ぶどう栽培・ワイン製造を生業とする、あるいはその道を目指す方への書籍

以前(2020年11月1日)、『ワインの知識を養える書籍』というお題で、記事を書かせて頂きました。

okkuu-daaman.hatenablog.jp

それから後、一般の方では無く、今日のお題のように

『ぶどう栽培・ワイン製造を生業とする、あるいはその道を目指す方への書籍』

について、何か良いのは無いのですか?と時折聴かれることがありました。

個別に聴かれた方には都度その人に対してお答えしてきましたが、その道へ進む人が一般論として知っておく知識の総説としての成書がボチボチ出揃って来ました。
そんな訳で、今回の記事では、各ジャンルに分けて紹介したいと思います。

なお、今回ご紹介する成書としての書籍は、業界関係者でなければ入手不可なものもございます。あらかじめ、ご了承ください。

<栽培編>

ぶどう栽培に関しては、初心者向けの入門書として、まずは、

を手に入れて欲しいのですが、基本として知っておくべき一般論を網羅した成書が以下の2冊です。

ブドウの郷から〜おいしい葡萄のできるまで
https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_S0027528/
(田舎の本屋さん〜農文協のオンラインブックストアに掲載)

Amazonに掲載)

『ブドウの郷から』は生食用ですが、ぶどう栽培の基本として知っておきべきことが丁寧に書かれており、総論から品種別の各論まできちんと掲載されています。Amazonでは入手できませんが、上記“田舎の本屋さん”にてオンラインで入手可能です。また、この書籍は次に紹介する『醸造用ブドウ栽培の手引き』の参考文献にもなっています。

そして、『醸造用ブドウ栽培の手引き』は2022年の4月に刊行された、待望の醸造用ぶどう栽培に関する成書です。洋書での“手引き”は多数存在しますが、何しろ生育環境が異なる欧米のをそのまま適用するのはいささか無理がございます。そこで、本場海外の実情もふまえつつ日本の現状に即した成書は、これが初めてではと思います。

以上の2冊は、栽培分野に関しては必須です。

<農学編>

栽培の話をする前に、生業とする方が農業を営む上で欠かせないのが、「農学的知識」です。

ふつうは、農家の跡継ぎとなると、地域の農業高校や農業大学校に入ったりするのが昔は多かったと思います。
あるいは、地域の行政や農協さんの普及員さんや指導員さんが出先で“茶飲み話”しながらや、農家の方がそうした所の出先機関に出向いたりして根掘り葉掘り訊いて吸収していったことが多いかと思われます。

しかし、「跡継ぎ系」だけでなく農業に参入する人材は、多様なコースになって来ております。そうした場合、今までのキャリアが長かったりすると、知識がなかなか追いつかない…。でも、農業高校の教科書を成書化したこの2冊なら、ぶどう栽培を志す方には良いかと思います。

農学基礎セミナー 作物の生育と環境
https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_4540000268/
農学基礎セミナー 新版 果樹栽培の基礎
https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_4540033328/
(いずれも、田舎の本屋さん〜農文協のオンラインブックストアに掲載)

『作物の生育と環境』は農学の基礎中の基礎、『新版 果樹栽培の基礎』は果樹栽培全般に関しての基礎が書かれています。もちろん、ぶどう栽培の一般論もちゃんと記されてあります。
農学の基礎と、ぶどう屋さんなら果樹栽培全般についての知識は、分野外でも“ちらっと”でも知ってると俯瞰的にものが見れるかと思うので、持っておいて損はありません。

醸造編>

ワインの本場の欧米では、醸造技術に関する成書はいろいろございます。また、学術的にもそうした本場ではサポートがあり、醸造を専門的に学ぶ専門学校や大学が門戸を開いておりますので、体系的に知識を身につけるにはちゃんとした学校に入学するのがベストです。日本でも、数は少ないですが、大学だと山梨大学東京農業大学、高校では山梨県立農林高校長野県塩尻志学館高校、専門学校では東京バイオテクノロジー専門学校がございます。

ただ、書籍として日本語の成書がこれまで少なかったことは事実です。ところが、近年職業としてワイン醸造に従事する人や志す方向けの専門書がぽつぽつ出始めました。

まず、初心者向けの入門書として、まずは最初に拙Blogで取り上げた『ワインの知識を養える書籍』にて紹介した、清水健一先生による著作

の2冊は基礎中の基礎として、一般の方のみならず業界の中の人も必須と云えます。

そして、さらに詳しい専門書としては

山梨県ワイン製造マニュアル(2020年版)』
山梨県ワイン酒造組合に直接問合せ※下さい。但し、業界関係者のみ入手可
※問合せ先については、山梨県ワイン酒造組合のサイト、トップページの一番下に住所と電話番号が掲載されております。

www.jozo.or.jp

(公益財団法人 日本醸造協会の「書籍販売」の項に掲載)

がお薦めです。

山梨県ワイン醸造マニュアル(2020年版)』は現場での実践的な技術の手引きとして、そして今年の1月に案内されました公益財団法人日本醸造協会の『ワイン醸造技術』はより専門的な事柄を突っ込んで書いているだけで無く、ワイナリー設計や税務関係や国内の関連諸法規に関しても記述されている貴重な書籍です。

www.jozo.or.jp

よって、醸造に関しては、入門の2冊と専門書の2冊を揃えるべきと云えます。

<その他、そして最後に>

上記各分野には、入手しておいて損は無いものも他にございますが、細かい所に特化した内容になっているところもあるので、まずは上記の一般論を成書化した専門書を一通り揃えて行って下さい。

また、上記の分野外で「中の人」が持っておくべきなのが、

の2冊でしょう。前者は「日本のワインづくりの父」川上善兵衛の功績として育種した日本独自のぶどう品種を語り、後者は映画「ウスケボーイズ」や「シグナチャー」での主人公達のバックボーンとなる核心人物・麻井宇介こと浅井昭吾氏の哲学を余すところなく記されたご本人の著作集です(出版元のサイトはこちら、本当は、日本の酒類行政についてまで赤裸々に記された激動の戦後酒史『酒・戦後・青春』もあればベストですが…)。

それと、最後に番外編ですが、ワイン卸業者として海外ワインのインポーターや日本ワインの卸として業界中で知られております、株式会社飯田さんの「日本ワイン紀行」も買っておいて損はございません。業界向けなので専門用語を使って執筆されておりますが、ライター陣が業界でも有数の方々が手がけており、それでいて平易な記述ですので今の日本ワインシーンを知る上で役に立ちます。

nihonwine.base.ec

こちらは、バックナンバーも上記サイトで購入可能です。

ようやく、ぶどう栽培・ワイン醸造に携わる方々が書斎に置いておくべき書籍をまとめることが出来ました。手に取った方々は、まずはこうしたテキストで、ベースとなる知識を養って貰えればと思います。
業界で従事する、あるいはその道を志す方々の参考になれば幸いです。