。